第七百八十六話
まず閃光が機体を襲った。
つっても知覚できるスピードの話じゃないけどね。
俺の主観ではいきなり飛ばされた。
手をつないだ四機は回転しながら飛ばされる。
「絶対にスラスターも姿勢制御も使わないでください」
レオニダスくんが叫んだ。
「わかったポチっとな……」
「やんなつってんだろぶっ殺すぞ! てめえそれで何百回も死んでるからな!」
……怒られた。
実際やらなかった。
たぶん何百回も怒られたのだろう。
レオニダスくんの名前をそっと「逆らっちゃダメな人リスト」に書き加える。
「怒られてやんの! ばーかばーか!」
カトリ先生がゲラゲラ笑う。
あとで絶対に復讐してやる。
「がはははははは! レオ王よ! 忠臣は大事にせよ!」
サリアパパはちゃんとアドバイスしてくれた。
こういうとこやぞ!
カトリ先生とサリアパパの違い!
なんて思ってたらだんだん気持ち悪くなってきた。
回転のせいで血が偏ってきたんだと思う。
……死ぬ。
あ……意識が遠く……。
「レオニダスくん……あのさ……」
「気絶しないでください! 死にますよ!」
えっとパーソナルメニューから……ナノマシンによる強制覚醒……。
これたまに死ぬんだよな……。
まあケビンが控えてるし、最悪心臓止まっても大丈夫か。
ナノマシンが電撃を放つ。
といっても知覚できない。
ヤバい部分のヤバい場所に電気を流して稼動時間を確保……。
銀河帝国の誇る新しい人でなし技術である。
「強制覚醒完了!」
なんて格好つけて言ったのに!
覚醒した次の瞬間、機体が揺れた。
アラートが鳴る。
げッ! 手がもげた!
デブリが直撃した!
「レオさん!」
レオニダスくんが俺の機体の肩をつかみ直した。
「惑星級屍食鬼の破片です! 耐えてください!」
「ぴにゃああああああああああああああああッ!」
こんなの避けられないよおおおおおおおおおッ!
知覚不可能なスピードで殺気のないものが飛んでくるんだもん!
殺気による先読みもなんにもできない!
「姿勢制御してたら死んでました!」
「ぴぎゃああああああああああああああああッ!」
待って、俺たぶん死んだの数百回どころじゃないでしょ!?
何度死んだの?
ねえ、何度死んだの?
「言っときますけど全滅回数千回から先は数えてませんからね!」
「ぎゃあああああああああああああッ!」
それからもデブリがかすっていく。
新機体、スクラップ寸前不可避!
死ぬ!
死ぬ!
なおカトリ先生もサリアパパも「がはははははは!」って楽しそう。
あいつらおかしいって!
「もうそろそろです!」
「なにが!?」
「来ます!」
「だからなにがー!」
そしてそれは来た。
ラターニア軍のプラズマミサイルの閃光。
そいつの爆発を喰らう。
たぶん屍食鬼の戦艦へ射ったものの爆発に俺たちが突っ込んだのだ。
あはーん機体が焼け……あん?
「スピードダウンします!」
そういう減速ぅッ!
俺たちはラターニア軍の屍食鬼掃討攻撃の中を突き進んでいく。
「もうスラスター……」
「そんなもん、もう壊れてます! 使ったら機体が爆発します! あんたそれで十回は死んでますからね!」
「にゃああああああああああああああああああん!」
「大丈夫です。エディさんが来ます!」
「どうなってる!」
エディしゃん!
「スラスター故障! 止まれません! ロケットランチャーで射って止めてください! エディさんならできます!」
「レオニダスきゅん……い、いまなんつった?」
「ロケットランチャーぶちかまして止めます!」
「う、ウタ義姉ちゃん止めて」
「最初の爆発で気絶してますよ!」
「ばかあああああああああああああああああああああッ!」
「ぐはははははははー! 楽しいぞ! 人生にこんな楽しいことがまだ残ってようとはな!」
サリアパパは高笑い。
「レオ! これも修行だ! 死線を乗りこえるたびに俺たちは強くなるぞ!」
「ふざけんな!」
そしてエディが死刑判決を下す。
「行くぞ」
「うしょおおおおおおおおおおおおん!」
爆発……そしてさらなる減速。
爆発コント二段落ち……。
「ラターニア艦隊! 撤退してください! 惑星級最後の爆発します」
「え?」
「エディさんは俺たちをけん引しながら撤退してください!」
「わかった!」
うしょーん!
まさかの三段落ち。
爆発が起こった。
薄れ行く意識の中、俺はストレージをまさぐった。
イチゴキャラメル味の飴……そしてグミやお菓子の数々……見つかったら没収される……。
特に駄菓子関連。
俺は最後の力を振り絞り……それらを一気に開けて……口に放り込む。
ハムスターのように……。
「んがごご!」
当然のどに詰まる。
普段なら理性でやめていただろう。
だがそのときの俺はちょっとおかしかったのだ。
薄れ行く意識の中、なぜかケビンたちの声が聞こえた……。
「レオ陛下! 呼吸停止! お菓子が喉に詰まってます!」
「レオ、バカなの!」
ケビンが叫んだ。
レオニダスくんの声も聞こえる。
「こんなの予想できませんよ! なぜこんなので死にかけるんですか!」
「いいから出すよ!」
おげえええええええええええええええええ。
そして俺は意識を完全に手放した。
「なんということだ! 恐るべし屍食鬼の陰謀! 最後の最後に俺を殺しかけるなんて! ゼン神族の恐るべき作戦に俺は戦慄した!」
……と後に始末書に書いたが許されなかったという。
元気になった後、嫁ちゃんや嫁たちに土下座して、おかんもブチ切れ説教。
「なんでこんな食い意地の張った子に育ってしまったのか!」
って泣かれた。
カナシイ……。
なおその前であるが、俺、レオニダスくん、サリアパパ、カトリ先生は包帯ぐるぐる巻きで入院。
ウタ義姉ちゃんも同じ状態で入院した。
各国の国民は屍食鬼討伐に喜び、俺が死にかけたことを心配した。
心配したのだ。
「いつものことじゃん! はは!」
ではなく心配した。
つまり本当に死にかけたようだ。
ガッデム。
俺は動けるようになるとミイラ男状態の頭にアフロのカツラを被った。
イソノの野郎が見舞いに持ってきたものだ。
はい爆発オチ完遂。
ミッションコンプリート。
おっと、子どもたちの名前候補一覧読まなきゃ。
俺がいつ死んでもおかしくないってわかったら、サクッと候補送ってきやがった。




