第七百八十七話
アフロのカツラを被ったミイラ男が土下座。
相手は嫁ちゃん、クレア、レンと愛する我が子たちである。
みんな見た目が似た感じになってきた。
レンの子どもたちは成長が早い。
もう多少動けるようだ。
我が子の成長を喜ばしく思う一方、嫁たちは本気で怒ってた。
「たしかに無茶な操縦で意識がもうろうとしてたはわかる……だが……お菓子を喉に詰まらせて死にかけるとはなにごとじゃ! 王としても親としても自覚がなさすぎじゃ!」
「それは……あの。たいへん申し訳なく」
「現在、婿殿の近衛隊にあちこちに隠してるお菓子の処分をさせておる」
「な、なんだってー!」
グミ、キャンディー、各種スナック、ポテチ、トルティーヤチップス……待て!
「トルティーヤチップスだけは許して! あれはおかず! あれは野菜とタコスソースと一緒に食べ……」
「うるさいバカ! 婿殿は反省せよ!」
ええー……ぼくのトルティーヤチップス……。
「レオ……今回だけは私も擁護できないわ……」
クレアにすら見捨てられた。
「旦那様……子どもたちのためにも生きてくださいね……」
レンの言葉が一番刺さった。
心配される方が心が痛い。
「その……たいへん申し訳なく……」
「うむ、気をつけよ」
「トルティーヤチップスだけは……」
「未開封のお菓子はハーの児童養護施設に送る。開封済みで個包装のものは配り他は捨てる」
「ふえーん!」
「レオ、とりあえずこれでも食べなさい」
クレアがお見舞いのフルーツを渡してくれる。
バナナむきむき。
バナナ美味しい。
「それとな婿殿。リストが来たぞ」
「嫁ちゃんの子は『永遠』ね」
「は?」
「たぶんリストにあるよ」
「は? まだリストは渡してないはず……座敷童……いや『世界』の神のお告げか?」
「そういうこと。お願いはしてたんだけどさ、名付け親が神なんてね。いやーびっくり」
「そうか……わかった」
「……嫁ちゃんなら抵抗すると思ったんだけど」
銀河帝国の一番偉い人で設定上は神と同格なんだから。
それに嫁ちゃんは神を信じてないでしょ。
本人無神論者だし。
座敷童ちゃんも高位の存在であることは認めつつも神という概念ではないと思ってるはずだ。
最近はリアル神の降臨が相次いでるからか、少し価値観が揺らいでるみただいだけど。
なお俺は考えても答えがないのがわかってることは考えない主義。
目の前のタスクをこなすので精一杯。
「人知の及ばぬ力を持つ友人が好意で名付けたのじゃ。あえて逆らう道理はない。それに『世界』に頼むことに同意したのは妾じゃ」
「そうだね」
それしか答えようがない。
でも永遠ってなんか雅やかでいいんじゃない。
たぶん嫁ちゃんも「伝統回帰で前皇帝との違いをアピールできるのか……これを機に攻めの姿勢で政治を行うかの……」とか考えてると思う。
「レンの子どもは、長女が天音、次女が環、長男は宙、三女は万葉、四女は帆乃華、五女は結界」
帝王切開で取り出された順番だ。
「それも『世界』様が?」
「そういうこと」
レンは無言で親指を立てた。
するとクレアはほほ笑む。
「アークは改名しないでね」
「あくまで人の身ってことね。わかった」
クレアは普通にこだわってる。
普通の夫婦から生まれた人の子。
ま、両親は男親が雇われ社長型の王様で嫁さんはパーシオンが望む独裁者なんだけど。
それでも俺たちは普通を選んだ。
最近思うんだけど……クロノスって思ったより何倍もしたたかなのでは?
スーパーに例えよう。
銀河帝国はクロノスから見れば巨大スーパーだ。
一方クロノスは潰れかけの地方スーパー。
そこで巨大スーパーの婿養子の俺を雇われ社長にしたわけ。
一見すると巨大スーパーの末端なんだけど、独立性は維持してる。
子どもも自分たちで名付けて次期社長に指名。
俺が利益を上げ続けるうちは社長にしておけばいい。
ダメだったら追い出せばいい。
追い出したらアークちゃんを社長にして資本関係を維持すると。
アークちゃんにはカワゴン流逃走術を教えこもう。
レプシトールニンジャとしての教育もしよう。
とにかく都合悪くなったら逃げられるようにしとかなければ。
だってこの後の展開読めてるもの。
アークちゃんが子どもの頃から友人としてクロノス人有力貴族の子どもをあてがわれるでしょ。
親父が女関係だらしないんだからと将来の嫁候補もあてがわれるでしょ。
それも複数。
人間関係としがらみででガチガチにしばって身動きできなくする。
で、人間関係で縛られて戦略の幅と視野が極端に狭くなり暗愚ルートへ……阻止せねば。
嫁ちゃんやレンも同じだろうけど……銀河帝国はまだ動きが読めるからな。
仲間たちもいるし、うちのババアもいるし。
最悪革命起こされてもゾーク領かビースト種領に逃げればいいし。
なんか不安になってきた……うちの子たち全員……宇宙怪獣仕込みの逃げ足は叩き込もう。
よし方針は決まった。
俺は笑顔になる。
「父ちゃん……食べものに不自由しないようにがんばるからね!」
「それ、王の発言か?」
嫁ちゃんが呆れてる。
うん、王の発言。
戦災復興からの長屋暮らしを経た俺が恐れるもの。
それは食糧不足である。
「うむ……婿殿に苦労させすぎた副作用が出てるような気がしてきた」
「それは違います。息子が意地汚いのは昔からです」
あ、ババアが来やがった!
「昔からイモや果物を作ってはため込む習性が……」
「だって領地のおっちゃんたちが、選別落ちのイモとか剪定した枝くれるんだもん!」
「昔からか……」
嫁ちゃんはあきらめた表情になった。
「レオ……その……畑増やす? 果樹欲しいでしょ?」
「クレアさん。かわいそうな生き物を見るような目やめて。あなたの夫よ!」
「旦那様。果物むきますね」
「レン! そうして目を合わせようとしないの! ねえ!」
するとババアがこのミイラ男を指で突く。
「レオ! お前が食い意地張ってるからです! なんですかお菓子をのどに詰まらせて死にそうになるとか! 報道規制しなかったら恥かいてましたよ!」
「だってー! だってー! 見つかったら没収されると思ったんだもん!」
実際没収されたし。
「そういうところを王としての自覚がないと言ってるのです!」
成人してもなおババアに怒られるのである。つらい。
こうして惑星級屍食鬼の討伐は完了。
我々は今度こそ屍食鬼との戦争に勝ったのである。
『星の神』とゼン神族は正体すらつかめてないけどね。
しばらくは内政でもしますかね。




