第七百四十七話
さーて、ということで、今日はカワゴンデー。
いつの間にか解禁された……というか話を聞かないで作り続けた料理当番の日である。
業務用の蒸し麺とフランクフルトを鉄板で焼きながら、隣で焼き鳥も作り~の。
宮殿の中庭で大学生のサークル飲み会レベルで酒盛り。
酒盛りも高いお酒はおじさんたちのもの。
俺らは甘いサワーで満足。せいぜいビール。
経済界の人たちも呼んで……嘘です。
ハーさんとか昔からの長屋の仲間を呼んでパーリナイ。
ハーさんは少し痩せてきた。
病院の定期検診を受けてるけど血液の数値が下振れしてるみたい。
大丈夫って聞いたら。
「ババアになると何もしなくてもだんだん痩せてくるんだよ!」
って笑われた。
「ガキども面倒見なくちゃならないからね! まだくたばれないよ!」
ガハハと豪快に笑う。
ハーさんもいまや各地のショッピングセンターの惣菜売り場に店を出す社長だ。
稼ぎのほとんどは戦災で親を失った子たちの養護施設につぎ込んでる。
プローンの保護活動や就職支援もしてる。
クロノス教でも聖人扱いで賞状や勲章を出して持ち上げまくってる。
要するにプロパガンダである。
クロノスは戦争で悲惨なことになったけど偉い人がいるよ。
その偉い人が育てた子どもたちは元気だよ。
就職も国家が世話するよ。
クロノスは誰も見捨てないよってやつ。
実際は犯罪者落ちしたら全力で見捨てるんだけどね。
喧嘩して相手を怪我させたとかだったら「軍に入れ。根性叩き直してやる」コース。
強盗なんかは本当に切り捨てる。
クロノスはそういう社会である。
そんなクロノス復興のためにハーさんをプロパガンダに使い倒したの……正直申し訳なく思ってる。
だけどハーさんはニコニコしてる。
「王様は悪魔なんていわれてるけど、本当は優しい人だからね。ほら子どもたちの分の食事も作りな。楽しみにしてるんだからさ」
「ウス」
ガキどもの食事を作る。
その間、ワンオーワンやタチアナが子どもたちの面倒を見てくれる。
嫁ちゃんはクレアを伴って、士官学校組で先にお母さんになった女子と話をしてる。
そこに長屋のお母さんたちも加わって盛り上がってる。
イソノの野郎と中島が暇そうだったので焼き鳥を焼かせた。
西条くんとエディもな!
お前らも調理の側に回れ。
「ちょっと男子ぃ! 修行してるって本当?」
インチキ臭いガールズトークから始まる。
「ああ。お前に負けてられねえからな」
「そういうことです陛下」
大正浪漫和風メイド服の西条くんも同意した。
そこに京子ちゃんと端末内で作業する妖精さんがやって来た。
「修行じゃたどり着けない領域かもですよ」
「あん? どういうこと?」
俺もイソノと同じ感想だ。どういうこと?
みんなで端末を見る。
ちょっと離れた場所でウタ姉ちゃんと一緒にいるレオニダスくんを呼ぶ。
「なんですか陛下」
「この間の敵の攻撃の検証結果みたい」
京子ちゃんが説明してくれる。
「シミュレーションしたけど何百回やっても死にます。そもそも人型戦闘機であの規模の攻撃をそらすことは不可能です」
「ちゃんと斜めに弾いたよ」
「いくら斜めになってもハエがハエ叩きをパリィできると思います?」
なんという圧倒的説得力。
「そういう規模感!?」
「そもそもハエ叩きですらなく、バーナーの炎よりも高出力の攻撃です。人型戦闘機じゃ近づいただけで衝撃で死ぬはずです。でも実際はラターニア艦隊が航行不能なっただけ。ありえないでしょ!」
「つまりどういうこと、京子ちゃん?」
エディも気になったようだ。
「そりゃ、別のエネルギーですね」
「ジェスターの能力?」
「超能力だとしても出力が大きすぎます。アリッサさんでも無理でしょうね」
となるとみんなとの違い。
……試作機か。
「つまり……試作機がなんらかの影響を与えてると」
「もはや科学の領域ではありませんが。おそらく」
わかんないなー。
と思いつつ、いつの間にかいた座敷童ちゃんにチョコを渡す。
子どもが好きそうな輪っかに小さなチョコが小分けに入ってるやつ。
「ありがとー!」
このやりとりを見てみんなため息。
レオニダスくんまでため息をついた。
いやお前は共犯だからな!
「そういうところですね」
「そういうところだな」
なんか俺の知らないところで結論が出たらしい。
するとワンオーワンとガキどもがいた。
「お菓子の気配を感じたであります!」
俺はカウンターからお菓子の詰め合わせを出す。
「ワンオーワン。重要任務だ」
「は、はいであります!」
「ガキどもにお菓子を配れ」
「了解であります! うわーい!」
ふ……勝利だ。
座敷童ちゃんも楽しそうなワンオーワンと子どもたちの方に行ってしまった。
「そういうところだな」
「そういうところだね」
なんか男子どもが納得してる。
ウタ義姉ちゃんがそれを見てゲラゲラ笑ってる。
「レオニダス隊長。隊長も子どものあしらい上手になりなよ!」
バンバン背中叩いてる。
「あしらいっておま……なんで俺が……」
そう言いながら、ワンオーワンの方に行ったはずの座敷童ちゃんに焼きトウモロコシあげてる。
はいトウモロコシ係ゲット。
なになに「なんかくれそうだからこっちに来た」。
なるほど……。
「ガキども! トウモロコシ焼いてくれるぞ! このレオニダスお兄ちゃんがな!」
「ちょ、おれぇ!」
「ぎゃははははははは! レオニダス隊長面白すぎ! あたしも手伝いますって」
レオニダスくんに子どもたちを押しつけて京子ちゃんに直球で質問。
「じゃ、どうするの?」
「新型機開発ですね。理論はわからないけど再現はできます」
実に日系らしいやり方ではある。
「頼みますわ~。ということで、ちょっと男子ぃ~! 新型機操縦しなさいよ~!」
「嘘だろ……」
「お前らエースパイロットだろ! 根性見せろ! 俺もがんばるからよ!」
暑苦しい体育会系理論で乗りきるしかない。
「誰もやり方を知らない新領域だ。そういうの好きだろ。お前ら」
俺はわざと挑発する。
「て、てめええええええええええええええええええッ!」
イソノがブルブル震える。
「わかってんじゃねえか馬鹿野郎!」
みんなそういうの大好きだもんね。
無理ゲーのシミュレーター攻略とか。




