第八百二話
シャーロットは現場指揮をしてるらしい。
惑星級要塞。
このクラスになると毎日あちこち壊れる。
移動すればデブリや隕石にぶつかり……というか大きすぎて引き寄せる。
なんにでも適切な大きさというのはあるものだ。
経済性は丸ごと無視という思い切りの良さである。
コロニーも同じという説はあるが気にしない。
コロニーの運用実績はたくさんあるもんね。
ということで修理に追われることになる。
もちろんゾーク加工された外壁だといくらかマシになる。
特に宇宙線での劣化にはかつてないほど強い。
だが工事も生産も追いつかない。
限られたリソースはまずは生産国で使う。
銀河帝国で生産した分は銀河帝国で、クロノスで生産した分はクロノスで使う。
当たり前だけどこの辺の線引きができないやつらは多い。
そしたら鬼神国やラターニアや太極国に優先して輸出し、残りがローザリアかな。
いや戦略物資なんだから当たり前だっての!
別に売らないって言ってないの!
攻略法だってわかってる素材だ。
売ったからって産業スパイや裏切者がすでに製造方法を各国に渡してるはずだ。
そんなのはわかってる。
だからコピーされる前に特許取って正攻法で売ってしまおうってわけ!
ただ供給する配分をどうするかって話!
なかよしこよしの前に現実が立ち塞がってるぞってこと!
そりゃ生産力増やしてるけど……レプシトールには工場作らねえからな!
手順や仕様無視して作るのが目に見えてるからな!
俺、レプシトールはちゃんと尊敬すべき相手だと思ってるけど、そこだけは信用しねえからな!
モラルのなさで滅んだ連中に大事な建材の生産なんかさせねえからな!
お前んとこのママチャリ!
フレーム折れる事故起きたわ!
なんだあの極限まで薄いクソフレーム!
なーにが「夢の新素材です」じゃ! ボケが!
強度が足りてないんじゃ!
プロレーサーじゃねえんだから本体重量より体重減らせボケが!
俺への新製品のサンプル提供じゃなかったら、市民が大怪我してたぞ!
そうなのである。
俺が買い物行ったらフレーム折れたわ!
てめえこら! ワンオーワンに見つかる前に俺と近衛隊だけで食おうと思ってたスイカ潰れたぞ!
どうしてくれるんじゃボケ!
ケガ!? 変な音したからすぐ飛び降りたのでノーダメージ!
アザがちょっとできただけ。
スイカ買った瞬間がクライマックスって悲しすぎるだろ!
スピードだって出してないもんね! 近衛隊に怒られるから!
スーパー行くのにスピード出すわけないだろ! 近衛隊に怒られるもん!
自転車は全員その場で使用不可。
みんなで宮殿近くのコンビニでアイス食って終了だわ。
結局ワンオーワンに見つかってアイス一緒に食べたよ!
ど畜生! 俺のスイカ!
来年作るか……。
園芸用の簡単に作れるやつ。
メロンの種もポチっておこう。
ということでガチトーンでお説教。
報復……じゃなくて当然の結果として建材生産はさせないことにした。
スイカの恨みとかムカついたからじゃない。
ちゃんと考えて出した結論だ。
自転車一つまともに作れねえ連中に戦艦の重要パーツ作らせるかよと!
俺のスイカ!
じゃなくて、市民の皆様にケガがなくてよかった!
俺のスイカ!
ということで慢性的な人手不足と生産力不足が続く。
まー、でも、これはしかたない。
戦後復興なんてこんなもんだよね。
ここで「全力生産だ!」って調子に乗るとクロノスのメーカーですら粗悪品を作りかねない。
無駄な高クオリティーでもいい。
評論家がクオリティー下げて生産性上げろって言ってるけど無視。
評論家とか言う人の足引っ張ることしか考えてない界隈は滅びろ。
お前らは知らん。
俺、ゾーク戦争初期に軍事評論家と名乗るカスどもが嫁ちゃんの悪口言ってたの忘れてないから。
俺、なるべく怒らないようにしてるけど嫁たちの悪口は事細かに憶えてるからね。
「やはりクソメディアの我が子への悪口は暗殺対象に……」
「やめなさいって。レオくん怖すぎるから!」
妖精さんに怒られた。
「なんで自分はフリー素材なのに家族への悪口は暴虐王ムーブなの!?」
「妖精さん、わしゃのう! 自分はどうでもいい。だけど家族だけは別なんじゃ!」
「いいから! 放っておけばいいから」
「なんで?」
「どうせ放火される」
どうやら市民が俺にかわって処してくれるようだ。
偉い!
「これ愚痴なんだけどさ。レンの六つ子への当たりが強くてさ」
ビースト種への風当たりは強い。
そりゃさ、見た目が違うし、歴史的には奴隷扱いだったからね。
女性型ゾークに対するものとあまり変わらない。
クロノスですら、うっすら変態扱いになってる。俺が。
俺の悪口はいい。
でも子どもを嫌うのはおかしいだろ!
特に高齢者が嫌がってるようだ。
クロノスじゃイナゴのせいで数が少ないんだけど、それでも生き残りの権力者どもがね。
……成敗してくれようか?
「そりゃ私も腹立ちますけど! でも我慢してますし」
そもそも銀河帝国じゃ公爵レベルが愛人にしてたわけで!
発言と行動に差がありすぎるのよ!
クロノスやパーシオンだって実体は変わらない。
ヘルガさんたちの部族に権力者の子孫がゴロゴロいる。
あの惑星は実質ビースト種の流刑地だったそうだ。
「大丈夫ですよ。レンちゃんの子どもが大きくなるころには社会の空気も変わりますって。だって英雄の子どもですよ」
「だといいんだけど」
将来の内戦の種は潰しておきたい。
もし将来内戦になったらビースト種に負ける未来しかないと思う。
俺はそれでもいいんだけどね!
あ、でもアークや永遠やその子孫との戦いだったら嫌だな。
やっぱりやんわり潰しておこう。
うん、そうしよう。
「それでー、シャーロットちゃんは?」
「あ、いたいた」
宇宙港の工事現場にシャーロットがいた。
修理する前に宇宙港から輸送機で物資を運べるようにするための工事だ。
やっぱり小さい船の方がいいよね。修理楽だし。
シャーロットは船外作業用のフルフェイスのヘルメットに作業用のスーツ着込んでた。
政治家なので……その被り方は親方たちからすれば無言で殴るようなレベルだ。
現場来てるんだからシールド下げろと。
軍でも怒られる。
なお俺は軍の戦闘服フル装備である。
「おう、どうしたレオ王?」
「視察に来たよ」
「そうか、私もだ。そしたらこれだ。まったく、大げさな格好だ」
その言葉を無視してシャーロットのヘルメットのシールドを無言で下げた。
「なにをする?」
「聞いてシャーロット。ここは油断すると誰かが落としたボルトとかナットが超高速で飛んでくるの。シールドは必ず下げる。わかってね」
「そ、そうか。詳しいな」
「工兵でもあるからね~。それでさ、本国どうなの?」
直球で聞いてみた。
「わからぬ。なにもかもな。戦争中で通信が難しいだけかもしれぬ。全滅でもおかしくはない」
「そうか……心配だな」
「すまぬな。苦労をかける」
「気にすんなって。例の遺跡の調査は手伝ってもらってるし」
ローザリアはゼン神族の有識者だ。
調査ではがんばってもらう予定だ。
そんなこれから忙しいシャーロットであるが……。
シャーロットの本当の気持ちはわからんが……この程度の声かけしかできない。
コミュニケーションって難しいよね。
なんて思ってたら、作業船にデブリが直撃。
こちらに落ちてきた。
「ほらね、危ないでしょ」
「なにを言ってる! 大事故だ!」
ですよねー。




