第八百十四話
膀胱炎が治って退院。
血尿も出なくなって一安心。
退院したその足でカレンさんがやってる巡回展に行く。
現在は王都から少し離れたクロノス教の神殿で開催してるらしい。
山の方かな。
たしか俺の……というかカミシログループのワサビ田がある。
クロノスの王都惑星は全体的に山が多い。
雨期に山から田んぼに栄養が流れていく構造である。
だから現在では米作りもさかんに行われてる。
毎年同じ場所で米が収穫できるってすごいよね。
惑星カミシロじゃ水耕栽培施設じゃないと米は作れない。
しかもお高い。施設も高ければできた米も高い。
だが……クロノス首都星ならほぼ全土で生産が可能。
ぐへへへへへへ。
ワサビ田は少し標高の高い場所にある。
そこできれいな水でワサビを作っている。
陸上栽培じゃない本物である。
すばらしい!
山だらけの土地ってなんだかんだで豊かなんだよね~。
そんな山の中にクロノス教の神殿がある。
とはいえ開発されてるから麓からモノレールが出ている。
モノレールで上に。
自動車でも行けるけど「ぼくモノレール乗りたいんだもん!」と駄々をこねたら乗ることになった。
いや乗りたくなるじゃん。こういうの。
クロノス教の神殿前で下車。
お土産売り場で時間を潰す。
というか大人買いしまくる。
いや宮殿スタッフや関係者に配る分だもの。
これはしかたない。
あるのがいけないあるのがいけない。
「もっとないッスか?」
店の人に笑顔で注文票を渡された。
あ、はい。お手数おかけします……。
買い物も終わって、近衛隊とソフトクリームを食べてると嫁ちゃんたちがバスでやってきた。
「なんじゃ、婿殿。モノレールに乗ったのか!」
「浪漫!」
親指を立てる。
本当は貸し切りにしたくなかったけど警備の都合上、貸し切りに。
国民の皆様におかれましては、たいへん申し訳ねえッス。
子どもたちは宮殿でおかんたちに預けてる。
俺は山ほどのお菓子をバスに乗せる。
どうせ帰りにみんなで食べるやつだもんね~!
あ、酒も買ったぜ!
どうせビールは麓で買ってるだろ。
こっちはマニアックな地酒。
わけのわからん材料のやつ。
もともとクロノスの一部地方でしか作ってないやつ。
いいよねー、こういう地のもの。
マズければマズイで笑い話にもなる。
馬鹿にしてるんじゃなくて、銀河帝国との文化の比較として重要って意味。
こっちに来てる文化系の学者やカミシログループの商品開発部にも送った。
銀河帝国人の口に合えばそのまま商品化。
口に合わなければ似たテイストで魔改造されて銀河帝国で販売される。
こうやって相互理解を深めていくのよ。
なんでもかんでも持ち込んで文化を破壊すべきじゃない。
クロノスのものも取り込んでいく。
マゼランやオーゼン、パーシオンだってゆくゆくはそうなるだろう。
強者だからって文化をすべて破壊して銀河帝国風にするつもりはない。
と言ってもクロノスはわりと銀河帝国に近い感性を持ってるから輸入も理解も楽なんだけどね。
甘みとスパイスこそ正義のラターニア料理はまだ人気ないもん。
神殿の外では肉料理も販売されてる。
服をつかまれた。
「……ワンオーワン。ほしい?」
「欲しいであります!」
「レンも食べるだろ?」
「はい!」
結局みんなで軽食タイム。
俺は麺料理をいただく。
俺はベーシックなやつ。
わりと薄味。
米粉かな?
野菜が乗ってて美味しい。
田舎のうどんというか。麺が米粉だけど。
素朴な味である。
なお、仲間のほうとう勢は味噌味。
俺らの知ってる味噌じゃないけど、おおむね満足してた。
ワンオーワンは串焼きとかも注文。
タチアナは俺と同じもの。
なおシーユンは母国での神殺しパレードで欠席。
……いろんな都市でやるハメになったらしい。
太極国でも展覧会開催してほしいって。
へいへい。カレンさんに言っておく。
食事を取ったら展覧会へGO!
門を抜けて神殿へ。
聖女タチアナと国王の俺は清めをしなくてはならないそうである。
ま、いいか。
ついでに食後の歯磨きしとこ。
クロノスの伝統衣装に着替え。
タチアナは最高位の法衣を身に纏う。
軍服でもいいんだけど、宗教の儀式なのでクロノス教のやりかたに従う。
でも改宗したわけではない。
俺は座敷童ちゃんの子分である。
存在そのものの製造元が座敷童ちゃんなんだからこれはしかたない。
でも敵対するつもりもない。
弾圧なんかしてもいいことない。
そもそも俺はクロノス教に「どうにかして王様やめられませんかね?」って何度も相談してる。
そのたびに全力で阻止してくるはクロノス教だ。
俺が王の間は持ちつ持たれつやっていこうと思う。
中に案内されると折れたバットとイソノの等身大パネルがあった。
そこに曰くが書かれてる。
『二十年近く最下位近辺を漂ってたチームが優勝したときに決定打を打ったバット』
九回裏からのホームラン映像が流れてる。
たしかに御利益ありそう。
なんかさー、このバット。
イソノのところに売ってほしいって複数のオークション会社から問い合わせがあったらしい。
神をぶん殴ったバットとして逆に価値が上がったんだとか。
絶対売ったら怒られるやつ。
次は例の呪物。
我が社のマスコットである。
頭が砕けてる。
もはやご神体扱いである。
『興奮した鬼神国ファンが優勝時に川に投げ込んだ等身大キャラクター像。その後急に勝てなくなり呪いの像とされていたが禍つ神との戦いで一撃を与えた』
投げ込んだときの映像と中島が像を持って突撃したときの映像が交互に流れてる。
バカだろお前ら。
その後もタンク先生の化粧まわしやザウルス先生のチャンピオンベルトの展示を観覧。
タンク先生には神に勝利した記念で新しい化粧まわしを作る予定。
ザウルス先生にも神に勝利したことを記念するチャンピオンベルトを贈呈予定。
タンク先生とのタッグベルトね。
帝国の一番デカいプロレス団体とチャンピオン認定団体の許可もらったもんねー!
俺はちゃんと弁償する男である。
ただカウントワンツースリーのマスコットだけはどうしようか悩んでる。
「これ直していいのかなあ?」
嫁ちゃんも渋い顔をする。
「やめとけ……と言えないのう……祟りあったら怖いし」
「ですよねー」
カトリ先生の錆びて崩壊した刀の残骸。
これは神刀だよなあ。
なんとか新しいの作りたい。
もう手に入らないっていうのは職人が亡くなったからだって。
どうしよう。弁償しようがない。
他にも様々なものが展示されてる。
今回のMVPである末松さんの衣装にタチアナの衣装。
太極国応援団のユニホームに鬼神国応援団のユニホーム。
鬼神国人から初めて銀河帝国のバスケットボールチームに入った選手が優勝したときのボールに……潰れちゃってるけど。
全銀河帝国高校サッカー大会優勝トロフィーに、剣術と柔道の優勝旗に。
これクロノスにいる銀河帝国人の選手や指導者から借りてきたのか……。
体育系多すぎないか?
はいはい! 全部弁償します!
同じものと思い出は弁償できないけど、神への勝利記念の別なの作ります!
やることが雪ダルマ式に増えていく。
でも俺たちは神に勝利したのだ。
撤退させただけでも勝ちは勝ちだもんね~!
このまま勝ち逃げしてくれる!




