第七百九十六話
結婚式三日目。
和風。寺社仏閣式。
まずは神前式。
十二単とか五衣唐衣裳的なアレ。
見た目が和風じゃないのに嫁ちゃんはとても似合ってた。
俺は紋付き袴。
剣術で慣れてるせいか、そこそこ似合う。
ただ武器がないので不安になる。
袴はいて武器持ってない状態がすでに不安である。
少なくともタキシードよりはマシだ。
儀式に関して言えば……わからない。
だって実家の宗教を担ってたの、通信教育の兼業僧侶だもの。
理解できるはずもない。
寺社側もそれを知ってるのかわかりやすいものに変更。
しかたないのよ~。
子どものときから触れ合ってないから脳味噌を素通りしていくのよ~。
座敷童ちゃんは信じてるし、葬式はゲーミング仏教式でやってるけど、中身を理解してるわけじゃないもん。
「こいつ頭悪いんじゃないか?」って思うかもしれない。
だが待って欲しい。
生活にあまり必要ないものの理解度が低いのはしかたないのではないだろうか?
そのくせ奥が深くて、浅い理解にすら本が大量に必要なのだ。
おまけに宗派が大量にあって、それぞれローカルルールがある。
初心者にとことん優しくない。
神学や哲学系すべてそうな!
なお現在祝詞が頭の中を通過中。
しばらく投資で財産失った人みたいな顔してたら、お色直し。
俺は紋付き袴継続。
うちの家紋、六文銭だったんだ。ふへー。
どうせ家紋ジェネレーターで適当につけたんだろうけど。
真田家の末裔ってことだけは絶対にない。
それだけは保証できる。
仏前式のお経も頭を通過する。
何一つわからない。
たまに俺と嫁の名前が出てくるくらいしかわからない。
サンスクリット語かな?
よくわからん。
こちらも破産した人みたいな顔でやり過ごす。
いいのよ野郎はこれで。
嫁ちゃんはニコニコしてる。
機嫌がいいと思う。
とりあえず無になってたら式が終わった。
そしたら貴族による立食パーティー。
立食形式なのは単に人数が多すぎるから。
俺はタキシード……の予定だったが、あまりにも似合わないため軍の礼服に変更。
しゃきーん!
着慣れてる礼服である。
一応、これでも銀河帝国宇宙海兵隊の特将だもんね!
銀河帝国の階級章と勲章をジャラジャラつけて参加。
これだけつけてると逆に恥ずかしい。
ちょっと外そう。
うっわ……ゾーク戦争で功績挙げすぎて外していい勲章がねえぞ。
「人型戦闘機の離着陸ができるようになりました勲章」とかは外したのに……。
上級工兵認定の勲章まで外した。
その代わり増えたのが「最上級将校勲章」とか「最優秀戦士勲章」とか「銀河帝国最優秀パイロット勲章」とかである。
まるで俺が葉巻加えたマッチョダンディーみたいである。
俺よりもスペース・レイダースとかヒューマさんとかピゲットに配れよ。
俺の実態は「お芋掘り検定三級」とか「イチジク栽培検定三級」とか「焼き芋検定ブラックベルト三段」とかである。
あまりにも恥ずかしいので小さくなって会場に出現。
カワゴン、ステルスモードになる……。
「婿殿、そんな顔をするな!」
嫁ちゃんが笑う。
「だってぇ~。外せるのがなくて勲章ジャラジャラ独裁者みたいで恥ずかしいんだもん……」
独裁者が功績盛ってるようにしか見えない。
アホにしか見えない。
せめて三つくらいにしようよ。
いつも半分くらいなのに。
「侍従が外せぬと言うのだからしかたないの~。今宵はいつもとは違う。軍関係者だけじゃないからの。婿殿の恐ろしさを知らぬものが多い」
「公爵会潰したから知ってるんじゃないの?」
「ほとんどは妾がやったと思っておる」
「それでいいじゃん! 偉大な嫁とぼんくら婿でいいじゃん!」
「妾と永遠が困る。永遠は銀河帝国次代皇帝、ゾークを打ち倒し銀河帝国を救い。屍食鬼のせいで戦国時代状態だった外宇宙の国家と同盟を結び平和をもたらした。一代で王に成り上がった偉大なる戦士クロノス王レオの息子ぞ!」
「実態は芋焼き怪獣なのに……」
「永遠は怪獣に育てるなよ……」
「育児ロボットに育てられたのに怪獣になっちゃったのよ……アタイ……」
「……そうなのじゃのう。それが問題じゃ。ほれ見ろ」
嫁ちゃんが顔を向けた方。
そこにいたのは『将』の皆さん。
笑顔でこっちを見てる。
「永遠を軍のトップにすえるつもりじゃろうな」
「最終的にはトップでしょ」
「最終的でいいのじゃ。あやつらは普段からトップにするつもりじゃ」
もうね、汚い笑顔でこっちを見てる。
目が「キュピーン!」って光ってるし、「ゴゴゴゴゴゴ……」ってオーラが見える。
たぶん気のせいだけど。
「嫁ちゃん……がんばって子どもを守ろうね!」
「うむ」
仲間からも守らねばならない。
あー……トップが孤独になる現象はこれか……。
全国に金を循環させながら力を剥ぎ取っていく参勤交代の正しさよ……。
クロノスはちゃんと雑務押しつけて疲弊させようっと。
「嫁ちゃん……軍はもうちょっと生産業務させた方がいいと思うんだ」
汚い笑顔。
雑務を押しつけてくれるわ!
フレンドリーな悪魔を甘く見るなよ!
「そうじゃな」
こっちも悪い笑顔。
さーて立食パーティーを楽しもうっと。
さて宴は三日三晩続く。
今からフルパワーで飲み食いしては体がもたない。
俺はお酒はちょっとだけ。
なめる程度。
大量に飲んでるリコちの姿は見なかったことにする。
最高級の日本酒をリコちの前に出したのが悪い。
俺も止められない。
妊娠に望みを託してるメリッサは酒は飲まない。
レンはお肉様でパワー充填。
クレアは農業惑星の貴族と仕事の話をしてる。
タチアナは僧侶や神職に囲まれてアイドル状態だ。
ワンオーワンは女性化した子弟のいる貴族と近況を話してる。
そうただ切り捨てた貴族ばかりではない。
ワンオーワンのところに逃がして子弟を守ったものも多いのだ。
近況は逐次報告してるが、直接話を聞きたいのだろう。
通話用の端末なんかも用意した。
それをにらんでる貴族もいたが……俺や嫁ちゃんがいるから大人しくしてる。
和平したんだからな。
それに女性化した家族や親族がいる貴族はかなり多い。
特に公爵会系の貴族と婚姻した家な。
どの派閥ももしもの保険で公爵会系の貴族と婚姻した家は多い。
軍閥ですら公爵会と完全に敵対してたわけじゃないのよ。
だもんで、一族にゾーク化したものが出た家は、下には突き上げられて、上には隠すなって言われてる。
もし切り捨てようとしたら……もし俺だったら下剋上チャンスとばかりに皇帝陛下に密告しちゃうもん。
お家の取り潰しまではないだろうけど、当主の変更はされるよね。
戦争は勝利者側の方が高い倫理性を求められるのさー。
こうして一日目の宴は終わり……と思うじゃん。
宇宙港の倉庫が放火されたった……。




