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第七百五十五話

 レオニダスくんが目覚めるともの凄い勢いでウタが病室に入る。

 いや会えないから。

 レオニダスくんはガラスで隔離された部屋にいる。

 だって新型爆弾の除去という誰もやったことのない手術だもの。

 ゾーク化まで視野に入れて隔離した。

 レオニダスくんはボケまくった状態でベッドに寝かされてた。

 つるんと剃られた頭には機械が取り付けられてる。

 ナノマシンで塞がれた傷が痛々しい。

 酸素マスクをつけられ、ベッドの横には管が垂れていた。

 尿を取るやつだ。

 あれ取るとき痛いんだよな……。

 あと膀胱炎になりやすくて詰む。

 トイレ行くたびに痛みが走る。

 入院の常連だから知ってる。


「い、いよ……ウタ」


 口が渇くのか滑舌が悪い。


「隊長」


 あー……そうか。

 俺入院したときの嫁ちゃんたちってこういう気分だったのか。

 反省しないと。


「レオニダスくん、しばらく休暇ね。ウタ義姉ちゃんと仲良くね~」


「な、殴らせろ……」


 ヨシ、軽口叩ける。元気だ。


「入院の手続きとか細かいことこっちで全部やっとくから」


「あ……あざす……」


 そう言うと女官さんが礼をして退室。

 手続きしてくれるみたい。

 俺なにもしなくてもいい感じだわ。


「ウタ義姉ちゃん。お金渡しとくね」


 電子マネーを送金。ちゃりんこ。


「ありがとうございます……こんなにいいの?」


「一人で焼き肉食べに行っちゃダメよ。退院したら二人で行きな」


「あざっす!」


 そもそも入院費は銀河帝国軍の軍人共済の保険で無料だ。

 さらにレオニダスくんは民間保険も加入してるので休業中の補償も万全。

 ラターニア保険も加入してるのね……。

 この後ろ向きの細かさ……さすが双子のマイブラザー……。


「うんじゃのー」


 ということで出て行く。

 まー、二人の邪魔するのもよくない。

 本家の長として顔出す義務は果たした。

 わかるね。こういうのが一番重要なんだぞ。

 こういう細かい気配り、ドブ板選挙的な気配りがなにより大事なんだぞ。

 恐怖で縛ってもひたすら管理が面倒になる。

 有能まで処刑するから裸の王様になるわけでな。

『俺たちはファミリー。運命共同体だ』の方がマシなのよ。

 ブラック企業のたわ言じゃなくて本気でやればね。

 こういうのは嫁ちゃんから学んだ。

 嫁ちゃんは地方貴族の家族が病気になったり死去したら必ず手紙を出す。

 戦死や戦災で亡くなった家族のいる貴族家には勲章に直筆の書状を添えて送ってる。

 ちゃんと貴族たちの奉公に心を裂いてる。

 これさ……その……データに出ないんだけど効果凄いのよ。

 反皇帝派が勝手に弱体化するくらいに。

「皇帝陛下がおっしゃるのだからしかたないか~」の効果は恐ろしいのだ。

 俺も真似して一門や銀河帝国の軍閥、クロノス貴族、それに財界の慶弔にはアンテナ張って対応してる。

 カミシログループの管理職にもなにかあったら嫁ちゃんと連名で手紙送ってるし。

 事務量は激増するが、サボって反乱イベントが起きるよりずっと楽である。

 平和なら事務量もあまり増えないわけでな!

 とぼやいてからレンいる産婦人科へ。

 レンと一緒にメリッサがいた。

 レンに向ける視線は暖かい。

 俺に向ける視線は闇属性。

 いや、ないがしろにしてないから!

 ビースト種は妊娠しやすいの!


「レンまだ検査あるの?」


「旦那様……六つ子らしくて」


「六人! それ大丈夫なのぉ!?」


 顔が一気に青ざめた。


「大丈夫です。ビースト種はそういうものですので。自然なものです」


「……よかった」


 あれ……?

 でもそうならミストラル公爵は?


「レンは同い年の兄弟も姉妹もいないよね?」


「その……父は高齢でしたので……」


 なるほど……お父さんの方の問題か。

 帝国貴族は晩婚多すぎてそうなるんだよね……。

 嫁ちゃんの代になってかなり改善されたけど。


「でも大丈夫なん?」


「普通種の人間より小さく産まれますので」


「そうなのぉ!?」


 パパ、なにもわからない!


「妊娠期間も二ヶ月程度。すでにかなり経過してますので皇帝陛下の予定日と重なりますね」


「それ大丈夫なのぉ?」


「問題ございません。我々ビースト種は強いので」


 パパは心配である。


「そういやビースト種と普通の人間の子どもってどうなるの?」


 かなりタブーに近い質問だ。

 でも夫婦だし。しておかねばならない。


「高確率でビースト種に。先祖返りで見た目が人間の子になる場合もありますが……人間よりは強いです。私は人間との混血ですので見た目が人間の確率は多少高いです」


「なるほど……センシティブな話でごめんね」


「大事なことですから」


「ところで名前……」


「ビースト種で六つ子というと『おそ●』『カラ●』『チョロ●』『一●』『十四●』『トド●』が定番かと」


「あかーん!」


 伏せ字にしないといけないくらいダメなやつ!

 俺はメリッサにアイコンタクトする。

 レンにだけは命名させてはならない。

 俺たちは言葉なしでお互いの思いが通じ合った。


「レン……聞いて、この子たちは次世代のビースト種の王や銀河帝国やクロノス貴族になる子だ。命名は銀河帝国皇帝である嫁ちゃんやクロノス政府とも協議しないといけない」


 濁った目で建前を口走る。

 メリッサはひたすらうなずいてる。

 ただし目は真剣だ。

 六つ子の名前の定番は全力で阻止せねばならない。

 父親として名前がいじられるのだけは避けたい。

 キラキラネームでもシワシワネームでもだめだ。

 普通の名前にしたい。


「わかりました。お願いします」


 心臓がバクバクいってた。

 名前が原因で銀河帝国滅亡とかすらあるからね!

 本気になったビースト種に人類勝てないからね!

 彼らはテキトーかつ寛容だから許されてるだけで!

 メリッサも安心したのかため息をついた。


「子ども欲しいなって思ってたけど吹き飛んだ」


「ほんとダメな夫ですまない……」


「いや……隊長はよくやってるよ……」


 メリッサに慰められてしまった。

 なんにせよ、これで銀河帝国の危機はいったん回避した。

 レンの案の名前だったら俺でも国滅ぼそうとするもん。

 いったん廊下に出て嫁ちゃんに連絡した。

 六つ子のこととか名前のこととかを報告。


「でかした婿殿!」


 こうして銀河のとんでもない危機は回避されたのだ。

 パパはお前らを守る!

 俺はキリッとした。

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― 新着の感想 ―
名前と言えば、日本で金髪少女の名前のお約束のアリスって、英語圏では古めかしすぎてしっくりこないとか言う話を十年以上前に見た記憶があります 日本で言う権蔵とか吉之助とかキヌとかタエとか、そう言う世代の定…
子供たち、人間ともビーストとも違う第三のカワゴン種として生まれてくる気がしてならない…
私は所謂“シワシワネーム”ですが、なにか? なにせ、先祖の名前ですし。
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