第八百十三話
神は血だまりになり、静寂が訪れた。
神殺し?
違う違う。
撤退させただけ。
俺らは入院。
一ヵ月くらいは入院したまま経過観察だって!
一番重傷だったのは俺と末松さん。
今回の敢闘賞は末松さん。
最も軽傷だったのはタチアナ。
歌いすぎて喉が枯れただけ。
一人だけ強すぎんのよ。
自尊心がズタズタにされたのはクロノスの神官に太極国の僧侶たち。
自分たちはゴミみたいに蹴散らされたというのにスポーツ勢が健闘した。
野球への信仰心の強さに格の違いを見せつけられたと勝手に解釈したようだ。
単にフィジカルの差だと思うのよ。
入院中はクレアとカレンさんに執務を担ってもらう。
クレアはタチアナの後ろにいたおかげで黒い血を吐いてないから入院しなくていいって。
ポリーナさんにはクレアの秘書をやってもらう。
レンやメリッサも元気。
今回の件はルーちゃんママがドローンでライブ放送。
俺と生まれなかった兄貴とのことまでは放送しないけど、メリッサの母親の件まで含めて星の神の陰謀で片付けられた。
もうそれでいいや。
さーて、ここからが本題だ。
俺は失敗した。
そう……カレンさんもまたレプシトール人なのだ。
カレンさんはどさくさ紛れに壊れた神器を回収。
末松さんの着てた血だらけの服としめ縄。
カトリ先生の錆びて崩れ落ちた刀。
ピゲットとレオニダスくんの盾。
折れたバット。
ばら撒かれた球場の土。
ひしゃげたチャンピオンベルト。
破れた化粧まわし。
頭が砕けたラウンドワンツースリーのマスコットキャラの像。
そして星の神を追い払った直後に倒れた俺が持ってた刀。
他にも持ち込まれた様々な道具を『神器』として回収した。
雑に扱ったり売ったりしたわけじゃない。
むしろ壊れた現状のまま丁寧に保存した。
それをやったら激怒どころか処分せねばならない。
そう……レプシトール人は優秀なのだ。
怒られるラインは心得てる。
カレンさんはクロノス王都にあるカミシログループの美術館で神器の展覧会の開催を発表。
俺が入院した十六時間後のことだった。
誰にも知らせず。秘密裏に計画は進行。
嫁ちゃんすらも把握してなかった。
発表され、クレアが止めようとしたがもう遅かった。
クロノス教が一噛み。
というかクロノス教が己の存在価値すべてを賭けた博打に出た。
王都惑星各地の神殿でも展覧会の開催が決定。
もはや誰も止められない規模になっていた。
吹っ飛ばされて足を骨折したタンク師匠は病室で知った。
「あれ? 俺の化粧まわしと現役時代の等身大パネル……なにこれぇッ!」
若いころのタンク師匠の名勝負が隣に設置されたディスプレイで流される。
ザウルス先生は帝国プロレスのチャンピオンになったときの映像だ。
折れた肋骨が肺に突き刺さって危なかったカトリ先生は「あの刀……二度と手に入らねえのに……」って泣いてたらしい。というか先生、バケモノすぎる。
展覧会は予約枠は一瞬で埋まり、当日チケット売り場は長蛇の列ができた。
とにかく神と戦った勇者の持ち込んだ品や戦いの様子を一目見たいと望む市民であふれた。
カレンさんに「問題起きたら責任はちゃんととってくださいね!」と釘を刺しておいた。
だがカレンさんは「絶対に成功させます」と自信たっぷりだった。
もう知らん。
俺と末松さんは集中治療室から出られず。
クロノス教の大司教たちは別の病院の集中治療室に入院中。
今回はさすがに負傷者が多すぎて病院を分けたんだって!
座敷童ちゃんが言うには、末松さんが神をビビらせなかったら負けてたかもしれないようだ。
末松さんが世間で正しく評価されてきている。
ニンジャ隊と俺の近衛隊はほぼ全員が入院。
対抗手段を持たない彼らは真っ先に血を吐いて倒れたそうである。
あとで俺の個人資産から見舞金出しとこ。
心配なのは神器の盗難くらいだろうか。
そもそも破損してるのでもう価値はない。
かろうじて価値があるのは化粧まわしくらいか?
新しい文化的価値が発生しそうだけど。
観客が多すぎて神器を盗むやついないだろうなとは思う。
地方開催も予約埋まってるし。
あ、そうそう。
太極国では神に勝利した応援団で大騒ぎになってる。
鬼神国もね。
応援団を率いたシーユンががオープンカーでパレード。
優勝パレードを超越した大騒ぎである。
球団とスポンサーから大衆に振る舞い酒が配られ、屋台は出まくり、人々は歓喜の声を上げた。
ここで不満が起きた。
第四陣で参戦するはずだった女性型ゾークの元おっさんのアイドル軍団。
……いや、あのね、効果に自信持てないから後に回されたんだと思うよ。
ワンオーワンも廊下で待機してた。
だけど廊下で応援歌を歌い始めた鬼神国応援団が効果を出したのがまずかった。
自分たちも歌いたかったのにと不満たらたらである。
カレンさんも相当な陳状が来たらしく、アイドルフェスの開催を決定。
クロノス王都星の全国ツアーが決定。
終わるまで入院して全責任をカレンさんに押しつけようと思う。
俺は尿道カテーテルを抜いたら膀胱炎になってて入院が伸びた。
トイレのたびに激痛がするでごわす。
一般病棟に移ったらやることは一つ。
深夜のカプメンである。
やはり深夜。
深夜のカプメンこそ美学。
大きなサイズじゃなくていい。
再現度の高いお高いカプメンじゃなくていい。
一番ベーシックなものを自販機で購入。
自販機からお湯が出るから入れてっと……。
途中、カプメンを求める同士である男性医師と遭遇するがお互い笑ってスルー。
男性医師は太ってた。おそらくカプメンを禁止されてる身だろう。
それでもなお我らはカプメンを求めていた。
今回はベーシックな醤油味。
みそラーメンもいいが、みそラーメンならインスタントの味噌で追い味噌したい。
やはりカプメンはいい。
カプメンこそ至高……と思ってたら乱入者が。
「あー! やると思った!」
ケビンである。
ケビンは俺の担当にさせられた。
「ラーメンくらい許して!」
「だめ! だいたいレオは死にかけたんだよ! わかってる!」
「わかってるけどさー。カプメンくらいいいじゃん!」
「もー! みんな同じ事して!」
「……え?」
カトリ先生他が奥のベンチでカプメン食べてた。
俺は汚い笑顔で親指を立てるのだった。
前のレオだった兄貴へ。
みんなは俺が守ります。
まだ終わらないのじゃ……
ゾークマザー戦で出そうと思って出せなかったのをようやく出せましたw




