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第八百六十話

 嫌がらせをするにしても時間がかかる。

 まずは前線基地を建設せねばならない。

 補給用の宇宙港を仮組みして、そこを補給地として目的の場所に軍事基地と宇宙港を作る。

 しばらくかかる。

 一夜城方式でパーツを組み合わせる方式だが、邪魔は当然入るだろう。

 初めての接敵である。

 偵察用ドローン部隊を大量に配置。

 前線基地の建設も完全無人で行う。

 なんなら壊されてもいい。

 敵のデータが入手できるもの。

 もったいないけどね。

 もったいないけどここでケチると負ける。

 ということで建設。

 仮組みされた宇宙港を建設。

 ここから飛び立って前線基地と本番の宇宙港を作る。

 護衛官も出すが、こっちも無人。

 遠隔操縦は妖精さんとコピーの皆さん、それにケビンにやってもらう。

 ケビンは病院半休。

 終わったら帰って寝ていいって言ったら喜んで参戦した……。

 大丈夫か? 病院勤務……。

 医師の労働環境の過酷さに驚きながら工事が始まる。

 それはそれとして、俺たちはやることがない。

 待機はするが暇である。

 暇である……。

 だってまだ軍事作戦じゃないもん。

 ケビンだって半自動で警備しながらソファーで仮眠とってる。

 俺は暇だ。

 かといってゲームしてるわけにもいかない。

 シーユンと目が合った。

 ニッコリ。

 こうしてどこへやら連れて行かれるのだった。


 かっきーん!


「おっしゃ!」


 俺は一塁へダッシュ。

 間に合った。

 シーユンが地団駄踏んでる。

 俺たちが何してたって?

 もちろん遊んでた。

 だって前線にいるのは無人機。

 俺が指揮する部隊じゃない。

 俺の出番はなにかあってからでいい。

 ということで野球。

 なお「ホームラン連発!」とか妄想したが現実は甘くない。

 野球部どもはセミプロ。

「貴族家のものだからプロをあきらめた」みたいなのが多い。

 兵役義務あるしな。

 士官学校入って義務を果たしてからプロ……ってのは少し難しいのか。

 野球から見れば大きな無駄であるが、そもそもプロ野球選手になりたい子はゴロゴロいる。

 貴族家生まれでプロ選手なんて人気出ないし、全体から見ればささいなロスだ。

 世の中は厳しい。

 嫁ちゃんも是正に動いてるけど、兵役は貴族の昔からある制度で、その正しさはゾーク戦争で嫁ちゃん自身が証明しちゃったわけだ。

 共犯は俺。

 野球部やサッカー部に恨まれそうだけど、今のところなにも言われてない。

 生きてるだけでも儲けものか……。

 いまはシーユンの草野球チームと対戦してる。

 草野球と言っても皇帝陛下のチーム。

 こちらもセミプロで固めてる。

 イソノが楽しそうだ。


「へへへへ……こんな熱い戦いができるとは思わなかったぜ」


 俺は熱気がよくわからん。

 これが剣術ならわかるけど……あ、そうか。

 俺は野球真剣にやったことないからわからんのか。

 確かにここで俺が活躍したら「野球なめんなバーカ! ぶっ殺すぞ!」って話になるか。

 そりゃそうか。

 地味なヒット出してるだけでも褒められるレベルか。

 太極国のピッチャーから警戒が消えた。

 変化球を投……これいけるわ。盗塁!


「あー!」


 シーユンがキレた。


「いいぞレオ!」


「うぇーい!」


 このあとガッツリ警戒されて点を取れずに交代。

 その後も点は取れず、最後は練習量の差が出てシーユンチームの勝利。

 シーユンの機嫌が直った。


「ご飯食べに行くぞー!」


「おおー!」


 さすが皇帝陛下……。


「レオ様も行きましょう」


 腕に抱きつかれる。

 イソノたちを見ると「行ってやれ」って顔してる。

 たまり場にしてるいつものファミレスじゃないようだ。

 シーユンは太極国料理の店に案内してくれた。


「王宮料理のお店です」


 お高そうなお店である。


「ふへー……」


 店に入ると店員がズラーッと並んで礼をする。

 皇帝陛下への挨拶かなって思ったら意外なものだった。


「オーナー、ご帰還ありがとうございます!」


「うむ」


 うん?


「シーユンのお店?」


「はい♪ レオ様のやり方を勉強してマネしてみました♪」


 俺は店員さんに耳打ちする。


「もしかして複数店舗?」


「今年度中に百店舗を目指しております」


 可能な数ではある。

 儲かる儲からないを完全無視して諜報拠点と考えればアリである。

 高級店路線にしたってことは接待の動きがわかるわけ。

 支払いや領収書……それだけで社会の動きが推測できる。


「シーユンちょっといい」


「はい?」


「偉い! シーユンわかってるぅッ!」


「なんでもお好きなの頼んでくださいね♪」


 ということで今日はシーユンのヒモ。

 こいつクズだなって思うかもだけど……美味しい食事のためならなんてことはない。

 だって野球チームの連中が全く遠慮してないし!

 俺も食いまくる。

 でもシーユンとのお話もしながらね。


「レオ様……前から感謝を伝えたかったのです」


「どうしたん?」


「命をお救いいただいたことも、父と母の仇を取れたことも、イーエンズの仇も、民の仇も……そして私に復讐以外の世界もくれた。ワンやタチアナたちとの生活をくれた……」


「俺はワンオーワンとタチアナの面倒見てくれて助かってるよ」


 あいつら偏りすぎて一人じゃ生きてけないタイプだもんな。


「ふふ……、そういうところですよレオ様」


「お、おう?」


 シーユンはほほ笑んだ。


「つい先日、皇帝陵にゼン神族との戦いと思われる資料が見つかりました」


「はい?」


「復元したものを先ほど送りました」


「はい?」


「屍食鬼など前哨戦でしかありませんでした。我々は知らず知らずのうちにゼン神族の奸計にはまっていたようです」


「奸計?」


「我々をお互い殺し合わせ、銀河のバランスを取るという戦術です。そのバランスもレオ様の介入で壊れましたが」


「ラターニア人への奴隷政策?」


「それも策の一つでしょう。長命種が恨みを忘れるはずありませんから」


 相変わらずゼン神族ちゃんは裏工作が得意なようだ。

 そういうところが嫌われてるんだと思うのよ。


「勝ちましょう」


「勝つよ。みんなと家族のためにね」


 シーユンはほほ笑んだ。

 で、ここまでなら感動なんだけど……。


「シーユン、あそこでゲートキーパーちゃんが皿運んでるんだけど」


「見習い期間の研修です」


 お、おう……。

 気にしたら負けのようである。

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― 新着の感想 ―
ゼン神族の分断工作に対抗するため同化政策と称してシーユンが主人公を喰っちゃう話かと思ったw
逆に言うと銀河が団結するとゼン神族には抑えられないということでしょうかね。やはりあまり大きくない?
……まあ、社会勉強と思えば、間違いでもない、のかな。ゲートキーパーちゃん。
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