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第七百九十七話

 レオ陛下を暗殺するため我々は派遣された。

 レオ陛下を殺しゾークを絶滅させる。

 我々は女性型ゾークの地下組織。

 ゾークに復讐する者なり。

 私は伯爵家の騎士だった。

 あのとき私は戦場で絶望した。

 父母妻子……が蟹に食われる光景。

 それはどれだけ時が経っても目に焼き付いて離れない。

 そしてあの日、私の騎士としての尊厳も終わりを迎えた。

 ゾークへの復讐を胸に朝起きると女になっていた。

 伯爵閣下は私へ死刑を宣告した。

 不満はなかった。

 これで家族のもとに行ける。

 だがゾークの抵抗は激しく、伯爵閣下も騎士団の仲間たちも死亡。

 私は独房でただそれを見てるしかできなかった。

 その後組織に拾われ今回の任務に志願した。

 皇帝陛下やレオ陛下に恨みはない。

 悪いのは前皇帝と公爵会だ。

 プロパガンダを信じてるわけではない。

 銀河帝国を弱体化させた原因だからだ。

 女性型ゾークとの和平も政治的判断としては理解してる。

 だが私は死に場所を求めていた。

 幸い、組織の手引きで此度の宴の女官として潜入できた。

 レオ陛下と剣を交える。

 どちらが死のうともそれが私の目的だった。

 それにしても……ねぜ鉄骨が運び込まれたのだろうか。


「さあ、皆さん。余興にございます!」


 司会の有名タレントが笑顔で説明しはじめた。


「さ、レオ陛下。どうぞ」


 スポットライトに照らされて若い男が現われた。

 心の底から嫌そうな顔をしてる。

 だがあの男こそ全宇宙最強の剣豪。

 あの剣聖カトリにすら土をつけた化物!

 若者らしくヘラヘラしてるが……見るものが見ればわかる。

 力が抜けている。

 正中線が立っていながら一切の力みがない。

 剣術の道着を着ている。

 腰の位置が上下にぶれない。

 まるで滑るように動いている。

 隙が全くない。


「はーい。クロノス王のレオです。宴会芸『宇宙戦艦の鉄骨斬り』します」


 本当に嫌そうだった。

 木刀を構える。

 あれが剣聖カトリが取り入れた超圧縮木刀か……。

 見た目に反してとてつもない重さだと聞く。

 剣聖カトリとレオ陛下、他数人しか持ち上げられないと言われてるものだ。

 普通なら気合の一つも入れるだろう。

 だが「あ、斬っていいっすか?」と司会にたずね、「お願いします」と言われた瞬間……神速の剣が振り下ろされていた。

 見えない!

 音もしなかった。

 思わず息をのんだ。

 会場も静まりかえっていた。


「危ないんで後ろに下がってください」


 そう言って司会が後ろに下がった瞬間、鉄骨が音を立てて倒れた。

 鉄骨は……強化された床材を突き破った。

 インチキ? 手品?

 愚かなものはそう思っただろう。

 違う。

 常在戦場。

 気合を入れて使う技など実戦で使えるわけがない。

 ただの宴会芸だ。

 だがレオ陛下は違う。偽物ではない。

 鉄骨斬りを会得した後……あの男は常に使えるようにさらに研鑽を積んだのだ。

 まさに化け物。

 俺は息をのんだ。

 正々堂々と挑まねばいけない相手だ。

 それほどまでの高みにいる人間だ。

 卑怯な闇討ちなどしたら……あの世で家族に合わせる顔がない。


「レオ・カミシロ・クロノス! 尋常に勝負を願いたい!」


 俺はスカートに隠してた短剣を抜いた。


「あなたの殺気……気づいてましたよ。いいっすよ。誰かあの御方にもうちょっとまともな剣持たせて」


 軍の高官に剣を渡される。

 一目見て業物だとわかる。


「俺の剣は……こいつだと卑怯か」


 レオ陛下が木刀を手放すとそれは勝手に床に突き刺さった。

 どれだけの重量だというのだろう。

 本当に化物にしか扱えないものなのだ。


「はは!」


 化け物だ。

 いつしか忘れていた歓喜で心が満たされる。

 剣豪との正々堂々の一騎打ち。

 俺の人生最後の花火なのだ。

 レオ陛下に侍従が剣を渡す。

 肉厚の……おいおい。

 人型戦闘機の外部装甲で作った剣だと……。

 俺も騎士だ。

 一目見て異常なものだとわかる。


「安心してくれ。こいつは刃引きだ。まだ完成してなくてね。こいつは、ちょっと重いだけの鉄の板だ」


「はは!」


 俺は構える。


「はぐれ騎士。獅堂三弦(しどうみつる)。お情け感謝いたします!」


「宇宙怪獣カワゴン。皇帝陛下の婿でもなくクロノス王でもない。宇宙怪獣カワゴンな。みんな、これは余興だからな。いいな!」


「はは!」


 歓喜に満ちた心で斬りかかる。

 どれだけ耐えられるだろうか?

 いやもうどうでもいい。

 邪念は捨てよう。

 一瞬を楽しむのみ。

 見えなかった。

 だが一撃をいなして……次を巻き上げッ!

 それは岩のように重かった。

 巻き上げた腕ごと……いや体全体が潰された。

 ベキベキと体から粉砕音がした。

 負けだ。

 何一つかなわない。

 基礎体力が違いすぎる。

 ゾークの恵まれた力でも届かない。

 余りに遠い。

 余りにも遠い段階にレオ陛下は存在した。

 手は届かない。


「ゾークだから死んでないでしょ。悪いけど病院運んで」


「口を割らせるのですね?」


 軍の高官がたずねた。


「まさかー、気に入ったんで部下にします。このレベルの剣豪になると死ぬ気で探しても雇えませんよ。イソノ……いや西条くんレベルかな……女性型ゾークに肉体強化もあるんで……カトリ先生に預ければ鬼神国前大王クラスの剣豪になりますよ。おーい、まだ意識ある? 俺が勝ったんだから部下になれ」


「わ、わかった……べ……別働隊の襲撃……」


「了解ッス。はーいみなさん。メインディッシュですよ~。別働隊がいるそうです。倉庫に放火したアホどもかな? とにかくボコボコにしましょう! 一番多く倒した人には俺から賞品を授与します」


「おっしゃー!」


 何人かが歓喜の声を上げた。

 は、ははははは……。

 反政府組織の切り札がこの扱い。

 かなわぬわけだ。

 私は意識を手放した。

 その後、レオ陛下とお仲間たちは反政府組織女性型ゾーク部隊を蹴散らした。

 映像を見る限り本当に蹴散らされてた。

 一般車両に機関銃をつけた装甲車まで持ち出したが生身で壊された。

 逃げたものは剣を持ったレオ陛下がバイクで追跡。

「待ってたぜぇッ! この瞬間(とき)をよォ!」と言わんばかりにジャリジャリ道路を剣で削りながら追い回したそうである。

 女性型ゾーク精鋭は泣きながら逃げたものの、全員シバかれた。

 全員まとめて部下にされたとのことである。

 なおレオ陛下は隠してたバイクを没収。

 さらに私的に買った惑星カワゴンも銀河帝国皇帝陛下含めた妻たちに取り上げられたそうである。

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― 新着の感想 ―
魍魎の統領一条カワゴンwww気合ブリバリだあ
盗んだバイクを買わされた 鍵がない
盗んだバイクを取り戻す 行く先も分からぬまま 鬱展開の帷の外へ 嫁ちゃんズの追跡躱し 星空を見つめながら イモを求め続けたカワゴンの夜 オーオオー オーオオ オーオオオー
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