第七百五十三話
さーて、スペース・レイダースの諸君は説教部屋に案内。
肝臓に中性脂肪にコレステロールの数値がヤバいもの多数。
酒とつまみの生活だったんですね。
でもでもだって?
黙らっしゃい!
あんただってメシ食べまくってる?
俺は酒飲まないもんねー!
ジュースだって常識的な量に控えてるし。
普段お茶か水だもんね!
ジュースはたまに飲む程度だもんね!
という心の温まるやりとりをしながら、地下へ。
霊安室じゃなくて会議室の方へ。
先に検査を終わらせてたレプシトールのニンジャ隊が待機してた。
ちなみにこっちは塩分摂取過多でおっ説教。
インチキジャパン・サイバーパンク文明なのに塩分過多だけは死守する。
そこにシビれないし憧れない。
高血圧になるからやめなさい。
あと銀河帝国公安の隊長もいた。
「お館様、準備できてます」
「はいはーい」
ここから真面目な話。
本当に深刻な話だ。
「じゃ、事前に説明したように極秘ミッションを開始する」
すると全員の顔が引き締まる。
ブリーフィングである。
「はい、妖精さん解説して」
「はいはーい。レオニダスくんの脳内には自爆装置が埋め込まれてます。以前検査したときに除去したものとは違うもので、ゾークテクノロジーを応用したもので銀河帝国でも把握してない技術です。見つからないわけだわ……」
ここにいるのはレオニダスくんの事情を知ってる信用できる連中しかいない。
レオニダスくんの出生にまつわる話は書類として残さないし、任務外で話題として出してもいけない。
手記も残してはならないと厳命してるメンバーだ。
「で、続きですが、犯人は暴走した軍部のタカ派とほぼ確定してます。脳内の爆弾は証拠隠滅のためでしょう。目的はレオくんを暗殺して成り代わるためと推測されてますが……今となってはわかりません。すでに責任者に医師や科学者は死亡。ほとんどはスペース・レイダースの突入作戦で射殺され、責任者は自決。ご安心ください。これは適切に行われたもので裏切者はいません」
同じ派閥だからと言って仲良しってわけじゃない。
同じ派閥の内部でも俺を排除した勢力は一定数いる。
恨みを買ってる原因は多すぎてわからない。
ワンオーワンの処遇にビースト種であるレンとの婚姻。
公爵会の領地の人間を皆殺しにしなかったこと。
カミシログループが利益を独占し世の中を悪くしてるって主張もある。
「ちゃんと事業ごとに分社化して持株会社作ってそれぞれ上場してるんですけど……」って言ってもわからない人にはわからない。
俺の会社じゃなくて、社会みんなのものにしたのに……。
経済難しいヨ……。
また裏切者の心配はない。
いまここにいるのは共犯者と俺に忠誠を捧げてるニンジャの皆さんしかいないわけ。
要するに共犯者と身内ってこと。
生き残りがいないのも、投降しないで銃撃戦になったから武器持ってるやつは全員射殺って話だ。
これはしかたないよね。
ちゃんと事前に警告したのに反撃してくるんだし。
そんな技官だけ生き残らせるとか器用なことできないよ。
だから裏切者も考えなくていい。
「ルナ様。我々は警備だけでよろしいので」
「おそらくは。もう公爵会残党もいませんし。ただカバーストーリーは遵守してください。不安材料であるレオくんには先ほど伝えることで能力の暴走を防ぎました。完璧です」
嫌な予感これね!
俺を事前に計画から排除してたのね!
なにするかわからないから!
うん納得だよ!
「もう一度確認しますが、カバーストーリーは『脳ドックで金属片を発見。緊急手術で取り除いた』になります。館花家と公安には事前に告知してます。メリッサちゃんのお父さんが先ほど知ったという設定でこちらに向かってます」
館花家には事前に知らせてたのね。
さぞかし心配してるだろう。
今度は俺が質問。
「ウタ義姉ちゃんは?」
「お漏らししそうだったのでこれから知らせます」
まるで信用されてない。
つまりそういうことである。
この健康診断自体が茶番。
本命はレオニダスくんの自爆装置の除去である。
「なんだ。ウタ義姉ちゃんの結婚も茶番か。はっはっは!」
残念な生き物なんていなかった。
俺の気のせいだった。
「そっちはガチ」
おっとぉッ!
「手術の成功率は」
公安が真剣な顔で聞く。
こころから心配してるようだ。
公安からしたらウタ義姉ちゃんは身内。
レオニダスくんの問題は他人事ではない。
政治的な観点だと銀河帝国皇室にクロノス王家、さらにカミシロ一門との繋がりになるしね。
「かなり難しいです。基本的に手作業の極小ドローンを使った手術でしか除去できません。ですが幸いこの病院にはドローン操作の達人がいます」
「ケビン!?」
「ええ。ケビンくんが手術を担当します」
「……大丈夫なの?」
「ケビンくんはもう難しい手術もこなしてます。アシスタントの先生方も名医です」
ケビン……いつのまにか凄い高みに登ってたんだな……。
「それで……手術の成功確率は?」
「予定では失敗する可能性はほぼないそうです」
……うーん。よかった。
「末松さんと神社に連絡。病院に座敷童ちゃんの祭壇と神籬ちゃんの鉢植え設置し、神事を行うように言って」
はい神頼み。
でも確実にバフがかかる。
最強構成である。
「クロノス教にはどう言います?」
『神社呼んどいてクロノス教放置かよ。オウ、こらテメエ、コラたこコラァッ!』ってもめるのはわかりきってるので呼ぶ。
ここは政治的配慮である。
気配り大事。
「カバーストーリーの方で神官派遣してもらって。俺の従兄弟だから断らないでしょ。タチアナは?」
「検診受けてます」
「終わったら聖女として待機」
俺とタチアナがいれば万が一事故っても大丈夫だろう。
超能力でヒーリングできるし。
多少記憶が飛ぶかもしれないけど。
うん手術に向かってがんばろう。
なんて思ったら……。
「ぎゃああああああああああああああああああッ!」
色っぽくないウタ義姉ちゃんの悲鳴がここまで響いてきた。
たったいま知らせたのか……。
「姉ちゃん落ち着けって」
メリッサもバカでかい声出してる。
館花家って本当に賑やかなんだろうな……。
「落ち着いてられっか! た、隊長……ぐえ!」
なんか嫌な予感がした。
するとメリッサがこっちの部屋に来た。
「悪い。姉ちゃんが暴れたから締め落とした。だれか呼んでくれる?」
いきなりイレギュラー発生。
「ね、最後に知らせてよかったでしょ」
うん、そうだね!
なんだ、ウタ義姉ちゃん。
レオニダスくんのことちゃんと好きじゃん。




