第七百八十五話
さーて、屍食鬼がどこからやってくるのかがわかった。
とりあえずコイツさえぶち殺せば、屍食鬼の被害は減る。
結界で防御してるんだけど、どうしてもタチアナのマンパワーは限られる。
製造元を潰せれば被害を減らせる。
俺の中に復讐心がないとは言わない。
クロノス王としての責任だ。
マゼラン、オーゼン、パーシオン、あとレプシトールの一部まで加えたクロノス国民は駒ではない。
クロノス軍人を駒として扱うことは為政者としての義務だ。
そこに俺の感情は関係ない。
軍を統括する機械に徹して、感情は完全に排除する。
自分の政治的立場すら無視だ。
そこは嫁ちゃんから学んだ。
そっちの方が被害少ないのだからそうする。
実際は……駒扱いしても駒として動いてくれねえんだけどね!
駒じゃないからね!
根回しの限界も見えてきた。
今回思い知ったわ!
俺はまだ王として全然ダメな~。俺、王様向いてないよ。
それはそれとして、国民の感情は優先する。
屍食鬼を殺せという怨嗟の声。
これは市民が俺に期待する一番重要な公約だ。
できねえじゃすまされない。
この作戦が終わったらパーシオン軍の責任者を軍事裁判にかけねばならないだろう。
パーシオンの連中……たぶんそんなのわかっててやってるぞ。
クソ!
俺はノーガード戦法のやつに弱すぎる!
いままで俺に土つけたやつってノーガード戦法だからね!
つまり今……一番警戒すべきは……屍食鬼のノーガード戦法だ。
「全艦総攻撃!」
ありとあらゆる攻撃が惑星級屍食鬼に浴びせられる。
ゾークマザーを相手にするよりはマシな状況だった。
あのデカブツが全方位攻撃や連続攻撃ができない理由は実にシンプルだ。
デカすぎんのよ。
例のレールガンだって細胞を壊しながらの自爆攻撃だ。
断熱構造のゾークの外壁もなし。
しかもあのレールガン、プラズマ化した隕石を射ちだしてやがんの!
急速に崩壊しながら、急速に再生する。
じゃあそのエネルギーは?
そしてエネルギー使用は別のなにかへの変換でしかない。
例えば熱。
戦艦も惑星級要塞も人型戦闘機も発生する熱は問題だっていうのに。
おそらくあの惑星級屍食鬼は連続攻撃した瞬間に自らの熱で自壊するだろう。
要するにさ、完全に防御仕様のユニットなのよ。あれ。
それを前に出した時点で詰みってわけよ。
今回ばかりは戦略での完全勝利。
これが頭脳プレーっってやつよ。
……味方が言うこと聞かなくて崩壊しかかったけどね。
俺が勝利を確信したときだった。
「『世界』の手先どもよ。『星』の力を思い知れ」
直接頭の中に響いた。
一瞬みんな止まった。
そりゃ止まるわ。
次の瞬間、神籬ちゃんが光った。
俺やタチアナ、そしてレオニダスくんの機体も光った。
「『世界』、みんなを守る」
座敷童ちゃんの声。
「神に逆らいし王よ。貴様はここで始末する」
殺意を全身に受けた。
ああ、次になにが来るのか。
それはもうわかっていた。
「惑星級屍食鬼温度上昇!」
ですよねー!
惑星級屍食鬼が燃える。恒星のように。
「巨大なエネルギー反応!」
避けろって言わないってことは避けられないのね!
はっはー!
中に入る必要があると感じたのはこれか!
とっておきを巨大な爆弾にするつもりか!
ただ幸運なのはすぐに攻撃が来るわけじゃないこと。
そりゃね、一気に高温になるわけじゃない。
チャージが必要だ。
この間にケツまくって逃げればワンチャン……。
「こちらレオニダス、突撃する」
レオニダスくんが突撃を選んだ。
レオニダスくんは死に戻り能力。
脳内でシミュレーションしてるのか、それとも本当にやり直してるのか?
それはわからない。
観測する方法がない。
だが……レオニダスくんが不合理な選択をした。
つまりすでにレオニダスくんは何回か死んでると考えた方がいい。
俺も無言で突撃する。
レオニダスくんに追いつかねば。
「あ、あたしも!」
「タチアナは後方にいろ!」
戦艦の仲間まで犠牲にするわけにはいかない。
かといって分離状態じゃ機動力にやや難がある。
タチアナじゃ俺やレオニダスくんほど自在に動けない。
「近衛も後ろにいろ! 命令だ!」
正直言って足手まといだ。
「でも俺はいいんだろ?」
勝手についてきたおっさんが一人。
カトリ先生えええええええええええええッ!
「カトリ殿が行くのならワシも行かねばな!」
サリアパパああああああああああッ!
いやたしかに操縦技術では最強クラスなんだけどさ!
「こちら順子ミゾグチ少尉! ドローン部隊援護する!」
ミゾグチしゃん!
このオッサン率の高さ。
凄まじい圧である。
はっはっは!
これは勝ったな!
星とか言う自称神へのお知らせ。
かかってこいやボケ!
屍食鬼が見えた。
発光していた。
内部から崩壊しかかっているのだと思う。
屍食鬼の戦艦が攻撃してくる。
だが攻撃前に回避経路がレオニダスくんから送られてくる。
お前……何度死んだんだ!
やめろ、精神がもたないぞ!
「中のコアを破壊すれば……比較的安全に止められます」
つまり自分だけは生き残った回があったわけね。
クソ、止められないけど、これが体に悪いのだけはわかる!
中を突き進む。
小型の屍食鬼。
見たことのない攻撃機が襲いかかってくる。
「かまってる暇ありません!」
「二人とも避けて!」
「了解!」
攻撃を避けてさらに進む。
攻撃機にビームがかすった。
だけどダメージは少ない。
問題ない。
「は、ははははははは! 楽しくなってきやがったぜ! レオニダス! お前もあとで俺と勝負しろ!」
カトリ先生がヒャッハーした。
「絶対嫌です」
ですよねー。
俺も嫌だ。
「我もレオニダスと試合を望む」
「嫌です」
攻撃を避けて避けて避けまくって最奥に到達した。
ふへー。
とんでもない距離を駆け抜けぞ。
「コア発見! 破壊します。ウタ、狙撃頼む!」
コアは……心臓だった。
それが光ってる。
熱で崩壊する寸前……かも?
「突撃!」
俺はそう言って剣を抜く。
レオニダスくんの射線を塞がないように気を付けて移動。
レオニダスくんとウタ義姉ちゃんの射撃がコアに命中。
穴が空いた。
そこ目がけて斬りつける。
俺が斬りつけると今度はカトリ先生。
そして大王が……。
「鬼人国……そして我ら同盟の怒りを思い知れ!」
いいとこ取って行った……。
一刀両断とは行かなかった。
だが心臓がべろんとめくれ光が強さを増す。
「全員こっちで固まれ! いいか、絶対に流れに逆らうな! 絶対にスラスターで姿勢制御もするな! わかったな!」
あ、これ死ぬやつ……。
あわててみんなでレオニダスくんの機体の近くで待機。
お互いの機体で手を握って……衝撃に備え……なんて心を整理する暇などなく、心臓が爆発した。
はい爆発オチ。




