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第八百十七話

 食堂で煮込みうどんを食べながらお仕事……。

 煮込みうどんって言ってるけど、クロノス風。

 鶏ガラの塩スープ。

 卵入り。

 スパイス禁止で優しい味。

 要するに薄味。


「レオ! だから休みなよ!」


 帰ってきたケビンに書類を取り上げられた。

 できることならうどんを取り上げてほしい。

 そしたら唐揚げ食べるから……。


「まったく……いつまでたっても潰瘍治らないよ! そもそもなんの仕事……嘘でしょ」


「そう思うよね」


 さあ、俺が潰瘍こさえた理由の大半である。

 ローザリアの問題だ。


「なにもないってどういうこと?」


「正確には『あらゆる信号に反応しない』かな?」


 遠いから現在の状態を観察するんでも限界がある。

 そりゃ無人探索船と中継機がえっちらおっちら向かってるけど……。

 それも最速で来年かなあ……。

 壊される可能性もあるしね。

 一応、途中までミサイルで運んで燃料尽きたら船が展開するようにはしてる。

 それでも限界はあるからね。

 で、現状はなんの通信もできない。

 ローザリアの通信技術は開示してもらってる。

 同じ規格でシャーロットの個人認証された通信のはずなんだけど……。

 そこから推測できるのは……戦況がそうとう厳しいのだろう。

 全滅と断定する証拠はない。

 でもいい傾向じゃないよね……。

 あー、胃が痛くなってきた。

 明日は我が身なり……。


「はい、薬」


「ミント石膏味ぃ!」


「飲んできなさい」


「ふえーん」


 飲んでくる。

 そういや昼から飲んでなかったな……。

 おうどん冷めてる……。


「うどん冷めた……」


「レンジで温める?」


「ま、いいや。食べやすいし」


 早食いするとケビンに怒られる。

 ゆっくり食べて終了。

 さーてここでダチとコミュニケーションを取る。


「ところでさー、ケビン。なんで星の神が最強になったんだろ?」


「出太陽系の神話。小学校の国語で習っただろ?」


「待って……思い出せない……」


 そういやそんなのあったな。


「えっと……むかしむかしおじいさんとおばあさんがパーリナイ……」


「ありもしない記憶を捏造するな」


 なかったっけ?

 あったような気がする。


「あれか! 道徳のついでにやらされた!」


 ただいろんな神話をごっちゃにやったせいか、宇宙時代から始まる帝国神話がどれなのかわからない。

 そもそも帝国って建国時点で多民族国家だからな……。

 惑星によっては独自の神話があったりする。

 リコちのとことか。

 なおカミシロ領に独自の神話は存在しない。

 だって帝都近郊だもん。

 そう考えると本当に干されてたんだな……実家。


「そうそう。帝国神話。その出太陽系。今となっては場所なんてわからないけどね」


 環境汚染か戦争か。

 原因はわからないけど太陽系から進出したと言われてる。

 ……だっけ?

 もっと昔の戦国時代の歴史の方がまだ頭に残ってる。


「さすがドクター……ほぼすべての知識がうろ覚えの俺とは格が違う……」


「叩くよ。レオの場合、武術や人形戦闘機の知識がバケモノじみてるでしょ。軽度の故障なら自分で直せるでしょ」


「交換可能なとこはね。一から作れるわけじゃない」


「それで充分でしょ。パイロットなんだから。上級工兵持ってる方がおかしいんだから」


 おっと話が脇に逸れてた。


「それでさー、ぜんぜん思い出せないんだけど、なんで星の神が強いんだっけ?」


「出太陽系で、いままで最高神だった太陽神が信仰対象じゃなくなって、星を崇めるようになったの。ほら恒星は珍しくないから。太陽神って現在だと光の神みたいな位置づけだよね」


「ふへー……」


 そういうことね。

 ふへー……なんか重要なことを聞いたような気がする。

 でも山も珍しくないのに山は信仰対象なのね……。

 一つしかなかったのかあかんかったのか。


「って習ったでしょ!」


「憶えてないなあ。中央のエリートになって二十年ぶりに故郷に戻ってきて、カスみたいな地元民を片っ端から見下しまくる話はよく憶えてるんだけどね」


「なんの話かわかるけどさ! その要約間違ってると思うんだけど! もっと物悲しい話でしょが!」


「えー……」


 まあいいか。

 子どもの頃の感想と、今の感想は違うよね。

 もう一度読んでみるか。


「それで……太陽神信仰が弱くなって、今度は大地信仰が強くなったってわけ。それでも最高神は太陽神のままだけどね」


 たしかに大地はそこにあるもんな。

 山も珍しくないけどあるもんな。

 太陽のオリジナルはどこにあるかわからんけど。


「ふへー……他の恒星じゃダメだったん?」


「ダメじゃないけど特別感がなくなったって習ったよ。そのせいで仏教が強くなったわけ」


 ゲーミング仏教か。

 あっちも熾烈な内部争いの結果キラキラしたのが勝ったんだと思う。

 うーん詳しい話はわからん。

 帝国史って専門でやってないとわからないのよ。

 あれよ。

 古代史でも鎌倉時代と戦国時代と江戸時代は理解してるんだけど、室町時代だけ深刻なレベルでわかんない現象。

 それに帝国史は捏造がひどすぎて受験勉強の役に立たない。

 だってさー。ある日突然、『その記述、帝国への反逆罪認定されたから今日からこっちな』っていきなり変わるんだもん。

 大学も入試問題で出題したくないやつ。

 銀河帝国も妖精さん周りの出来事を触られたくないから、大学受験の傾向をスルーしてる。

 嫁ちゃんの代になってようやく『事実に基づいた学術的に正しい記述』になったってわけ。

 受験生ブチ切れだったけど、今の歴史の授業に取り入れられるのは数年後の予定。

 妖精さん周りの出来事も習うみたい。

 我ら夫婦は常にノーガード戦法なのである。

 帝国史なんか俺がわからないのも当然か。

 あ、そうそう。

 本題言うの忘れてた。


「ケビンさー、俺思うんだけど。座敷童ちゃんって太陽神じゃね?」


 なにその顔。

 え、なんで顔色青くなってるの?

 どうしたんケビン?

 ほら現在の姿になった理由もこれでしっくりくる。


「たたたたたたた、たいへんじゃないか! なんでこのタイミングで言うかな! 君は!」


「あとで神社の関係者に聞いてみようか」


 この後の騒ぎなどまったく予想してなかった俺は笑顔で言った。


「ぼくの胃がピンチだよ!」


 そう返したケビンの認識の方が正しいのである。

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― 新着の感想 ―
なるほど。現状は『その時不思議な事が起こった』結果か。
座敷童は太陽の中座ったっけ? 後、最高神は犬に食われた神? あれ?なんか違う
もしかして座敷童ちゃんが出てきたのって、アマテラスが主神という認識があるレオが本格活動したからか?
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