第七百四十九話
戦闘服はもはや仕組みを聞いてもわからん。
ナノマシンの流動型うんたらかんたら。
データシートについてきたグラフは四次元空間を実数解だけで三次元に起こした……ほう……わからん!
『方程式解くと六次元』のところで挫折した。
あれか、タッグマッチだから1+1が2じゃなくて200になって10倍みたいなやつ。
たぶん虚数と四次元空間が関わってる。
……我、文系ぞ!
もともと弁護士志望ぞ!
ミリわからん!
いや問題解けるんだけど、このグラフとナノマシンがどう関係してるかがわからん!
どうやって実装してるのこれぇッ!
専門じゃないとわからん!
あれだ。
理系でも電機系が戦闘機技術の話題振られても中のことしかわからんやつ!
戦闘機の側も回路設計わからんやろって話。
たまに戦闘機の足回りに回路設計にプログラムを低級言語レベルというか電気レベルで理解してるし数学に落とし込める化け物が士官学校の工兵コースにもいるけどそれは特別ということで……。
こういう理解が追いつかない事象にぶち当たると、俺は人間からはみ出してないと実感する。
少なくとも全知全能ではない。
京子ちゃんや妖精さんの方が神に近い存在だと思う。
でもお前ら理系だって哲学書読んだら著者殴りたくなるだろ!
それと同じだって!
以上、『説明聞いてもわからない。詰んだ』。
着用すると思ったより軽い。
「これ素材は」
京子ちゃんにわかるものを質問。
「ゾーク構造体をさらに強く軽くしたものです。急所部分には新開発の新型外骨格プレートを使ってます」
自分の究極メガキャノンに視線が行く。
「心臓部分です」
「あ、はい」
「リコさんのやつだけ全身外骨格です」
攻撃喰らいながらガトリング撃つから仕方ない。
「ヘルメットは」
「ゾーク外骨格フレームでこの間のバイクレースの衝撃にも耐えられます」
ふへー。
「このシールド部分は?」
ヘルメットの透明のとこね。
「視認できないゾークの技術を応用して光を透過します」
ふへー。
つまり宇宙海兵隊の海兵の防御力がゾークのカニレベルになったと。
ゾーク戦争初期の殻を貼り付けてたころが懐かしい。
「対艦ライフルは?」
さて、聞くのが一番恐い殺戮の夜ちゃんの改造はいったん置いて、例の欠陥兵器の話である。
「アリッサさん用の一つ開発しまして……えっと超能力を増幅する……」
「それ魔法の杖的なやつ!」
「だいたいそれですね」
ギャアアアアアアアアアアアアアッ
とんでもねえの開発しやがったぞ。
「じゃ、俺とレオニダスくんのは?」
「これを」
シミュレーターを出してきたってことはまだできてないのか。
永遠に完成しなくてもいいかな。
俺は汚い笑顔になる。
「おっとぉ……戦艦が複数……貫通しちゃうのおおおおおおおおお!」
それは駆逐艦でも巡洋艦でもなく戦艦を貫通して周囲の船を巻き込んで爆発するものだった。
これ通常の戦争に使ったら同士討ちでみんな死ぬやつ。
いやどう考えても戦艦用の装備でしょ!
「いやー、正直この威力は怖いですよね。惑星級屍食鬼の討伐のためだけに使用したいなと」
「使用しちゃうのおおおおおおおおおッ!」
戦艦でも危険だ。
「現在修復中の古代要塞に取り付ける予定です。そこまでやってもあの屍食鬼を倒すのにギリギリではないかと思われます」
「うそーん!」
「だってあの出力の攻撃を放てるんですよ! 体内に蓄積できるエネルギー量の概算から考えても惑星級要塞クラスの全力でも倒せるかどうか……」
やだー……怖い!
なにが怖いってそこまでのエネルギー量なのに発火してないこと。
「倒したら周囲巻き込んで爆発……」
「急激に温度が上がればそうなりますね」
「……オウ」
怖い!
あれか空気に触れるといきなり燃え出す薬品とかそういうやつ!
「空気ないから許される……かも?」
「その可能性が高いとは思われますが……正直わかりません」
「もうやだー!」
戦闘前に心が折れそう。
で、殺戮の夜ちゃんの改造は「楽しみにしてください」だそうである。
「あ、それ、俺が死にそうになるやつ」
「死なないように検証してます!」
本当にぃ!?
ということで解散。
つまり「時は来た! それだけだ!」で「出る前に負けること考えるバカいるかよ!」の結果「僕は自分の明るい未来が見えません!」ってわけ。
つまり「またぐなよ」。
うーん、数学と物理の融合ってプロレス。
要するに「相手を殺せると思って放つから、その技で人が殺せる」ということである。
実に「噛みつきたいのか、噛みつきたくないのか。吐いた言葉飲み込むなよオマエ」である。
なに言ってるかわからないと思うけど、いまの俺の頭の中はこんな感じでグチャグチャ。
宇宙猫すぎる。にゃー!
一日中宇宙猫になってるとシャーロットがやって来た。
「遊びに来たぞ」
「何して遊ぶ」
「冗談じゃ! ボードゲームしまえ!」
ちッ!
「せっかく遊ぼうと思ったのに!」
レンがやって来てお茶を入れてくれる。
温かいやつ。
「体冷えちゃうから温かいので……」
「女子か!」
「だってサツマイモはシーズンまだじゃん。ジャガイモは仕事で掘れなくて枯れてきたから腐る前に庭師が収穫しちゃったし、だから体動かせなくてつらい! 運動したい! 体温下がる!」
「本当にこれ王か?」
指さすな!
レンがクスクス笑ってる。
「我が最愛の陛下にございます」
「たいへんじゃな……それで要件だが」
「どうしたん? 真剣な顔して」
「なんで私が帰還を急がぬのか予想ついてるだろう?」
「いくつかのシナリオは予想してる。その中に滅亡も入ってる」
「そういうことじゃ。帰ったら国がなくなってる。その可能性も否定できん」
「そのときはうちに亡命する?」
「いいや。帰って国を再建する」
偉い。
俺なら直前まで逃げる方法を模索する。
で、グズグズしてうちに逃げられなくなって最後まで戦うことになる。
最初から国に帰ると決めてる方が偉い。
これが生まれながらの王族だ!
俺にはマネできん。
俺はもっといいかげんな生き物だ。
「ということで援軍は期待できん。正直に話せたぞ……驚かないのか?」
「いや実はさー、予想してたんだわ。嫁ちゃんと一緒に何度も話し合ってさ」
要するにそういうことである。
ローザリア全軍である。
「クロノスに移住したい人はどうぞ」
「すまぬな」
もうクロノス人や銀河帝国人と同棲してるカップルがいることは把握済みだ。
公式にどっちにいてもいいことにすればいい。
たとえそれが工作員でも俺は困らない。
ほら、俺はフリー素材だし。
俺は涼しい顔をする。
「シャーロット様。これが旦那様です」
「ああ……。凄い男だ」
残念ながらそうでもない。
だってポーカーフェイス貫いてるけど、改造した殺戮の夜ちゃんに乗るの怖いもん。




