第七百四十三話
発進すると通信が入った。
あらま末松さん。珍しいな。
「国王陛下。盆栽はいかがでしょうか?」
そうそう。この盆栽。
末松さんがくれたんだよね。
いやー、今回は神籬ちゃんの代打ということで。
はっはっは!
ところでなんの木?
「いやー、神様のお告げで神籬様の剪定枝を盆栽にいたしました」
「え……? 神籬ちゃん?」
「はい、陛下と御一緒したいと神託が下りまして。はっはっは!」
お、おう。
でも妖精さんの変な薬よりは安全なはずだ。
あれ正式に使用禁止になったし。
ね、座敷童ちゃん。
ストレージのモニター出してパンパン拍手して拝む。
なんかよく正しい礼とか言われるけど、神様は愚かな人間にそこまで期待してないと思うのよ。
神職ならまだしもさ。
ちゃんと畏敬の念を持ってる人がマナーちょっと間違えたくらいで、インネンつけて天罰まき散らすのなんてチンピラなわけでさ。
階級章が曲がってたり、礼の角度が間違ってて激怒するのは士官学校の教官くらいでいいわけ。
士官学校は仕方ない。そういう場所だ。
学生でも給料もらってる軍人だからな。
ま、なんでもいいや。
神籬ちゃんはわざわざ俺に天罰なんて与えないだろ。
大きな流れに翻弄……そう……岸壁のフナムシみたいにビッグウェーブに持って行かれるだけで。
あたいカワゴン、運命に逆らわない類人猿。
芋のことだけ考えてればいい。
ということで本当に出撃。
人型じゃない方の戦闘機も多数出撃してる。
艦隊の方は多国籍軍。
銀河帝国は後方。
クロノスと太極国の艦隊が殺意高めで配置されてる。
謎の宙域には巨大なものが……センサーには映らない。
「照明使用せよ!」
敵に見つかるの覚悟で照明弾を発射させた。
そこにいたのは……。
巨大な人間の顔面にムカデみたいなのがついた化け物だった。
なお惑星サイズ。
「……はい撤収」
撤収である。
あれは艦隊戦サイズ!
人型戦闘機でゾークマザーと戦ったのはあくまでイレギュラー。
銀河帝国の存亡がかかってからやっただけ。
今回はやるメリットなし。
俺たちの任務は多国籍艦隊の護衛かな。
「はーい、みなさん。帰るまでが軍事行動ですよ~。怪我しないように」
みんなに呼びかけ。
「気が抜けるセリフを吐くな!」
エディに怒られた。
肩の力も抜けてだらーんとする。
最初は様子見。
敵の反応もなし。
敵にサイズからするとハエが飛んでるくらいの感じだろうか。
艦隊が陣形整えて攻撃かな?
さーてどこまで行けるか。
ローザリアの惑星級よりもデカい相手だもんな。
あ、そうか。
だから防衛に惑星級の要塞が複数必要だったのか……。
うん、待てよ。
それだと辻褄が合わない。
いままで俺たちは惑星級移動要塞が万里の長城だと思ってた。
だけど実は俺たちが騎馬民族の方なんじゃ……。
「待て! 攻撃中止!」
俺は叫んだ。
「どうしたレオ!」
「あいつが防衛装置だ! 惑星級の移動要塞が必要だ! いいから逃げろ! 今回は偵察できりゃ目標の七割は達成してるんだから!」
ビビりまくる俺。
それを感じ取った仲間たちは撤退を決める。
だけど俺を信じてない連中がいた。
パーシオンくんでしょ、マゼランの一部でしょ、オーゼンちゃんでしょ。
なおレプシトールはとてつもなく賢い。
俺の様子がおかしいのを誰よりも先に察知して、真っ先に逃亡開始してた。
ホント、レプシトールくん優秀だよね!
俺の中で評価がうなぎ登りだよ!
吸収合併された三国は命令違反で突撃開始。
屍食鬼が原因で国を滅ぼされた身の上だ。
殺意が高いのは仕方ないけど……。
お願いだから上官の言うこと聞いて!
もう置き去りにするしかない。
パーシオンくんがミサイルを発射した。
マゼランくんは最近大人しいから油断してた。
オーゼンもそれに続く。
クロノスの最新艦で突撃。
主砲を発射する。
「お前らやめろ!」
俺は叫ぶ。
他の高級士官も何度も中止を指示する。
だが帰ってきたのは怒りの声だった。
マゼランの艦隊司令だ。
「うるさいクロノス王! 貴様のような輩にはわからん! 無駄に死んでいった部下の親や子、兄弟姉妹が……民が言うのだ『復讐せよ!』と」
あー、もう!
ずっと計画してやがったな!
復讐目的の自殺をずっと計画してやがったな!
「てめえふざけんな! 自殺に部下を巻き込むんじゃねえ!」
「艦隊の総意だ! 反対するものはすでに降ろした!」
「生きてれば復讐の機会は与える!」
すると今度は悲しそうな声が返ってきた。
「クロノス王。貴様は故郷を守れなかった軍人の惨めさを理解してない……もう……我々は生きるのに疲れたのだ」
「ふざけんな!」
俺が理解してねえわけがない。
士官学校出身の連中だってそうだ。
故郷でたくさん人が死んだものは多い。
俺が見えてる範囲が華やかなだけだ。
俺たちの覇道の裏では死体の山が積み重なってる。
そんなのわかってる!
「我々の死に様を記録しろ。次の戦いに生かせ」
「だから無駄死にはよせ!」
「貴様は敵の強大さを理解してる。だが民はどうだ? おそらくクロノス王がいれば簡単に勝てると思ってるだろう。それを否定せねばならない!」
それはおそらく手段以外は正しい。
……だが俺の能力と相性が悪いのだ。
そして俺の能力は……おそらく死を望むものには効果がない。
そして司令は命令した。
「偉大なる指導者クロノス王に敬礼!」
「おま、馬鹿野郎!」
艦隊が突っ込んでいく。
そしてその攻撃がやってきた。
屍食鬼の胸からなにかが放出された。
それはここでかつて起こった戦いの残骸。
それをとてつもない速度で発射した。
それは巨大なレールガンだった。
だがこんなドデカいものでやるか! 普通!
本当に一瞬だった。
離反した艦隊が蒸発した。
それが俺たちの方まで飛んでくる。
次の瞬間、俺ともう一機が光った。
神籬ちゃんの盆栽も光る。
「陛下! シールドをフルパワーにしてください!」
いつの間にかレオニダスくんがすぐ近くに控えてた。
彼の超能力は死に戻りRTA。
つまりもう何度も死んだはずだ。
たぶん全滅級の被害!
本格的にヤバい!
俺も気合を入れシールドに全エネルギーを注ぎ込む。
だけどこんな化け物級の攻撃なんて受けきれるはずがない。
三角形に避けながら逸らすのが精一杯だ。
角度は勘!
「うおおおおおおおおおおおおおッ!」
レオニダスくんも俺と逆側で攻撃を逸らしていた。
それは永遠にも感じる一瞬だった。
機体がゴリゴリいってる。
結果としては攻撃は逸れた。
そのせいで盾ごと腕なくなったけどね!
レオニダスくんの機体も半壊。
だがそこまでしても被害なしってわけにはいかない。
攻撃はラターニアの艦隊をえぐった。
「ラターニア艦隊の一部が大破! 救護します!」
「急げ! 無事なものは全速力で逃げろ!」
艦隊は一目散に逃げていく。
俺らはアンカー巻き付けてそのまま移送。
こうして最低限の作戦目標は達成したものの、結果はフルボッコという結果を残した。
いや最初から無理だ。サイズが違いすぎる!
それに関係各所すべてが作戦の意味をはき違えてた!
武器が必要だ。
あれを一撃で倒せる武器だ。
それがわかっただけでも戦果は大きい。
……あと殺戮の夜ちゃんもお願いします。
代替機じゃ無理だ。




