第八百六十三話
「い、嫌だ! 一緒に行く!」
メリッサは抵抗するが、例外はない。
というか国王が出した規則を自ら破るなんて許されるはずがない。
軍の規律的にも、メリッサと子どもの生命的にもアウトだ。
俺は法律を守るタイプの元首である。
ということで下船させる。
お迎えは乳母軍団&特殊部隊に医師グループに館花家一行である。
「お願いします」
俺は松さんに頭を下げる。
「この命にかえましても」
「そういうのやめてください」
本当に。そういうの勘弁してください!
ということで当主の本名『館花ゴードン』こと雅号『館花雪舟』さんに渡す。
俺は一流派の長だけど、本名で行こうと思う。
カワゴン?
それはあきらめてる。
勝手に呼べ。
館花家としては大事な王族だ。
全力で守ってくれるだろう。
問題は……西条くんは嫁ちゃんの近衛騎士なのでいない。
メリッサはいない。
レオニダスくんは本来なら館花家一堂なのだが、カミシロ家親戚筋としていてくれる。
ホントごめんね。
入り婿なのに……。
だって最高戦力なんだもん。
ジェイソンくんは銀河帝国の兵士だけど俺の護衛なので残留。
タチアナとワンオーワンはシーユンの護衛としてクロノスにいる。
指揮官として頼りになるのはイソノと中島か……。
あとリコちいるから大丈夫か。
リコちは漫画家はお休み。
『従軍のため不定期連載になります』という前代未聞の宣言が掲載された。
案外ファンが多いらしく、方々から突かれてる。
ということで今回は少し不安の残る旅である。
今回の作戦はたぶんイソノの働きにかかってる。
がんばれイソノ!
負けるなイソノ!
シャーロットたちは後から来る予定。
単にデカい物体の距離を離したいってだけ。
一定距離まで近づいただけで外装がベリベリ剥がれる騒ぎになる。
他意はない。というか距離と航路設定は死活問題だ。
他の惑星級も距離と時間を考えながら動かしてる。
むしろここを死ぬ気で頭絞って考えないと自壊する。
数分に一度測量しないとコースから外れてるとかが当たり前なのだ。
そりゃコンピューターがほとんどやってくれるけどさー。
実際はレーダーを数機同時運用して誤差を測定し壊れてないのを確認して……。げふ!
専用のチームがあるくらいだ。
一定時間でセンサーは交換し、そのたびに改修工事をする。
移動するだけでこの騒ぎ!
小学生が考えたようなアホみたいな兵器って運用が難しいよね。
で、俺も暇なときはアルバイトでフォークリフトと電気工事……あ、やめろ。ぶち殺す? あ、はい。
王様に専念する。
仕事を割り振ったら急に暇になった。
その前は地獄だったのに急に暇よ。
さて……寝よう。
久々の独り寝である。
映画でも見ながらだらだら過ごそう。
ひゃっほー!
「よう暇か?」
はい捕まった。
民間人からクロノス特別軍事顧問という肩書きが生えてきたカトリ先生である。
「先生……。自分は久しぶりの独身生活を謳歌したいであります!」
「リコはどうした?」
「仕事ないときは漫画描いてるであります!」
ポリーナさんはラターニア軍に合流。
カレンさんはクロノスでレプシトール軍を指揮してる。
つまり今の俺は自由!
「おまえさー、一流派の総帥の自覚なさすぎじゃねえの?」
「カトリ先生……」
「なんだバカ」
「そういうのはカトリ先生にお願いします。別にカミシロ流にオリジナリティーなんて存在しないもん」
「オリジナリティーだらけだろが!」
「既存の流派の組み合わせですし!」
「だいたいさー、責任とかあるだろが」
「責任なんて取りたくない! 自己保身優先で!」
「嘘つくな! 自己保身優先してたら王様になんかならねえよバカ!」
ひどい話である。
「というわけで休みたいのでゴザル!」
「……うん、まあいいだろ。メシでも作ってろ!」
行動は読まれてるようだ。
確かにその通り。
メシを作りに食堂へ行く。
廊下に出たらジェイソンくん&近衛騎士がゾロゾロついてくる。
カトリ先生も一緒だ。
なにこの空気……なんか重い。
クレアとレンがいないとこうなるのか!
……しかたない。
『レオ・カミシロ・クロノス専用』と書かれた冷蔵倉庫にアクセスし、運搬用ドローンを呼び出す。
運んでくるのはお酒様だ。
『様』つけるレベルのやつ。
「メリッサの子ができた記念の振る舞い酒です」
「こ、これは……」
「クロノス産高級日本酒です」
とうとう完成したのだ。
お酒様が。
杜氏を雇って作ってもらった。
味もいいもんね!
俺は味わからんけど。
賞もらったんだって!
それで俺に献上されたものだ。
嫁ちゃんに半分渡したんだけど、贈答したら「もういらぬ」ってかなり返ってきたやつ。
その一部を持ってきてたのだ。
本当は宇宙港完成のレセプション用に持ってきたんだけどね。
どうせまだ大量にある。
宇宙港できたらまた配ればいいさ~。
いいのいいの。
最初の製品なんて知名度上げるために全部配るくらいでいいの。
それができる資金あるんだし。
来年から本格稼働でいいのよ。
試作品は前から方々に配ってたしね。
近衛騎士から連絡を受けたイソノたちもやってくる。
女子もやってきた。
「レオくんおめでとー!」
「メリッサおめでとう!」
乗員はフリーで入れるお祭り状態になった。
あとでお酒は各乗員に配ろう。ただし日本酒は数に限りがある。
友人知人以外はビールだな。
というわけで焼きそば作って配る。
ニーナさんが来て赤飯を炊いてくれた。
そこまで気が回らなかった……。
銀河帝国人はわかるけど、クロノス人には伝わらない。
困ったなと思ったら従軍聖職者がやってきてクロノス教のお祝いの品を作り始めた。
「ありがとうございます」
「いえいえ、慶事でございますから」
「名前は館花家でつけますよ」
前の騒動から一応釘を刺す。
「はははははは! それは私のような末端の聖職者には関係ありません」
よかった。とてもいい人のようだ。
俺がちゃんと自分の嫁にも筋を通したってのも大きい。
俺は自分も例外にはしないのだ。
イソノたちが乾杯する。
座敷童ちゃんもいつの間にか混じって踊ってる。
はい焼きそば。
「ありがとー」
というわけでメリッサ・館花・クロノスの子は乗員たちや神様に祝福されたのだった。




