第七百九十九話
クロノスに帰りクレアやレンとの結婚式。
結婚式というか国民向けの披露宴……戦勝記念兼ねたやつかな?
なんか凄かった。
招待客だけの会場のはずが、群衆が警備を突破。
近衛隊と女性型ゾークの騎士団、ハットリさんのニンジャ集団までいたのに……なぎ倒された。
あまりに多勢に無勢。
クロノス軍も市民に攻撃するわけに行かず「入れませ~ん!」と怒鳴るしかなかった。
警察もアマダ警備も止めたが押し倒される。
群衆心理怖すぎ!
お外で式典やってたので入り口で押し合って圧死みたいなのはなかった。
将棋倒しも奇跡的になかった。
ただ偉い人たちが人の波で倒れたくらいだろうか。
この少し前に中止が宣告。
すでに俺たちは輸送機で運ばれていた。
「あばよ~!」
俺と嫁と子どもたちは無事脱出できた。
はっはっは!
クレアに怒られに行こうっと。
するとクレアは怒ってなかった。
「別に怒ってもしかたないよ。レオは人気者だし。今回は完全に事故だしね」
許された!
「みんなで食堂でパーティーしようよ」
「いいね!」
そこに嫁ちゃんがやって来た。
「なんかすまぬな……」
この騒ぎで市民に負傷者が多数出た。
警備の責任を追及されたが……入れないってさんざん言ってたもん!
ちゃんと集まるなって言ってあったし。
警察も車両でバリケード作って何度も「解散するように!」って警告したもん!
ちゃんと警告用の発煙筒使ったもん!
それなのに強行突破した方が悪い。
射たれなかっただけありがたいと思え。
いや冗談ではなく。本当に。
他の国だったら射たれてるからね!
クロノスだから逮捕だけですまされたけど!
警備が足りなかったのではと会議で集中砲火されたけど……それは本当にそう。
素直に謝罪した。
被害者は俺と嫁たちなのに怒られてるのは俺。
……なぜだ?
軍も全方面に頭下げまくってるけど。
……なんかムカついてきたぞ。
「あのさ……警備の金ケチったの財務担当だよね? 国民的イベントは企業が寄付しまくってくれるし実質無料って……前から言ってるよね? 軍事パレードもやれって言ってたのに却下したの誰?」
「そ、それは!」
ほら急に声が小さくなる。
軍事パレードなんてカミシログループからラターニア重工にレプシトールインダストリーまで寄付金を出す実質無料イベントだぞ。
ほぼ見本市だからね!
「適切な予算を考えるのはいいんだけどさ~。タックスイーターなイベントじゃないわけじゃん。むしろ全銀河に兵器と権威を示すチャンスだったよね? 金ケチって失敗して恥さらした原因作ったの誰?」
緊縮がいかんとは言わない。それが必要な局面は存在する。
経済破綻したレプシトールとかね。
不良債権処理に追われてる。
プライマリーバランスがあまりにも崩れると景気まで悪くなる。
役所が必要経費まで細かく削るようになるからね。
これは事実だ。
だから無駄な支出は抑えるべき。
ただし本当に無駄だったらね。
必要なものまで削ったら、例えば余裕を持った人員の配備や作業員の給料まで削ったら……殺すしかないよね?
俺はね、食堂のおばちゃんが捨てる予定の食事を従業員まかないで出した程度のことを取り締ま気はない。
それは社会の方が不健全だ。
その程度でキレ散らかす方がおかしい。
そこに給与課税を見いだすのなら役所がおかしい。
それが原因で食中毒が起きても内々で解決しろ。全力で揉み消せ。
誰も悪くない。
「今回はもっと駄目なのが起っちゃった。しかたない。次は警備倍増な。以上。はい解散」
はい終わり。
アホか!
出口のない禅問答状態のアホ会議を終了させた。
だって予算削った予算担当も今度は会場計画出した経済担当を非難しだす。
すると経済担当は国民の教育が悪いと教育担当を……という罪のなすりつけ合いが発生する。
最終的には文句を言わない警察か軍が責任を取らされるのだが、俺がそれを許すはずもない。
ということで「社会が悪い」で終わり。
みんなちょっとずつミスったということで終わり。
今回は背後関係調べてもテロの可能性すらなかった。
完全な事故だろう。
ただ見逃してはならないのは、市民になんらかの不満がたまってる。
ストレス要因があるのだろう。
戦争中なのはしかたない。
勝つから我慢してとしか。
うーん、なんか弱点になりそうな気がする。
腐敗しまくってるわけじゃない。
完全に清浄な社会ではないが、生きるには楽だ。
警察を代表する公務員が一般人に賄賂を要求するような社会ではない。
そういうのは強く禁止してる。
そんなのやらなくても食えるようにしてる。
カミシログループが力を持ちすぎないように気を付けてるし。
新規参入が無理ゲーってこともない。
がんばれば報われる社会かと問われても正直わからない。
だが希望はある。
そりゃ俳優とかバンドマン、スポーツ選手になるのは難しいけど、普通の職業への求人は多い。
職人やクリエーターが仕事だけしてればいい社会になってる。
新技術を潰そうとする役人もいない。
労働者にあまりにも過度な能力要求はしてないはずだ。
官製ネズミ講は聞いたことすらない。
チップ文化もない。
学歴=人の価値みたいな文化もない。
わからん。
なんもわからん。
負け組になった人にもチャンスはある。
なぜ国民がここまで完全燃焼しようとしてるのかわからん。
ぬるま湯が一番いいんだぞ。
無駄な厳しさはいらん。
ただそこにカスみたいな現実があるだけで充分だ。
現実が一番カスだからな!
ずっと頭を悩ませてる。
なにもわからん。
そこにカレンさんがやって来た。
「またこの間の一人反省会ですか?」
「うん、だってなんもわからんのよ」
「事故では?」
「そうなんだけどさー。アマダ警備ってイベント警備もやってるからマニュアル完備されてるはずなんだよね。それなのに突破されちゃった」
「検証チームの報告を待つのが一番かと」
「それねー」
「それよりみなさん食堂でお待ちですよ」
おっとそうだった。
パーティーパーティー。
仲間だけ呼んだ楽な方。
今回はDJ役はハットリさん。
クソ、とうとう俺より上手な人が出てしまった!
これも音楽の才能のなさゆえよ……。
俺が会場に入ると音楽を静かにして、みんなの子どもたちのお披露目タイム。
うちの子も見せ合う。
「ほら、ご挨拶」
女性型ゾークのミズグチさんがお子さんたちを連れて来た。
女の子二人。
二人とも女性型ゾークで実の親に捨てられたらしい。
こればかりは……人間も動物だから本能的に難しかったのだろう。
かわいい服を着てる。
髪型はセミロングを後ろで束ねてる。
男親だからテキトーなのか、まだおしゃれする年齢じゃないのか……。
俺はしゃがみ込んで二人に目線を合わせる。
「ねえ二人とも、もっと可愛くなりたくない?」
すると二人の目が輝く。
女官さんが髪結いというか宮殿の美容師に連絡した。
わかってんじゃん!
「ま、ママ!」
二人がミゾグチさんを見た。
あらまミズグチさん……ママって呼ばれてるのね。
いい話だわ……。
「お、おう。いいけど……陛下いいんですか?」
「これも福利厚生ってやつさ~。英雄の娘がおしゃれしてなきゃ俺の器が疑われるって」
レプシトール軍やミズグチさんたち女性型ゾークには勲章を授与した。
大ピンチから立て直してくれた英雄である。
俺本当に感謝してるのよ。
女官さんに二人を案内させる。
「ミズグチさんは待ってる間お酒でもどうぞ」
「ウス、ありがとうございます!」
ま、これでだいたい解決よね~。
式典だけは残念だったけど。




