第七百四十六話
軍事作戦参加国での会議である。
さーて、偵察した。
敵の位置はわかった。
問題は現状攻略方法がないことである。
さてそこで持ち上がった意見がある。
いま攻略する必要ありゅ?
本当それな。
あれがメインランドとやらなのかはいったん置いて、巣であることは確定。
それを破壊する時期が問題である。
あの巨大な屍食鬼が防御用ユニットなのはわかってる。
大きすぎて動けないまで想定できる。
つまり閉じ込めてしまうという戦術を採用できる。
具体的には機雷撒きまくって航路を塞ぎ、軍艦やドローンで周囲を哨戒する。
これで時間稼ぎができる。
だって近くに何もないもん。
そりゃさー、ゼン神族の秘密がわかるかもしれない。
あいつら姿見せないもん。
姿見せて堂々と交渉すれば戦争だって秒で終わるのにさ。
そもそもだ。
あいつらが俺らにちょっかいかけるてくる意図は未だにわからない。
俺にビビリ散らかしてるってのは何度か聞いたがゼン神族から直接言われたことはない。
俺としては世論があるから、もう仲良くすることはできない。
だが冷戦状態を維持することは可能だ。
仲悪いからってバチバチやり合うわけじゃない。
停戦状態のままでいること自体は可能なはずだ。
いつかは殺し合う運命だろうけど、先延ばしできる。
みんな仲良くなんてのは幻想だ。
じゃあ現実路線でどうするのか?
連中来れなきゃよくね?
だから閉じ込め作戦で見なかったことにする。
……ってのを一応提案したんだけど周囲は大反対。
「もう戦争を止めることなどできません」
クロノスの元県知事。
惑星領主たちに囲まれて反対された。
太極国の大臣たちも顔を真っ赤にして怒り狂ってる。
当たり前か。
もう屍食鬼もゼン神族も殺すってモードだもんね。
一応言っただけなんだけどみんなキレたわ。
「おやめなさい。レオ様は可能性の話をしてるだけです」
シーユンが止めた。
トップ会談のため呼ばれたワンオーワンが首を傾げる。
その後ろに控える元絶望の執事さんはお肌がトゥルトゥルだ。
不幸で体調よくなってる!
ワンオーワンが口を開く。
「国王陛下は戦略的にあれを攻略する必要はないという話をされてるのでは?」
あらま。凄い成長だわ!
お兄ちゃん感動で涙出てきた!
「それもあるけど、どこまで犠牲を払うかって話。犠牲を払ってでも攻略……する?」
そう聞かれるとシーユンが笑顔になる。
大臣たちはポカンとしてる。
「つまりそういうことだ。マゼランやオーゼン、パーシオン艦隊の敵討ちという主張は痛いほどわかる。私も家族を殺されてるからな。だがゼン神族との戦いであれがどれほどの戦略的価値がある? ということですよね、レオ様」
「そういうこと。諸君らの気持ちは痛いほどわかる。だが明らかに不利な相手と戦って無駄に兵力を散らす必要はない」
「で、ですが! クロノス王陛下! あれが他にないと言い切れましょうか?」
「いやだから、いったん封じ込めて、兵器開発して再戦しないって話。君らそれ我慢できるって聞いてるの」
「え……?」
「そりゃ向こうさんも俺たちへの対策してくるけどさ~、あそこに敵がいて長距離攻撃してくれたんだから、射程もわかるでしょ。だったらそこを避けてローザリアとの航路を作る方をいったん優先するってわけ。待てる?」
「つまり我々は……」
「戦争の用意。兵を募集し、鍛えて、装備を充実させる。そりゃさー、タイミングってのがあるから思い通りには行かないけどさ、我慢できる? 諸君らのやる気はわかってるから」
「も、もちろんでございます!」
「はい準備!」
これで国内と外国の時間は稼げたかな~。
家臣たちを追いだして本音タイム。
すると会議にリモートで参加してたラターニア王が笑い出す。
サリアもゲラゲラ笑う。
「なんの対策してないのに時間は稼いだな」
ラターニア王は上機嫌だ。
「現状倒せないんだから仕方ない。よくそれを納得させましたね」
要するにさ~。
タイミングってのが重要なのよ。
国内世論に押されて不利なタイミングで攻撃。
例えば勝てる武器がない状況で今やらされたりとかね。
それを防ぎたかったのよ。
ホント、ウォーシミュレーションの方がどれだけ楽か……。
諸侯すら言うこと聞いてもらうのに小芝居が必要なのだ。
「嫁ちゃんはどう思う?」
「うむ、婿殿の思った通りにするがよい。幸い各国の景気推移は順調じゃ。民はしばらく待ってくれるだろう」
「シーユンは?」
「しばらく民には娯楽を与え苦痛を忘れさせましょう。あの殺戮を忘れないように死者を弔いながら。戦争前になったら今の生活を守るためにはゼン神族を打ち倒さねばならないと宣伝いたします」
たぶん今日呼ばれた中ではシーユンが一番憎悪が深いだろう。
そのシーユンがわかってくれたのは素直にうれしい。
「ほら、機雷型の結界装置あったじゃない? あればら撒いてプレッシャーかけ続けようと思うんだ」
「予想してた数倍悪質ではないか!」
「向こうに攻め込むのが無理ゲーなだけなんだから、やって来てくれたらロングレンジの兵器で叩きながら逃げればいいし。惑星攻撃されるのだけは困るけど結界を張っておけば占領はされないだろうし」
攻め込んできたら、だらだら攻撃して延々と疲弊させ続けてくれる!
嫌がらせだけで構成されたアホみたいな攻撃繰り返してやる!
俺はそういう泥仕合得意よ。
どう考えても物資と経済はこっちが買ってるんだから!
ここで商売のためなら自分の臓器も売るレプシトールが生きてくるわけよ。
こちらも戦略の幅は制限されてるけど、屍食鬼はもっとじり貧にしていけばいい。
我慢できなくなって攻めてくるか、損切りであの場所を放棄するか。
選ばせる。
最後まで損切りしなきゃ、あそこに重要なものがあるのがわかる。
損切りしても俺たちは困らない。
そもそもブラフで置いてる可能性だってあるわけ。
罠を仕掛けてるなら罠を踏まないだけでも向こうのリソースにダメージを与えられる。
そして暴走しそうな連中はいま抑えた。
あとは読み合いだよね~。
王様業も板についてきたな~。
「ま、嫁ちゃんの出産までは休もうよ」
「そうじゃの」
嫁ちゃんがクスクス笑う。
するとサリアにシーユンにラターニア王がボソボソしゃべってる。
「見ました? あれがフレンドリーな悪魔ですよ」
「敵に回したくないな」
「レオ様ステキです!」
いや当たり前のことをやってるだけであってだね……。




