第八百四話
カミシロ流。
別名カワゴン流。
打撃、組み技、武器、さらには忍術まで網羅する総合武術である。
古流の流れを汲み……嘘です。
俺があちこちつまみ食いしたパッチワーク状の技術をみんなで知恵を出し合って統合。
なんとか人前にお出しできる技術にしたものである。
これは涙なしには語れないカミシロ流誕生のお話である。
「要するに……強い流派ってのは技術が洗練されてるんじゃなくて練習量だよな。うちも練習量は多いぞ」
カトリ先生が身も蓋もないことを言い出した。
そうなんだけどさー!
カトリ先生は俺や嫁ちゃん含めてパトロン多いからできるわけでさ~。
「練習量が増えれば強い門下生が多くなって門下生が増える。そしたら工夫できる指導者も増える。そしたら自動的に道場が増えてるってわけ」
「でもそれ練習量増やすために門下生食わせる必要があるじゃないですか。道場だったのにラーメン屋やったらそっちで有名になってラーメンチェーンになっちゃったとか」
なおここで興行選んで大会失敗すると地獄になる。
そんな危ない橋は渡りたくない。
だから野球なんかのメジャースポーツは役所とズブズブになって企業に優先採用してもらってるわけでさ。
スポーツだけやってればいいわけじゃないけど、スポーツだけやってた人でも食える。これ重要。
帝国剣術も優秀な選手なら採用で有利だ。
本当に優秀な子は軍に入るけどね。
するとカトリ先生が俺の肩をつかむ。
痛い! イテテテテテ!
力がこもりすぎてるから!
「王の権力とカミシログループがあるじゃないか!」
あ、おっさん、クソ外道な顔しやがった。
「そりゃ食わせられますけどさー。そこまで期待しないでくださいね。俺にできるのはクロノス軍にクロノス警察にアマダ警備とカミシログループの一部だけですからね! 俺だけの国でも企業でもないんですから! あとカミシロ流のカの字もできてないんでカトリ流の支部からはじめますからね!」
「おういいぞ。お前はカトリ流の免状持ってるしな。その程度の責任は取ってやる」
というわけでカミシロ流はカトリ流の一支部としてスタート。
指導はカトリ先生。
なお俺に独立する気はない。
未来永劫責任をカトリ先生に押しつけようと思う。
……おかしいんだよね。
その話の次の日にはレプシトールで話題に。
そこから次の日にはクロノス全体へ波及。
さらに時間をかけて各国へ噂が伝わり、一週間もする頃には銀河帝国で報道される事態になった。
当然のように嫁ちゃんに呼び出される。
永遠ちゃんパパでちゅよ~。
あ、取り上げられた。
「婿殿……妾のところにまで問い合わせが来てるのじゃが」
怒ってる!
「俺のところにも問い合わせが山のように来ててツラいです」
「流派を立てるのはいいがもうちょっとやり方を考えよ! さっさと事態を沈静化せよ!」
怒られちゃった……ぐすん。
どうやら近衛隊と同じく俺の護衛であるレプシトールのニンジャ隊があちこちにベラベラしゃべったようである。
いや口止めしなかったんだけどさ!
ニンジャ隊もどうにか忍術をゴリ押しして組み込みたいようだ。
別にゴリ押ししなくても入れるって。
忍術は普段から使ってるし。逃走用にな! ニンニン!
で、嫁ちゃんの執務室から出たら、今度はクレアの執務室に連行された。
アークちゃんパパですよ~。
あ、やめろ。はい、スンマセン……。
「私の所にまで問い合わせ来てるんだけど!」
「ですよねー」
嫁ちゃんのところにも問い合わせ来てるんだからそうなるわな。
で、クレアにも「ごめんね」って言って出たところで、アイアンクローされた。
「ギブ! ギブ! ギブアップ!」
タップしたのに続行。
犯人はメリッサである。
「なぜ私に相談しない? 親戚連中に怒られたんだけど!」
「いや、だって、メリッサには館花流の継承という使命があるでしょ!」
気を利かせて遠慮したのである。
ところがメリッサは激怒。
「一門の連中にカミシロ流を探れって言われてるんだけどさ!」
「秘密なんてないよ! メリッサから習った居合で作業船の搬入口の扉切断しただけで!」
そうなのである。
居合は徹底した合理主義者のカトリ先生には教わってないのである。
あのおっさん、「納刀してるときに襲われるな。もし襲われても無理に抜こうとするな。素手で戦え。お前くらいになると付け焼き刃で戦うくらいなら素手の方がマシだ!」だもん。
メリッサが暇なときに初歩だけ教えてくれたものである。
具体的には抜いて切る動作。
一本目だけ。
つまりそれしかできないわけ。
「うん? つまり館花流の系譜なの?」
「系譜というか、つぎはぎ状に取得した技術をまとめる作業をしてるとこ。メインは帝国剣術と素手とナイフかな?」
「リコちから習った棒術は?」
「あれ難しいのよ」
フルスイングするタイプの棒術だもん。
本当に棒で相手をぶち殺そうとするタイプの棒術。
士官学校の授業で一瞬だけ習った杖が懐かしいわ。
あっちは剣の動きから来てるからわかりやすかった。
「イソノの薙刀は?」
「あれなー……」
難しいのが来た。
こっちも習った。
いやゾーク戦争初期はいろいろ試してみたけど、剣が一番強いのだ。
その武器として強いって意味じゃなくて俺の練度の話ね。
剣が一番練習してるってだけの話。
たぶん長い武器の方が強いんだけど、俺が使うとなると剣や刀だよねって話。
教わってないのは中島のハンマーくらいだろうか。
あれは、ほぼ我流だもんな。教わりようがない。
当たれば蟹はワンパン! 怖くねえぜ!
それが中島の言い分である。
……あれ? 真の天才って中島じゃね?
その後、リコちからムドガーとかっていうデカい棍棒の使い方教わって、現在はそれだもんな……。
やっぱあいつこそ真の天才じゃね?
「俺の周り天才が多すぎる!」
「いきなりなんよ? とにかくさ、実家には『居合は館花流』って言っておくから」
「おう……でもいいの? 免許持ってないよ」
「これからあわてて発行するんでしょ。そしたらカミシロ流を育てた館花流って言えるんだから」
ひどい話を聞いてしまった。
でもそんなもんか。
うーん……想定より話が大きくなってる。
そもそも俺は指導者の器ではない。
感覚派だし。
なんだかなーと他人事気分で思ってたのに……事態はさらに混迷の度合いを深めていくのであった。
ドウシテ……ドウシテ……。




