第七百八十三話
ふ、ふへえええええええええええええええええ。
なんとかなった……。
くそデカため息が出てきた。
戦力の投入タイミングが噛み合った。
100%運!
俺がスーパーコマンダーだったわけじゃない。
レプシトール人の勇敢さ、ドローン部隊の投入、それにおっさんたちが大暴れしたのが噛み合ったのだ。
こ、今回だけはダメかと思った……。
だって撤退用通信ビーコンの起動準備してたもん。
さーて、敵の陣形崩したぞい。
これで挟み撃ち……っていうかとうとう惑星級要塞との大怪獣バトルに持ち込めた。
なお俺たちは惑星級要塞の運用実績がない。
いや無理よ。
銀河帝国にデカイ要塞の運用なんて公爵会のアホどもとかしかないもん。
あんなの参考になるわけないじゃん。
クロノスは記録自体がない。
というか、かつては存在したんだろうけど。
なにもかもイナゴテロで失われた。
太極国も同じだ。
金融ヤクザのラターニアはこういうの運用する必要ない。
別のヤクザのレプシトールも同様だ。
マゼラン、オーゼン、パーシオンは文明終了のお知らせレベルで壊滅した。
巨大な要塞の運用どころか伝統文化すら失われた状況だ。
博物館や大学は研究員ごと消滅。
巨大要塞どころではない。
復旧できなかったものはクロノス風のなにかでしかない。
だから現役稼働中のローザリア軍が運用する。
ローザリアしか運用できないよねって話。
「ローザリア軍惑星級要塞準備完了! 主砲展開!」
シャーロットがかけ声をかける。
他の惑星級要塞もすでに準備完了。
惑星級の屍食鬼と対峙する。
俺らは屍食鬼の戦艦を潰す。
惑星級に近づけさせないのがお仕事。
もちろんすでに結界があるから中に入るのは不可能……。
でも絶対はないからね!
リソースの無駄って言われても防衛せねばならない。
惑星級要塞の主砲は簡易版の結界砲。
『出力ぶち上げれば効くだろ』理論である。
タチアナにしかできない最強兵器よりも手数を選んだ。
そして最期に……。
タチアナの『忍辱の聖女』ことラブリーキャット2号。
こいつがキモだ。
新しい機能である。
タチアナから通信が入る。
「レオの兄貴! やるぞ!」
「おう!」
このために開発した戦艦がスタンバイする。
「合体シークエンス開始」
そうなのである。合体。
いやふざけてなんかない。
大出力結界砲ぶっ放すために大真面目に開発したやつだ。
タチアナの撤退用にコアの人型戦闘機を切り離せるようにしたってのが本来の筋。
合体した状態が通常運用形態なのだ。
ただ誰がどう見ても合体してパワーアップにしか見えない。
というか開発者全員が……その……浪漫に取り憑かれた。
弱い王様でスマン。
俺には計画を止める力はなかった……。
タチアナの機体と戦艦が変形し合体していく。
なぜ変形する必要があるのか。
何度も問い詰めたがはぐらかされた。
たしかにテンションはぶち上がる。
「ラブリーキャット完全形態合体完了!」
タチアナが叫ぶ。
いつもとテンションが違う。
お前も好きなのか……変形合体。
「結界砲戦艦準備完了」
もーどにでもなーれー!
俺は戦艦に命じる。
「結界砲準備!」
「シークエンススタート。防御用浮遊砲台。展開!」
浮遊砲台が戦艦を守る。
浮遊砲台で防御して、結界砲で致命的な攻撃をぶちかます。
対屍食鬼用決戦兵器。
それが新型戦艦『吉祥』。
座敷童ちゃんの神社に神籬ちゃんもいる。
量産は絶対できないが化け物クラスの兵器である。
そしてこの戦艦の乗組員の三割が女性型ゾーク。
ドローンで戦艦とタチアナを守るのが任務だ。
「野郎ども! 聖女を守るぞ!」
「もう俺たち野郎じゃねえんですけどね!」
「うるせえ! 心のナニを大事にしやがれ!」
そう言って女性型ゾークの士官が怒鳴る。
俺はそっと言う。
「タチアナを頼んます!」
「おまかせください陛下! 聖女様はちゃんと家に帰しますぜ!」
「そういうフラグはやめろ!」
冗談なのはわかってるんだけどさ。
こういうツッコミまでも様式美ってことだろう。
なお声は甲高い少女のもの。
中身おっさんたちだけど。
「結界砲充填完了。撃てます!」
「……攻撃位置は」
「到着してます。誤差修正済み」
「行け!」
「結界砲発射!」
戦艦でもこのバカでかい出力では体勢が崩れるほどの衝撃がある。
「船体ダメージなし。角度調整します!」
攻撃は……。
結界砲の通過した場所では、屍食鬼の生体戦艦の群れが消滅していた。
……惑星級は?
喰らったはずだ……無事なわけが!
ゾクッとした。
「全軍回避行動! 敵の攻撃が来るぞ!」
たしかに結界砲は惑星級に一撃を与えていた。
だが惑星級の生命力はそれだけでは奪うことができなかった。
巨大な光が見えた。
惑星級の主砲だ。
「惑星級要塞! 結界展開、防御します!」
「やめろ! よけろ!」
シャーロットから連絡が入る。
「大丈夫だ! 我々は惑星級の戦い方に慣れてる! 敵の攻撃をそらす!」
惑星級要塞が盾になった。
ビームをそらしていく。
いやいやいやいや!
そういう方法!
力技じゃねえか!
剣術と同じだ。
一口に防御って言っても。
パリングではじき返す。
力や摩擦で攻撃を止める。
受け流して相手を崩す。
引きつけてカウンター。
ステップワークで力のベクトルを変える。
いろんな方法がある。
そのうちのベクトルの変換を惑星級要塞でやりやがった!
いくらタチアナの結界と言えども、屍食鬼に効果があるもの超高出力の攻撃に霧散し、今度は惑星級のシールドを削る。
だが当たらなかった。
いや正確には外装をかすった。
そのまま操作不能に……違う。
慣性で移動しながら惑星級要塞が回転。
主砲が狙いを定めた。
「主砲! 射」
惑星級の化け物じみた主砲が屍食鬼に襲いかかる。
そりゃ向こうもビームへのシールドはある。
だが結界砲を喰らったあとだ。
防御が間に合うはずもない。
「全力攻撃! 敵の防御壁を打ち破れ!」
めちゃくちゃだ。
戦略もクソもあったもんじゃない。
完全な力技。
だが強い。
他の惑星級も攻撃する。
「敵シールド……ダウンしました!」
「全艦攻撃開始!」
もうノリと勢いで行くしかない。
俺は全艦隊に命じた。
そしてやつらがやって来た。
「ラターニア艦隊、敵惑星上陸作戦成功! 惑星級への攻撃に参加します!」
俺たちはさらに優位に立った。




