第七百四十八話
ということでお爺さんの俺は開発部にシバかれに。
嫁ちゃんは産婦人科に行った。
柴刈りとシバかれをかけたかっただけ!
嫁ちゃんの主治医はケビンである。
もちろん医師になって数年目の若造が次代の銀河帝国皇帝の出産ワンオペってのは無理がある。
あくまで助手の一人だ。
メインは御典医と大学のエースクラスの合同チームよ。
そこらの野郎よりも体力があって、軍人という協調性の固まりな上に、軍の最前線で看護師資格持ちの衛生兵やってた有能である。
かわいがられてるようだ。
これは政治的に「妾の一番信用してる医師じゃ! 暗殺などさせぬ!」という強い意思表示である。
いまだに命狙ってる輩がいるんだよね。
俺を殺そうとしたこと、それ自体は事実だからね。
特別扱いなのは認める。
同じ釜の飯を食って一番しんどいときを共に過ごした仲間を特別扱いしてなにが悪い!
ということでケビンは安全。
俺は開発部にちょっと来いと呼び出される。
京子ちゃんに装置につながれる。
少しエッチな絵面だ。
不謹慎な考えはおくびにも出さず真面目な顔をする。
「そもそも陛下の超能力を機体にフィードバックできる装置がないのが問題でした」
「でも俺らの能力って物理現象として測定できないんでしょ?」
レオニダスくんも同じ。
タチアナだってモノマネの方は測定できない。
ジェスターかどうかわからないサム兄なんかも測定できない能力だ。
ローザリアのシャーロットは能力を教えてくれないので除外。
そりゃ普通なら機密か。
「ええ、だからこそ装置を新規開発します」
「どういうこと?」
「戦闘服に検知するシステムを入れ、世界樹と祭壇をつなぎます」
「わかってない技術に手を出すのらめえええええええええッ!」
心の底から勘弁してくれ。
だけど京子ちゃんに俺の叫びは届かなかった。
「これをご覧ください」
スライドを表示。
設計図。
ここまで高度だと一目じゃわからん。
ただコネクターがあるのはわかる。
「古代機の全体設計図を発見しました」
「……無事だったの?」
「幸いデータの欠損もなく完全な形で読めました。問題は銀河帝国のソフトウェアとの互換性がないファイル形式でしたので、そこはルナ様が担当されました」
人型みたいなのがある。
そこにコネクタで有線接続……。
コネクタいくらなんでもぶっとくね?
楽器で使うバナナプラグの倍くらいあるんですけど。
「脊髄コネクタはらめええええええええええええええ!」
現在の接続だって少しピリッとするんだから。
こんなぶっといコネクタ刺したら痛みだけで死ぬだろが!
こういうのは兵士を使い捨てにする技術だからね!
生存期間平均十年未満の全身機械化兵の末路から学習しろ!
頼むから!
「この部分は我らの方が技術的に進んでて無線に置き換え可能です」
「ふへー……」
セーフ!
痛いのセーフ!
埋め込んだチップが優秀でよかった……。
「それにともないチップの交換が必要です」
「ガッデム!」
脳内じゃないからいいけどさ!
手術かよ!
「チップサイズをナノサイズよりも小さくして性能は数百倍に向上しました。手術は摘出手術だけ。それもロボット内視鏡ですぐ終わります」
「有能!」
というわけで手術。
首に埋め込んだチップ。
と言ってもかなり小さなものをロボットで排出。
人間の手すらいらない。
ナノマシンで化膿止めと傷の修復。
銀河帝国というかクロノスとその仲間たち陣営も含めた陣営の技術力は恐ろしいくらい進歩してる。
本気になった妖精さんが技術を出し惜しみしなくなったし、ラターニアやレプシトールの技術も入ってきた。
そこに京子ちゃんたち天才が潤沢な予算で好き放題研究してる。
バイクのモンスターマシン化もそうだけど、数年で数世代進化みたいな状況だもんね。
研究の最前線たる大学からすら「ふえええ……技術についていけないよぉ……」って嘆きが聞かれるようになったし。
いままで技術が停滞してたのって……完全に麻呂や公爵会のせいだよね……。
だってさー、こないだの対艦ライフル!
もう旧世代よ。
一週間で旧世代落ちってなによ!
試作品のまま旧世代落ち。
戦場で使ったからβ版よ!
β版まで行ったのに旧世代落ち!
意味がわからん。
「このサイズの集積回路を服全体まで広げてます。これによってあらゆる事象を予想でき……」
「ごめん、いま意味がわからなかった」
「ご安心ください。私も専門外のところは理解してません」
「ですよねー!」
とにかく神様やジェスターの能力を検出できるシステムが組み込まれてるようだ。
うむ、わからん!
「ここからは完全に専門外ですので……ベルガー先生お願いします」
ベルガーさんが手術室に入ってきた。
「こいつを見てほしい」
図と古代文字のイラストだ。
中心に木が書いてある。
「世界樹……神籬ちゃんの記述?」
「ええ、それとあなた方が座敷童と呼んでる存在について」
「太陽神?」
ピカピカしてる神だ。
天照大神?
でも座敷童ちゃんはそういうキャラじゃないな。
「いえ、そう言ったものよりもっと後の神です。古代人が信仰してた宇宙……いや世界そのものを指す神と思われます」
「それがなんで子どもに?」
「忘れられた存在だからかと。一度神としての死を迎え、新たに生まれ変わった……世界樹とともに。陛下、御身も同じです。いつしか忘れ去られ復活した存在。外つ国から戻ってきた英雄王。まさに神話の世界ですな」
「焼きそば炒める類人猿なのに?」
芋を捧げる神事とか本当にやめろよ!
「それすら神話になるでしょうな。はっはっは!」
勘弁してくれよ。
さて、気のせいか首の圧迫感がなくなったような気がする。
完全に気のせいである。
チップは手術したところは別のところに筋肉注射。
あとはナノマシンがちょうどいい位置に持ってきてくれるようだ。
どんどん簡単になるな。
銀河帝国の市民登録引き継ぎなどが自動で終わる。
クロノスの市民登録もね。
職業、国王っと。
うーん……お腹が鳴る。
「はらへった……」
「さすが国王陛下! 大物でありますな!」
ベルガーさんが栄養バーをくれた。
軍の傷病兵用のやつ。
ドライフルーツ入り。
パイナップル味……。
不味くはないんだけどモシャモシャでパイナップル味……。
ハズレかな?
口の中の水分を持って行かれる。
「水をどうぞ」
「あざっす」
ミネラルウォーターを飲んで一息つく。
ま、なるようにしかならんな。
というわけで、新型戦闘服の試作品が完成したのは二日後だった。
それ、完成したんじゃなくてもうできてたってことだよね?
怒らないから素直に言いなさい!




