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第八百五十二話

 さーて、斬れるは斬れるが……。

 どうトドメを刺すかが問題だよね。

 ……トドメ刺さなくてもいいのか。

 ダウンさせて話し合いでいけるかもしれない。


「刀拾っても?」


「許さん」


 折れた剣でなぎ払ってきた。

『どさくさ紛れに刀を拾うの術』失敗。

 困ったな。

 素手であれを倒せと。

 投げて制圧できればいいけど。


「レオ!」


 イソノが薙刀を投げた。

 キャッチ……。


「させぬ!」


 できず!

 だけど相手は縦斬り。

 すっと間合いを盗む。

 剣が小さくなったとはいえ、完全に接近した状態は俺の方が有利。

 つかまれなきゃね。

 俺をつかもうと手が迫る。

 そりゃね、つかんでくるよね。

 当たり前だよね。

 剣から手を離して組み付いてくることもないよね。

 そちらの方が安全だ。

 つまり俺は選択肢を奪ったわけよ。

 来るのがわかってりゃ、あとは帝国体術。

 戦闘服をつかまれた瞬間、人差し指を反対に曲げてやる。

 そうしたら肘を折るように背中側に回って制圧。

 この体勢は力が出しにくいんだよ。

 本当なら首をヒザで潰して体のバランスを取れないようにしてやりたいが……。

 体のサイズ的に無理だな。


「ぬ、ぬう!」


 びたーんっと、鎧の怪物がうつ伏せで倒れた。


「か、体が動かん!」


「悪いな。人工筋肉に人間を模倣した関節。動きを見てりゃわかる。指パーツの逆側への最大稼動可能角度は90度ないよな。肘や肩の可動領域も人間と同じ。だとしたら指一本つかめばコントロールできる」


 人間の武術をなめるなって話。

 痛いから動けないんじゃない。

 ……正直言うとこちらもギリギリの腕力だけどね。


「だからどうした」


 メキメキっと指が折れる音がした。

 人工筋肉もぶちぶちと音を立てて切れていく。

 はははは。

 まだやる気か。

 指をつかんでる俺の体が浮いていく。

 おうお、指一本で持ち上げられた。

 まだ、つま先はついてるけどね。

 手首を反対方向に回しながら……。

 肘に肘を落とす。

 ベキベキベキと腕がへし折れていく。

 俺のカカトがゆかについた。

 おっと俺の近くのヒザを浮かせてやがる。

 武術の腕は素人だな。

 兄貴仕込みの関節蹴り。

 ベきっと足をへし折った。

 やっぱり人形戦闘機と弱点同じだわ。

 複雑な動きができるけど関節が弱い。

 何度愛機を壊したか……。

 俺はそのままさらに制圧。

 今度は無事な方の手で起き上がってくるかな?

 それなら壊していけばいいんだけどね。


「あ、あはははははは……やりやがった!」


 イソノの野郎がガッツポーズした。


「ジェイソンくん! 眠らせて!」


「はい!」


 眠らせて終了。はい勝ち。

 疲れた。

 拘束して工兵が機械部分をシャットダウン。

 自爆装置がないか確認してから運び出す。


「なあ、イソノ……なんで俺、小型の人形戦闘機と戦ったんだろう?」


「それを選んだのはお前だろ」


「まーなー」


 そこに例の教授が走ってやって来る。


「こ、殺すな! 歴史の生き証人だ!」


「殺しませんよ。眠らせただけです」


「わ、私が尋問に立ち会う! だから絶対に殺すな!」


 最初から殺すつもりはない。


「ジェイソンくん」


「敵意はありません。スパイでもなさそうです」


「スパイではない! ただ私は歴史の証人を殺したくないだけだ!」


「了解です。ただ自害の危険性は排除できません。誰か説得できる?」


 俺だと微妙に会話が噛み合わなかったんだよね。

 話が通じてるようですれ違ってた。


「私が説得しよう」


 教授がやる気だ。


「ありがたき幸せ」


 はいはい。これで四方丸く収まった。

 不敬罪?

 クロノスにそんな法律ありません。

 そもそも歪みまくった民主制だった国にそんな法律作っても守ってくれるはずもない。

 俺はフリー素材。

 外国要人への名誉毀損はあるけど嫁ちゃんもスルー。

 好きにしろ。

 ということで調査はそこで一旦終了。

 スペースレイダースも怪我人出たし。

 工兵が簡易のゲートを設置して帰る。

 で、帰るじゃん。

 パパはなぜかママたちに怒られるのね。


「婿殿! まったく王の自覚がないのじゃ! このバトルジャンキー!」


 言いつけたのはたぶんイソノの野郎だな。

 あとで報復してやろう。


「報告したのは自分です」


 ジェイソンくんだった。


「裏切者おおおおおおおおッ!」


「忠誠心があるから報告してきたのじゃ!」


「まったく、しかたのない人」


 クレアが呆れる。

 おかしい。

 クレアは同じバトルジャンキー星の住民のはずだ。

 ねえ、プロレス研究会。


「それにしてもさー。隊長、どうやって倒したの? 映像見ても帝国体術の応用ってのしかわからないんだけどさ~」


 メリッサはそっちが気になるらしい。


「人形戦闘機と同じ。機械科した兵士も関節が弱いか、可動域が極端に制限されるかを選ぶんだよね。関節の可動域が大きく取られてるから、関節が弱点だなって思ったんだわ」


「重量級の武器持ってたのに?」


「攻撃が単調だった。関節が弱いからあれしかできなかったんだろうねえ。だから『斬れちゃうぞ~』ってさんざん脅してから、刀手放してピンチに見せかけて間合い潰してつかませて指へし折ったってわけ。実際は斬るのは難しかったんだけどね~」


 そうそう突きからの流れは予定通り。

 壁に叩きつけられそうになったときだけ焦った。

 あんなに力出せるとは思わなかったわけ。

 本当はあそこで腕一本へし折る予定だった。

 想定より丈夫で、可動域も大きかった。

 あとは分解して検証かな。

 相手の意思に関係なく体も生身に戻しちゃおうっと。

 一から作るには妖精さんが必要だけど、体を元に戻すには培養できるシステムがあるからね。


「隊長……熊のビースト種投げ飛ばしたときも思ったけど、喧嘩が上手すぎるよ!」


「はっはっは! 褒めろ褒めろ!」


 それにしても奥に何があるんだろう?

 捕獲した鎧の怪物が宝物なのかもしれないけれど。

 なんて思ってると兵士から報告が入る。


「古代の記録メディアを発見しました」


 へー。

 今度は中身なんだろうね。

 別に『こっち側の住民がゼン神族に作られた』とかはもう既知の情報だし。


「ルナ様の解析でラターニア人の具体的な製造方法が記されてることが判明しました!」


 おんやー、いきなり空気変わってきたな。


「ラターニアに資料を送付して。ねえ……嫁ちゃん」


「うむ、会議じゃな」


 あーあ、楽しいピクニックがこれ。

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― 新着の感想 ―
脳から戻したら美少女だったとかのオチですかね。
不老長寿の遺伝子操作の方法かな?
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