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第八百十六話

 それは潰えた未来。

 帝国は滅亡し、内部闘争に明け暮れていく。

 帝国領の半分をなくしてもまだ人類は目覚めてなかった。

 ゾークの外骨格を得た俺はゾークマザーの洗脳を打ち破った。

 次々と倒れていく仲間たち。

 とうとう一人になった俺はゾークマザーに挑み……そして倒れた。

 そして……誕生しないはずの弟にすべてを託した……。


「って、待て! エッジが救世主になった方がマシじゃねえか!」


 叫んだところで夢だったとわかった。

 これ兄貴の記憶か。

 あの某ライダーっぽいのは兄貴か。

 宇宙怪獣カワゴンと比べて格好良すぎないか?

 ……考えるのをやめておくことにする。

 エッジでも兄貴でも成功してゾークマザー倒した後に地獄が待ってる。

 妖精さんによる全人類抹殺だ。

 前はワンチャン勝てるかもって考えてたけど、勝っても全滅だよねってのが王様になった現在の感想。

 マザーAIなしで人類が存続できる気がしない。

 だって自分のクローンの子孫が全滅したら妖精さんが人類守る理由なくなるし。

 自分のクローンの子孫が皇帝だから我慢してるだけだもん。

 そりゃ恨んでる人類抹殺しますわ。

 ……待てよ。

 俺がゲームと思い込んでるのは可能性のある未来一覧か。

 それにしちゃ情報の出し方とかさー。

 なんて思ってると自分が独り寝だったことを思い出した。

 そうだ……膀胱炎が完全に治るまでえっちらおっちら禁止だった。

 いまだにトイレ行く度に痛くなる。しみる……。

 そのせいで子ども欲しい勢のメリッサがバチギレである。


「はやく治して子ども作るぞ!」


 体育会系構文でしょんなこといわれても~。

 治るまでに時間かかるものはしかたない。

 まだ体が弱ってて感染症に弱い状態だから、きなこと一緒に寝るのも禁止。

 きなこは嫁ちゃんと寝てる。

 オレ……カナシイ……。

 抗生物質的と消炎剤はマシンで注射される。

 炎症起きちゃったから投薬治療するしかないのだ。

 蜘蛛型ドローンのおかげで投薬が劇的に楽になった。

 注射するのは改良版の蚊型ドローンである。

 投薬時間になると飛んできて勝手に注射する。

 痛みはなく気づかない。

 これ暗殺に使えるんじゃってのは考えないことにする。

 ケビンが嫌がってるし。

 ケビンはお医者様。

 命を救うのがお仕事である。

 たった二年でこれだけ科学技術が進歩した……。

 それでも膀胱炎にかかるのか……。

 というか膀胱炎になったのは確実に兄貴のせいだと思う。

 血を分けた兄弟なのにシリアスすぎんのよ!

 やはりカミシロ家の血が入るとコメディー担当になる。

 妖精さんも仲間だし、嫁ちゃんは元気だし。

 なら宇宙怪獣カワゴンでよかったのか……。

 考えるのやめとこ。

 メリッサの母親問題は解決した。

 メリッサパパが責任持って座敷牢に入れて管理するそうである。

 刑罰加えるほど悪いことしてないんだけど、クロノス王家に害をなす存在だ。

 もうちょっとアグレッシブな国なら名乗り出た時点で始末されるだろう。

 というか嫁ちゃんはメリッサに内緒で始末しようって提案してた。

 あの目は本気だ。

 たしかに問答無用で銃殺されても文句は言えない……というか永遠に口を塞ぐ方が楽だ。

 生きてるだけで邪魔なんだよなあ……。

 親殺しは精神的に嫌だから殺らないだけで。

 人権?

 それは国家が正常なときに使う言葉。

 そもそもだ。

 親殺しをした歴史上の偉人たちも自分自身で発案したか疑わしい。

 救おうとしても手がなかったのか。

 嫁ちゃんみたいに時流に逆らわなかっただけか。

 家臣が言い出したら俺だって止められない。

 勝手に殺っちゃうこともあるだろう。

 俺だって嫁ちゃんが俺の実母を開拓惑星送りにしてたの知らなかったもん。

 王様的にはリスク回避だってわかるから絶対に文句言わないけどね!

 とにかく殺さないで終了。

 ルーちゃんママには包み隠さず報道してもらった。

 だってメリッサ悪くないし。

 こちらはノーガード戦法で行くって話し合って合意した。

 さっさと銀河帝国に強制送還してよかった。

 いつ暴徒に殺されてもおかしくなかったもん。

 禍つ神がやってきたどさくさの出来事で助かった!

 ナイスタイミング! 神様偉い!

 殴り込んできたのは星の神だから、貸し借りはないけどとりあえず感謝だけしとく。

 俺の養分になってくれてありがとうね!

 膀胱炎の恨みをこめて!

 そんなある日、ケビンの診察を受けに病院へ。

 泌尿器?

 いや違うって。

 神の呪いの影響がないかの検査。


「ケビン先生。トイレ行く度にしみるのは呪いでは?」


「膀胱炎だね。それは泌尿器科の先生に言っておくね」


「他の人はどうなの? 末松さんとか」


「ようやく元気になったよ。一時はたいへんだったんだよ。臓器の数値がとんでもないことになって。クロノス教の聖歌隊も死にかけたんだから!」


「無事なのタチアナだけか」


「あと体力的に強かった人は影響少ないかな。末松さんで防御できないギリギリくらい」


「いや末松さんフィジカル弱くないって。少なくとも騎士団長やってただけはあるレベルだよ……」


「でもレオとかカトリ先生は無事だし。カトリ先生は壁に叩きつけられたときの外傷だし」


 カトリ先生はいまだに入院中。

 今回だけは抵抗力落ちるからナノマシン使わず治せって。

 呪いの影響が出るのが怖いって。

 肋骨が肺に突き刺さってそれか……。

 次に神様が殴り込んで来たら問答無用で部屋爆破でよくない?

 これはかなり真面目に提案してる。


「で、俺はあとどれだけ生きられる……」


 しゃきーん!

 悲劇のヒーロー見参!


「そういう悪趣味な冗談やめろバカ! なんの影響もないよ。相変わらず赤血球足りないから薬継続ね」


「へーい」


 結局、シリアス展開からの感染症だけであった。

 いや待てよ。


「えっと……あの歯磨き粉石膏味の液体胃薬は……」


「継続」


「ふえーん! あれのせいで食欲落ちてるんだよぉ!」


「あれが一番効くんだからしかたないだろ!」


 ぴえーん!


「山盛りの唐揚げ食べたいよ~!」


 あ、口に出したら本当に食いたくなった。

 仕込んどこ。

 俺は味濃いめでパリパリのやつが好きなんだよね。


「ダメに決まってるでしょが! 胃潰瘍あるんだから!」


 呪い関係なく発見されたやつ。


「びえーん! コーヒーもダメとか鬼か!」


「うるさいなあ! おかゆ食べなよ! レオなら美味しいの作れるでしょ!」


 しかたない。

 鳥肉入れよう。

 くたくたに煮れば許されるだろう。

 夜は厨房にうどんでも頼むか。

 煮込みうどん。


「ぐすん……神……絶対に許さねえ……」


「言っておくけど神様関係ないからね。もとからあったの発見しただけだから」


「ふえええええええええええええん!」


 こうして食い物の恨みだけが増幅していくのだった。

 人はそれを八つ当たりと言う。

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― 新着の感想 ―
胃潰瘍はストレスが原因じゃないでしょうかね…
レオはもちろんだけど嫁ちゃんも妖精さんにとって特別な友人なんじゃないかな。 遺伝子上の子孫だということもあるが、それだけじゃない。 おそらく歴史上唯一、ルナ姫に対するむごい仕打ちを悼み涙を流した人類だ…
あるのがいけない!(八つ当たり)あるのがいけない!!(八つ当たり)
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