第七百八十一話
ゾークの主力はケビン領の女性型ゾークだ。
もともと銀河帝国の兵士が中心でいきなり女性になった被害者たちである。
いきなりおっさんとしての人生を奪われた悲劇の集団である。
まー、目立ってる連中はアイドルになったり人生エンジョイしてるんだけど。
世間的には、わかりやすく悲惨な形で人生を弄ばれたためか非難の声は小さい。
真面目な話をすると、離婚率はとんでもなく高い。
子どもと面会もできないものも多い。
そりゃな……子どもとしては進学就職結婚昇進に影響しかねない。
貴族籍を抜かれたとか、会社クビになったとか……悪い事例は山ほど。
世間はちょっと反省中。
子どもも悲惨だ。
親と縁を切られた子もかなりいる。
そんな彼らは疑似家族を形成している。
子どもを奪われた元おっさんたち、特に生活が安定してる軍人は家を追い出された子ども引き取り育ててる。
それって健全なのって言われても誰も答えを持ってない。
見守るしかない。
そんなゾーク隊を率いるのはワンオーワンである。
ちょっとこいつは複雑だ。
というか、さんざん混乱し、殴り合いの喧嘩が起きるくらいに会議が白熱した結果……整理した。
ケビンはワンオーワンの一族の家老という位置づけだ。
つまりワンオーワンが本家の長。
ケビンはワンオーワン門下。
ただしケビンは医学界の権威や大学、各種学会が連名で身分保障してる。
ケビンだけじゃなくて中継機型のゾークは医師向きである。
彼女たちを医学界が囲い込んだ。
軍医って実際の階級よりもメタクソに偉い。
トップが大佐だけど誰も逆らえない。
だって医学のテクニカルターム、大将閣下でもわかんないもん。
俺も逆らえない。
でも医学のことでしか主張はしない。
一線は引いてる集団だ。
逆に怖いのよ。
こういう権力の使い方知ってる理性的な集団って……。
そんな普段あまり主張をしない彼らが「くれ。俺たちが保護する」と言うのだ。誰も断れない。
なのでケビン先生は超強力なバックを持った特殊な位置にいる。
正直言って、権力的にはワンオーワンより偉い。
ワンオーワンは部族の長って感じだもの。
だから戦闘はワンオーワンが指揮。
ゾークの象徴だ。
実務はケビンという感じである。
あれよ、本社の役員かねてる支社長。
社長でも根回し必要なやつ。
そんなゾークであるが、ドローン部隊から連絡がある。
士官大学校医学部の学生が中心だ。
例えば、ドローン隊の隊長。
順子ミゾグチ少尉がそうだ。
肉体年齢18歳。
本名、牛込剛。
牛込伯爵家の分家出身。
とはいえ牛込を名乗ってもいいギリギリのラインだ。
地方では貴族扱いだが、中央では貴族扱いされない。
郷氏みたいなものかな?
なかなか難しい身分の人だ。
元牛込伯爵軍ドローン部隊隊長。45歳。
子どもを国立士官学校に入れて育てあげた、兵士の中の兵士。漢の中の漢。
それなのに女性化したらすぐに離婚されて家族に絶縁された悲劇の漢。
放り出された先で女性化し捨てられた子ども三人を引き取り育てる。
元妻の悪口など口から漏れたことはない。
悲哀と責任。背中で語る漢の中の漢。
そう漢の中の漢。
尊敬に値する。
「こちら順子ミゾグチ少尉。準備完了しました」
背が低いピンク髪ツインテールの少女が画面に映し出された。
本人はミリタリーカットを望んでるのだが、周囲が許さずあの悲惨な姿になった。
名前も変えるつもりがなかったが牛込家から絶縁されて改名を迫られた。
現在の名前は名前ジェネレーターでテキトーに改名したものらしい。
しかも45歳で医学部入学。
拒否権はない。
女性化したゾークは学力が恐ろしく高い。
情報収集が目的のようだ。
なので中継機部隊を医師にする予定だ。
俺も……「本人たちの意思を……」って断れなかったんだもん……。
何度見ても悲惨すぎて涙が出そうになる……。
この幼女……漢なんだぜ……。
「クロノス王陛下、あんたの態度が一番心にグサグサ刺さるんですよ! 本気でやめてもらっていいですかね!」
「だってぇ……だってぇ……ミズグチさん漢らしいのに。漢の中の漢なのに……声が高い幼女になるなんて……」
「周りが騒ぎすぎなんですよ。自分は目の前のことをするだけです。いいから作戦!」
「はい、今のうちに引っかき回して。屍食鬼の中継機がいたらやっちゃって」
「了解。野郎ども行くぞ!」
「はッ!」
漢らしいのに……応える部下の声も甲高い。
その……幼女の集団に見える……。
胸だけ主張が激しい。
平均年齢36歳。
背景を知らなかったら「少年兵投入したんかワレェ!」って言われそうだ。
諸行無常すぎる。
そんな苦難と試練を与えられた彼らはドローンオペレーター。
ケビンは俺の暗殺要員に選ばれるくらいだから中継機の中でも特別。
そうだとしても彼らのドローン技術は群を抜いてる。
最強と言えるだろう。
スペース・レイダースが主力だとしたら、彼らはそれをサポートする最強部隊。
戦闘はもちろん、救助や医療もこなす俺たちのとっておきだ。
「ま、レオ陛下。この体もそんな悪いことだけじゃありませんぜ。ヒザも股関節も痛くない」
「ぐはははは! 隊長! 俺は老眼治りましたぜ!」
「あ、俺、ヘルニア治ったわ!」
……見た目が巨乳ロリなので脳味噌バグる。
そう、彼らの中身は汚いおっさんなのだ。
俺もいつかはああなるのだろう。
ロリになるって意味じゃなくて!
にっこり。
俺はごまかすようにほほ笑んだ。
「ガキどものために生きて帰って来てね~」
「わーってます、ようやくチビども女の子の生活に慣れてきたんです。ったく、二次性徴前でよかったですわ」
話の内容が切実すぎる。
ケビンみたいに野郎の自認が固まってからの変身って普通だったら耐えられないよな……。
ケビンに優しくしようと思う。
ドローン搭載型輸送戦艦が到着する。
「やるぞてめえら! 俺たちの人生狂った原因を作り出した連中に一泡吹かしてやろうぜ!」
「押忍!」
大量のドローンが投入された。
実はこの戦いは政治的に多いな意味を持つ。
ビースト種、クロレラ改造人間、ゾーク。
彼らが手を取り合って強大な敵と戦う。
嫁ちゃんの治世は安定し、ゾークへの怒りも霧散する。
なにより困るのはゼン神族側だけってのが最高だ。




