第八百四十三話
イソノの義兄さんの薬物中毒問題は広く根深い社会に蔓延する寸前で発見された。
嫁ちゃんに根回しして、クレアやレンにも共有して、ケビンにも医局の上にあげてもらうように言ってっと。
こういうのに詳しそうなポリーナさんとなんか人でなしな解決案提示してくれそうなカレンさんにもコピーを送る。
「レオくーん。政府広報作りましたよ~」
クロノス政府広報のたたき台作成完了。
「心がつらいときはメンタルクリニックへ」っと。
内務省にもコピー送信。
あとは広告会社にぶん投げればデザイナーが仕上げてくれる。
明日には会議が開かれるだろう。
「銀河帝国用のたたき台はヴェロニカちゃんに送りました~」
「へーい」
んじゃ寝ますかね……。
と、思った午前二時。
「陛下……緊急会議が招集されました」
レンに起こされた。
「レン大丈夫? 寝てていいよ」
「いえ少し前に子どもたちに起こされましたので」
「無力な夫ですまない……」
「お義母様たちがいらっしゃるので平気ですよ」
おかん&乳母隊に感謝!
うちのおかん仕事できるんだよな……。
「行く前にこのお薬飲んでください」
「ヤバい薬?」
「いえ、カフェインです。歯磨きして栄養ゼリー食べたら飲んでください」
ひどいわ!
あたいお茶とかコーヒーが欲しいわ!
まあ、まだ人でなし技術じゃないだけマシか……。
「へーい」
歯磨きして栄養ゼリー飲んで、カフェイン飲んで、また歯磨き。
歯間ブラシもガシガシ。
歯垢は敵だ。
いや宇宙海兵隊だと水虫と歯周病は命に関わるのよ。
いやホント。
菌の補充が少ないのと変異で気がついたら骨が見えるまで水虫に足食われてたとか……初期の宇宙海兵隊の歴史資料にある。
歯周病も無重力下の脳梗塞で何人も死んだらしい。
だから口の中に股間に足は定期的にマシンで殺菌する。
もちろん靴や歯ブラシもね。
クロノスは菌の心配する必要はないけど、もう習慣なのである。
最後に殺菌剤でうがいして着替え。
王様として参加なのでクロノスの民族衣装。
ゆっくり着替え。
だって必死に資料作ってるはずだもの。
で、会議に参加。
今回は王宮でのリアル会議。
参加者は皆一様に顔色が悪かった。
イソノにエディにクレアくらいか。元気なのは。
嫁ちゃんは不参加。
あっちはあっちで起きたら会議みたい。
「皆の衆、夜間にすまない」
俺は頭を下げる。
クロノスの厚生福祉のトップ文官が返事をした。
「い、いえ……思いが至らず申し訳ございません。調べたところ深刻なデータが出まして……その……」
うわーお!
本当にギリギリ間に合った感じか!
知らないうちに社会が破滅まっしぐらだったのね!
「いや……大丈夫ッス。銀河帝国も同じ状態みたいですし」
「早急にメンタルヘルスを改善しなければならないという結論に至りました。まずは市販薬の販売規制を……」
「数多くない!? これ全部痛み止めぇ!?」
どんだけ売れてたのよ!
う、うっわー……。
「その帰還兵が買いあさって……はい……」
「ですよねー!」
ヘタに勝利したせいかわからなかった。
本当に内政が思いもよらないところから崩れてた。
ひいいいいいいいいいッ!
「よ、妖精さん、嫁ちゃんにも資料送信しといて」
「あいあいさー!」
こんなのわからないよー!
「酒は?」
「アルコール中毒は多いですが治療薬がございますので」
強制的にアルコールを抜くやつね。
ただアルコールを憶えた脳の治療は別問題だ。
「いきなり痛み止めを規制したときの影響は?」
「確実に暴動が起こります」
「ですよねー!」
「特にパーシオンではクロノスでは禁止扱いの薬物も市販されてますので……」
「れ、レプシトールは?」
「その製造元です」
あいつらー!
ホントあいつら!
もうホントあいつらああああああああああああッ!
「むしろレプシトール人は自宅で違法薬物を合成するのが主流でして」
「なんであいつらそうやってバカな方向に優秀なのよ!」
さーて、いつものが始まった。
「カレンさん呼んで!」
トイレ休憩。
俺もトイレに行く。
用を足すとイソノの野郎が廊下でウンコ座りしてお茶飲んでた。
「へいパス」
俺と目が合うとお茶のペットボトルを投げてきた。
「あざっす」
「大事になったな……」
「いつものことだけどさー……レプシトールがいつも裏にいる!」
「でも併合地域で一番信用できるのもレプシトールなんだよな」
「そうなんだよぉ……」
レプシトールは徹底的な合理性から判断してクロノスの一部になった。
だから俺たちへ敵対するつもりはない。
ただモラルがないだけだ。
へなへなとヒザから力が抜けた。
俺もウンコ座り。
「なんなのよ。あいつら~」
「善悪の分別がつかない子どもだと思った方がいい」
「ですよねー!」
かと言ってレプシトールを完全併合したくない。
同じルール内で共存できる気がしない。
根本が違いすぎる。
あくまで友好国としてツッコミ入れていくしかないと思う。
「カレンさん来たぞ」
エディに言われて会議室に戻る。
カレンさんはスーツ姿。
バリキャリ姿である。
眠そうだけど。
お目々まん丸。
あらかわいい。
いつもはキツい感じなのに、いまは完全に幼女だわ。
なにかおかしい。
「えーっと……お薬。カレンも使ってるよ~。眠くならないやつ」
様子がおかしい!
口調が子どもになってる。
俺は焦ってすぐに専門家を呼び出す。
「ケビン! カレンさんが薬で子どもになってる! 今すぐ来て!」
ケビン先生が出る。
「夜勤でようやく寝れたのに……」
眠そうだ。
病院の仮眠室だ。
「悪い……カレンさんが壊れた……」
「うん、画面に出して」
「は~いケビンちゃん♪ カレンだよ~♪」
ケビンが真顔になった。
「救急車そっちに回す! 入院だからね!」
「ですよねー!」
はい一人入院。
リアルタイムでの病院搬送はクロノス政府に衝撃を与えた。
もうね、俺たちが考えてるより深刻だったのだ。
そりゃ人が死にまくったからこうなるのは予想の範疇なんだけどさ……。
最前線までわからないよ~!
薬品系は素人だもん!
ケビンも医者であって薬剤師じゃないし!
どうすんのこれぇ!




