第七百四十五話
勲章なんか出し惜しみするもんでもない。
原価なんかタダみたいなもんだ。
出しすぎると価値が下がると思われがちだが、等級ごとに分けてレア勲章の価値を上げればいい。
クロノスも銀河帝国も徴兵制があるので等級の低い勲章は誰でも持ってる状態になるだろう。
記念品としてはいいんじゃないかな?
リサイクルショップ行きになるとしてもね。
ここで重要なのは誰でも取得可能にすること。
平等感はとても大事。
銀河帝国やクロノス王国は誰も見捨てないという認識が重要。
こういう報酬外の記念とか思い出は統計には出ないんだけど重要なんだよね。
金だけ出せばいいってもんじゃないわけよ。
個人の誇りってのは本当に大事なのである。
マゼラン、オーゼン、パーシオンの扱いでの反省点はそこだ。
俺は彼らを平等に扱ってたつもりだったが、想像以上に国民からブルボッコにされてたようである。
いや国民からフルボッコは知ってたんだけど、想定よりも遙かに当たりが強かったわけである。
でもクロノス軍よりも優遇したら「直参よりも外様を優遇するんかこのゴミカス!」って言われると思う。
もう「軍人さんは偉い!」って教育するしかないかな。
でもそれをやりすぎると調子に乗った軍がスナック感覚でクーデター起こしてくるわけで……。
ふひー! 組織マネジメント難しすぎるよおおおおおおおおおッ!
これは軍のお偉いさんにはまかせられない。
教育と広報だから内務省と文部省か……。
軍と仲悪いんだよなあ……。
「なんで軍にばかり予算を割くんですか!」
って文官にブチ切れられること多数。
「戦争中だし、職員数多いし、内部で生産活動もやってるし、そもそも経済上大量生産と大量消費を繰り返す機関でそもそもコストは無視できるからです! 肥大化さえしなければとても優秀な経済安定装置です!」
って何度も言ってるのに理解してくれない……。
なんでぇ……。
君らの場合、無駄遣いばかりでしょ!
変なコンサルに金ばら撒くし!
そもそもセンスないんだから手を出そうとするのやめようよ。
維持コスト度外視の意味のない木造建築とか。
そういう本当の無駄垂れ流すでしょ!
俺は老朽化した施設で苦労させたりしてないでしょ!
ちゃんと道路も直してるし。
イナゴテロの被害受けてない地域の区画整理事業に慎重なだけで。
銀河帝国でも成功したためしねえだろと!
いいかげん、利権と必要な事業の違いを学習しようね。
本気で!
ということで平等に戦死者の追悼行事をする。
死者には弔意金に軍人保険の支給に。
家族には公務員の寡婦年金を支給。
船乗りだし、危険等級の高い職務だから加算されまくりっと。
定期的に様子を見に来るソーシャルワーカーも派遣。
再婚から就職まで手厚くサポート。
海軍だから子どもの士官学校入学から軍への就職までもね!
ここをケチるとあとで治安問題で莫大な費用がかかるのは歴史が証明してる。
軍に見切りつけた連中が民兵化したら終わりである。
要するにサポートなんて実質タダなの!
監視? 監視だとしてもなにが悪い!
「なんで理解してくれないのおおおおおおおおお!」
なんて頭を悩ませてたら執務室に遊びに来てた嫁ちゃんがゲラゲラ笑う。
「婿殿も王が板についてきたの!」
ゲラ笑いしまくって足をバタバタさせてる。
「君主など孤独なものじゃ! 我ら夫婦はお互いを理解できる立場でよかったの!」
「ふええええええん! 俺は嫁ちゃんのヒモでよかったのにいいいいいい!」
「カーッカッカッカ! あきらめよ!」
「ふええええええええ……」
なんて夫婦の会話をしながら本題。
「ねえ、嫁ちゃん。メリッサにエディたち男子がカトリ先生のとこに行ってるって話どう思う?」
レイブンくんまで「修行し直します」とか言ってるし。
ピゲットは不機嫌になってめっちゃハードなトレーニングしてるし!
ピゲットは現場いなかったでしょが!
「お、なんじゃ。妾に別の女の話を聞くか?」
「宇宙一のいい女ならなにか知ってるかと思って」
「そう言われてしまっては答えねばならぬな……あの攻撃に婿殿とレオニダスだけが動けた。それで全滅は免れたということにプライドをズタズタにされたのじゃ。妾やクレアはそういうものだと考えておるがの」
「でもリコちまでも修行っておかしいよ……」
そもそもが素早く動くユニットじゃないじゃん。
「まったく反応できなかったのが問題なのじゃ。メリッサにエディに西条は己の腕に誇りを持ってるからの」
つまりだ。
アイデンティティーの危機なのだ。
自分を強者と思ってた足元が崩れてしまったのだ。
いや、あれはしかたないと思うんだよね。
レオニダスくんと座敷童ちゃん&神籬ちゃんがいたから俺も反応できただけで。
「あそこで反応できてたのはレオニダスくんだけだって! あんなの無理だよ!」
「カトリの見解も同じじゃ。すでに剣術の範疇ではない」
「ですよねー」
「だから限界を超える気じゃ」
「はい?」
「もはや師弟ではない。レールガンに反応できなかった同輩として武者修行をするようじゃぞ」
「なんでぇ……」
「それだけじゃない。レールガンをどう防ぐか。これは技術開発部も緊急議題にあげたぞ。さらには武門のものたちも家の誇りにかけてと声をあげてる」
「なんでそうなるのぉー!」
百歩ゆずって技術開発部はわかる。
そういう装置があればいい。
でも武門はおかしいだろ!
人間の反射神経をオーバーしてるんだから!
い、いやメリッサはわかる。
西条くんやエディもわかる。
……カトリ先生は……まあわかる。
「他の男子はおかしいだろが!」
「腕っ節一本で成り上がった連中ぞ!」
「イソノの野郎は外交官としても優秀じゃん!」
「それでも武人としての誇りがズタズタにされたのじゃ! 婿殿は自分のメンタルが強すぎるのを自覚せよ!」
えー……。
勝敗は兵家の常じゃん。
孫子さんは負けるときは必ず理由あるから詰めろって言ってるけどさー。
今回は退却したけど負けたわけじゃねえし。
戦略目標は満たしてるっての。
現状攻略する方法がないってのがわかっただけでも優秀なのよ。
銀河帝国の秘技コロニー落としも速度もレンジも敵側の方にアドバンテージあるからできないってだけで。
むしろ向こうもビビリ散らかしてると思うけどな。
二人も必殺の皆殺し兵器に対応できたわけでさ。
みんな真面目すぎると思うのよ。
なんてこと言ってたら急にハラ減ってきた。
「なんか作ってくるわ」
「おー、甘いもの欲しいぞ」
「了解」
カワゴンは芋でも焼いてゆっくりしようと思う。




