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第八百三十九話

 サム兄の活躍によりビースト種問題が浮上。

 公爵会の領地に住んでたビースト種は事実上奴隷扱いだった。

 貴族の所有物みたいに扱われてたようだ。

 というか中立派のレンやマルマくんすらそういう扱いを受けていた。

 だけど単純に解放すればいいわけではない。

 人間扱いされてないけど生活は安定してたのだ。

 貴族に逆らいさえしなければ食うには困らない。

 年を取ったからと言って放逐されるとは限らない。

 というか、昔から仕えてる年取った家臣を放逐できる人間は貴族社会でも異常者扱いである。

 いやだって、つき合いたくないじゃん。

 そんな冷酷な人間。

 公爵会くらいになると余裕もある。

 本音では劣等種と思いながらも、最底辺労働者くらいの待遇は用意してる。

 それなのに俺たちは家を丸ごと潰した。

 すると起こるのは人生のルール変更。

 自由に生きねばならなくなったのだ。

 自由ってのは責任も無限大。

 食いっぱぐれるもの多数。

 レンやマルマくんの領地に行くって救済策は用意してるけど、その情報にすらアクセスできないものが多数。

 たどり着いてもレンの領地で生きられるほどのコミュニケーション能力がないものも多い。

 どうしてもビースト種社会は利権が少なく、助け合わないと生きていけないのだ。

 人生のソロプレイヤーにはつらい社会だ。

 そんな連中は各種セーフティーネットもすり抜けて……たどり着く先はテロリストと。

 こんなのわからないよ!

 俺も嫁ちゃんも帝国の動向すべてを把握してるわけじゃないからね。

 どうしても届かない情報はある。

 今回は致命的だけど。

 いやでもわかんないよ……。

 まあいいや。

 とりあえず今回の件を画策した公爵会残党は逮捕。

 警察のお仕事だからアマダきゅんに頼む。議会への報告も頼んだ。

 今回ヒャッハーした陸軍であるが再訓練。

 そりゃさー、実戦経験の桁が違う宇宙海兵隊くらい戦えるようになれとは言わんけどさー。

 ちょっと訓練不足すぎたんじゃない?

 イソノの野郎が父ちゃんに愚痴られたって言ってた。

 情報交換かねて週一で父親とリモート飲みしてるんだって。

 二人とも親子だし、軍を束ねる立場だからわかり合えるのだろう。

 今回明らかになったのは内政バランスの悪さだろう。

 俺も嫁ちゃんもね。

 ビースト種は基本俺たちの仲間。

 なんていうのがそもそも間違いである。

 そもそも俺たちが旧来の派閥をぶっ壊したのだから、割を食う人間は多い。

 そこに気を使っていたつもりだったが……。

 ホントここが難しいんだけど、気を使ってたつもりになっていた。

 実際は元公爵会派閥は干されすぎて帝都で就職もままならず。

 ビースト種は協力プレイ必須で、ソロプレイヤーは生きていけなくなった。

 あっちを立てればこっちに手がまわらず……ふええええええ、内政難しいよ~!

 しかも手遅れ気味になってようやく発覚するんだぜ。

 今回のことは教訓としておこう。

 俺もパーシオンにマゼランにオーゼン抱えてる身だからな。

 あいつらなに考えてるかわからないのよ!

 逆にレプシトールは不満があればガンガン要望上げてくれる。

「一緒に考えようか」って言えて楽だよね……。

 俺だってわかんないんだからさ!


 内政はこんな感じ。

 次は家族の話。

 サム兄はマキさんとつき合ってるようだ。

 あとは野となれ山となれ。

 なおサム兄が会長やってるカミシロアグリがマキさんの研究を支援することになった。

 マキさんの研究を盗んだやつらは激詰め。

 アマダに投げたけど逮捕できるかはわからない。

 でも軍やカミシロアグリ、クロノス軍による民事訴訟で社会的に死ぬと思う。

 合法的に追い込んでくれる!

 で、別件。

 サム兄を士官学校不合格にした担当者の責任を問う声が上がった。

「素手でビースト種ぶちのめす最強の男をなぜ兵士にしなかった!」って。

 いや無理よ。

 サム兄って勉強苦手だもん。

 サム兄の高校の成績表渡して黙らせた。

 で、長兄。

 ママンがサシで話した。


「どんな女性ならいいのです?」


「レオより料理が上手な女性」


 あんのデブウウウウウウウウウウウウゥッ!

 なに言ってんじゃボケエエエエエエエエエエェッ!

 もちろんママンも同じ思いだった。


「そんな女性は存在しません!」


 知り合いの中だと熟女すぎるハーサンにニーナさんとケビンかな?

 ちょうどいい年齢のがいない。

 マキさんの知り合いもいないらしい。

 そもそもだ。

 料理なんて外食産業の人間か軍人でもないかぎり身につかないスキルなわけでな。

 世の中の大半は冷食生活だ。

 俺は趣味でやってるだけだし。

 ということで長男の無理ゲーな要求にママンは絶望の涙を流すのだった。

 もう孫八人いるんだしあきらめようよ。

 サム兄だってそのうち結婚して作るでしょ。

 そしたら直系もいるわけだし。

 長男はあきらめてさ……。

 って直接言ったら無言で拳骨落とされた。

 レオ・カミシロ・クロノス。

 王様になっても親に拳骨を落とされます。

 ということで……バーベキューやりたい。

 ということでお肉焼き焼き。お外でパーティー。

 ようやく胃潰瘍も完治して料理も許されるようになった。

 というか胃潰瘍が長引いたのって料理できないからじゃないかと思う。

 クールなダディを目指す俺には料理が必要なのだ。

 つうわけでお肉を焼く。

 肉を焼き食べられそうな具合になってくるとレンがやってくる。

 子どもたちはおかんが面倒見てる。

 ニーナさんもいろいろ作る。

 このパーティーも仲間内の無駄なやつ。

 悪い連中の贅沢かと思うかもしれない。

 違うんだな。立派な会議なのだ。


「それで逮捕したビースト種をどうするって?」


 エディに聞かれた。


「イソノの父ちゃんがクロノス送りにするって。クロノス軍で面倒見ることになった。なあイソノ!」


「あー……親父が言うには地元から引き離した方がいいだろって。悪い仲間が一箇所に集まってるから集団で騙されるわけでさ。兵士しかしたことないからクロノス軍で引き取ればいいだろって」


「それさー、クロノス軍を刑務所かなにかだと思ってないか?」


「しかたないだろ。こっちの方がビースト種の怖い隊長がいるからいいってさ」


 そりゃね。

 レンの部下がたくさんいるからそうなんだけどさ。

 うちは更生施設じゃないのよ。


「規律を叩き込めば大人しくなるだろって」


 えー……。

 って思ってたら熊の獣人がやって来た。


「てめえがクロノス王か!」


「誰?」


「てめえの兄貴、サム・カミシロと再戦させろ!」


 こないだの熊の人か。

 ありゃまー、最速で島流しになったのね。


「旦那様。私が」


 レンが前に出るが俺は肩をつかんで制する。


「いいからいいから。レンは肉見てて」


 久しぶりに余興でもしますか。


「ほいよー。イソノ、土俵描いて」


「へーい」


 イソノが丸く土俵を描いてくれた。


「熊の人。俺と相撲やろうぜ。勝てたら兄貴と対戦させてやる」


「うおおおおおおおお! ぶち殺してやらああああああああああッ!」


 短パン上半身裸で相撲。


「ハッケヨイ!」


 エディが行司。

 ほい、手をついて。


「ノコッタ!」


 まずは頭からぶちかまし。

 ドーンッ!


「うげッ!」


 あ、もう白目むいてやんの!

 弱ッ!

 はい、突っ張り。ペシペシペシペシ。


「うげ! うごごごごご!」


 なぜか勝手に崩れそうになってる。


「おい熊! 弱すぎんぞ!」


 ほらー、やる気出さないからギャラリーが怒ってんじゃん。


「ほれ、いくぞー!」


 短パンつかんで持ち上げ。


「ひえええええええええええええええええええぇッ!」


「ぎゃはははははは! 尻見えてんぞ!」


 みんなが飲んでたビールの缶を投げ込んでくる。

 もー、やめてあげなよー!

 すると食い込んでTバック状態になった短パンがビリッと破けた。

 パンツまで破けた。

 おっと、もろだしは避けねば。

 そのままギャラリーに見えないように股に手を入れて持ち上げる。

 相撲ってよりプロレスのボディスラムね。

 タマタマが腕に当たってるのがとても不愉快。


「ちょ、ちょ! 待て、待って!」


「ほいッ!」


 仰向けにならないように気を付けて、ぶん投げる。

 受け身も取れずに顔面から地面に突き刺さった。

 うーん弱い。

 論外。


「レン、鍛え直してあげて」


「かしこまりました。地獄を見せてやりますね」


 はっはっは!

 クロノスは平和だったのである。

 こうして移住したビースト種は本当の恐怖を味わったという。

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― 新着の感想 ―
長兄レオくんの料理食べたことあるの!?酷い目に合わせといてツンデレかよぉ…… あと、レオと長兄の掛け算コメントがあると思ったのに……
ω
長兄、キミ座敷わらし科かな?
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