第七百三十九話
俺たちがベビーラッシュで盛り上がってたころ。
銀河帝国、外宇宙の各国家ともに犠牲者数の統計結果が出た。
肌感的にはどの人も家族や親戚に犠牲者がいる感じだろうか。
バトルドーム、鬼神国、ラターニア、クロノス、太極国の市民の恨みの深さは表現できないほどである。
海賊ギルドですら屍食鬼との取引を断っていいか聞いてくるレベルだ。
俺は屍食鬼と海賊ギルドの商取引は切らないように命じてある。
交渉不可能に見えて、実は交渉可能だったって例も世の中にはたくさんある。
俺は機体に爆弾仕込むような手も使わない。
だって廃棄されるパーツで作った機体だ、
どうやったって俺たち正規兵に勝てるはずがない。
つまり海賊ギルドから機体を買ってるかぎり、やつらは自分たちで機体を開発できない。
つまり弱いまま。
相手の武器がわかってるというだけでも商取引を継続する意味はある。
商売は信用が大事。
信用だけは毀損しない。
そうやってラインを維持する。
ただ海賊ギルドの連中へは検疫だけはしっかりやらせてる。
納得できないかもしれないけど、それが犠牲者を減らすのさ~。
でも国民はぶち切れてる。
「俺たちを殺すための武器を売ってるのか!」なんて言われてる。
俺を直接非難する記事だって数多ある。
実際批判は間違ってない。
俺も「自分たちを殺す武器を売って逆に牙を折ってる。理解しろよ」なんて言わない。
国民に機密情報を開示してまで完全に理解してもらおうとするほど傲慢ではない。
高潔で潔癖な人には耐えられない世界だろう。
相手が粗悪品を使ってるかぎり、可能な作戦の幅は狭まり、我々の勝率は上がっていく。
屍食鬼はこのからくりを理解できない。
屍食鬼に寄生された遺体には多少の知能は残ってるが、俺たちを殺す武器を俺たちから買ってる事への危機感はない。
愚かなまま安全に封殺させていただこうと思う。
汚いけど、これが世界の真理の一つってやつ。
でだ、レプシトールくんは命の価値が恐ろしく安いだけで賢さは化け物級。
この辺のやりとりを敏感に感じ取って商売に勤しんでる。
そう、レプシトールの各企業は廃棄予定機種を海賊ギルドに卸してやがるのだ。
パーシオンからも廃棄予定の武器を確保。
それを提携する海賊ギルドと組んで使えるのか使えないのかくらいの兵器にして販売と……あいつら本当に汚いことやらせたら神がかり的だな……。
というわけで武器渡してるけど屍食鬼による被害は減少してる。
軍の被害も少なくなってる。
国民にはわかってくれとは言わない。
だがこれも国防である。
なおラターニアや太極国には計画は説明してる。
やたら怖がられてるけどなぜだろうか?
そんな中、海賊ギルドから連絡が入る。
「屍食鬼に動きがありましたぜ」
知っててわざと残してた、屍食鬼が完全制圧した惑星に動きがあったようだ。
泳がせて様子を見ていたのだ。
他の惑星からほど遠く、一番近い惑星はすでに結界設置済み。
危なくなったらいつでも殺せるようにして数カ国で監視してた。
共存する気ならその惑星を与えてもいいくらいのつもりだ。
寄生する体が欲しければ凶悪犯罪で有罪になった死刑囚を提供してもいい。
絶滅させればいいってもんじゃないのさ。
という統治者としての汚い部分をこれでもかと自主的にやってた最中に動きがあったわけである。
結界砲を準備しながら注視。
つうかさ、嫁ちゃんの出産が迫る中で来るのなんなの!
ぶち殺すぞ!
私情ではぶち殺すぞと思いながらも、理性では冷静に事態を見守る。
ゼン神族の尻尾をつかめるかもしれない。
俺は殺戮の夜の格納庫に行く。
殺戮の夜は分解されて無残な姿になっていた。
スクラップにするんじゃない。
二十八号機の成功によって、新型機開発の目処が立った。
まずは俺の専用機を新型機に置き換えるのだ。
神籬ちゃんのコアシステムに座敷童ちゃんの神棚も完備……。
オカルトなんだけど……計測できる違いが出た。
結局、何が足りなかったのか。
新エネルギーコアを神籬ちゃんの生命維持システムにリンクさせる。
これだけで性能が倍増……なぜに?
まあいいや……この辺になってくると聞いてもわからん。
もっと低レベルの技術の話は理解できるんだけどね。
さすがに最新は専門教育受けてないから論文読んでも「わからないところがわからない」で終了。
これが全部理解できたらパイロットやってないわけでな……。
とにかくパワーアップの途中である。
作業員が組み立ててる。
もう少ししたら完成すると思う。
殺戮の夜を視察したらベルガーさんにも会いに行く。
「ちーっす、ベルガーさん」
「陛下。屍食鬼の行動の予測です」
ベルガーさんには遺跡から発見された過去の文献から行動予測をしてもらった。
どうしてゼン神族は屍食鬼やプローンを使って人を支配しようとしたのか?
それがわからないのだ。
人類にここまで敵対的な理由もわからない。
そしてたかがジェスターにキレ散らかして大量殺戮に手を染めたのもわからない。
「頭数制限でしょうな」
「つまり俺たちはゼン神族の家畜だったと?」
「家畜と言うよりは危険な野生動物でしょうか」
「俺たちから見た屍食鬼のような?」
「そうとも言えます」
「気に入りませんね。話し合えばいいのに」
「下等生物と話会うつもりもない……とも解釈できます」
「なんにせよ戦闘は避けられませんね」
予想では屍食鬼はローザリアの渡ってきた航路を目指してる。
俺たちはそこになにかがあると思ってる。
そしてそこで待ち構えてるのが我がクロノスの惑星級移動要塞。
だいぶ解析が進んできて古代兵器の恐ろしさがわかってきた。
オーバーキルレベルの主砲もそうだが……、一番恐ろしいのは擬態能力だ。
惑星に擬態して潜伏。隠蔽装置も多数。
現在の通信技術やレーダーまで遮断でき、巨大な要塞をがそこにあることを感知できないのだ。
弱点としては質量が大きすぎるため停止しないと、移動するだけで友軍を巻き込むことだろう。
しかも爆薬を格納する区画があるところを考えると、最終手段として自爆まで考えられたと思われる。
そこで俺は思うのだ。
「古代人の当時の状況ってどうなってたの?」って。




