第七百三十七話
その日、イソノ家はその長い歴史の中でかつてないほどフィーバー状態だった。
予定日数日前に産気づいたハナコさんが病院に運ばれた。
イソノ家の誇る英雄の子が誕生する。
しかもその血統は銀河帝国皇室に売約済み。
子か孫の代で皇帝を生み出すのが確定してる。
イソノ家飛躍確定演出!
嫁ちゃんの計画であって、本人たちが嫌がったら無理だと思うけど……。
そこはイソノの野郎やハナコさんとは打ち合わせ済み。
本人自身の幸せを優先しようと思う。
とにかく出産である。
ゾークテクノロジーでさらに安全性が高まった帝王切開でサクサク出産。
ナノマシンで術後の痛みもほぼ無痛。
その間、親戚連中の男衆は大酒盛り大会。
その嫁さんたちは静かにブチ切れてた。
とにかくイソノの姉ちゃんから笑顔で報告を受けた。
どうしてズゴゴゴゴゴゴゴゴ……音がしてるんだろうか?
ぽくそっちは知らない。関わりたくない。
で、その緊張感の中でなぜかアマダの野郎が「うちの子かわいんだよ~」ってどうでもいい通話してきた。
殴らないとという使命感がわき上がった。
でもアマダとこの子は本当にかわいいので許すことにした。
おじちゃまでちゅよ~。
手をフリフリ。
さて、数時間後。
子どもが生まれたと知らされ、一安心。
あとはイソノから直接報告あるだろうから俺たちも宴会。
「うまれたどー!」
焼きそばヤキヤキ。
「イソノくんおめでとー!」
みんなで乾杯。
栄養価を無視した揚げ物だらけのメシを作る。
フライドポテトに唐揚げに焼きそばに炒飯!
そういや業務用の冷凍マーボー豆腐があったな。
それもドバー。
適当に取っておくれやす。
なんか町中華のバイキングみたいになってきたな。
気にしたら負けだろう。
きなこちゃんとモモちゃんもおやつもらってる。
そんなわけでヒャッハー!
「うちもどんどん子どもが増えるのう」
「だよね~」
嫁ちゃんとクレアも楽しそうにしてる。
メリッサも楽しそうだ。
いやーよかったよかった。
あとは座敷童ちゃんと神籬ちゃんの真意を知る必要があるくらいかな。
俺らの損になるようなことはしないと思うけどね。
さて、なぜかイソノ家酒盛り会場が映し出される。
男衆が正座させられて嫁さんたちに怒られてる。
これ……見ちゃいけないやつ?
「面白かったんで中継しました」
キラン★っと妖精さん登場。
俺たちはまだ壊れるほどハメを外してない。
だから許されたと思う。
だけどイソノ家のおっさんどもは壊れるほど泥酔してたようだ。
そこでイソノの姉ちゃんたちがブチ切れ。
正座させられて怒られてた。
俺ら男子も声のトーンが小さくなる。
「なあレオ……俺らもああなるのかな?」
「エディ……お前は大丈夫だろ」
「いやそうなんだけど」
なんてボソボソ喋ってたらミネルバちゃんが笑顔で後ろに立ってた。
「私、自分では寛容なつもりだけど」
即座にジャンピング土下座。
俺もつられてジャンピング土下座。
皇帝派に土下座をためらうやつなどいない。
あ、もうイソノ家の野郎どもと同じになってたわ。
すでに手遅れだったわ。
「もー、土下座なんかしなくていいから! レオくんも!」
「だ、だがミネルバ」
「別に怒ってないから。もう心配しないでエディ。ちゃんと夫婦で話し合って生きてこうね」
ああ……美しき哉……。
シバかれてるイソノ家の男性どもに見せてあげたい!
「うちだって厳しくないけどな~」
クレア様に言われた。
「うむ、乗用車禁止してるだけだしの」
嫁ちゃんまで参戦。
たしかにやりたい放題してるけど文句言われないな。
バイクや自動車は事故ったから禁止されてるだけで。
好き放題してるといえばしてるような気がする。
自由がどうたらと語るほどではない。
聞けば書類上従兄弟になってるレオニダスくん。
ウタ義姉ちゃんに焼肉たかられてるらしい。
それと比べたらマシなような気がする。
デートのつもりなんだぜ! 二人とも!
ま、いいか。
当たり前であるが嫁ちゃんとクレアは予定日が近い。
数日差かな。
その情報だけでも俺が鬼畜生と思われそうな気がするが、二人とも本人公認である。
わりとメディアには厳しいこと言われてるけど、「人間だし悪癖の一つくらいあるよね」っていう印象だ。
というかルーちゃんママにわざと厳しいこと言ってもらってる。
ガス抜きガス抜き。
世間はルーちゃんママが俺の友人なの知ってるから、友人として苦言を呈してると好意的に受け止められてる。
おかげで女癖の悪さは許されてるような気がする。
だけどヘルガさんまで新しい愛人疑惑があるのは気に入らない。
ヘルガさんに失礼だろが!
そっちは公式で反論させてもらった。
とにかく俺たちは幸せであった。
ゾーク戦争前に未婚だった連中も次々子どもができた。
ベビーラッシュだ。
女子もガンガン子ども産んでる。
同級生の女子が次々お母さんになっていくのってなんか大人になった気がするよね。
その穴を埋めるのは難しいけど、みんなで仕事を分担してる。
というか各家から兄弟姉妹が送り込まれてきてる。
リコちも子どもっていいよねなんて話をしてる。
「あ、これ美味しい。レオくん! この焼肉美味しい!」
子ども欲しいよねって話をしてる……?
この宴会も赤ちゃん抱いてきてるのもいる。
そのうち走り回る幼児の群れが見られるだろう。
なお赤ん坊であるがワンオーワンとタチアナがうまいこと手伝ってる。
……あいつらすげえな。
タチアナはわかるんだけど、ワンオーワンまでちゃんと手伝えてるのが偉い。
シーユンは女官さんと一緒にオロオロしてる。
うーん、なんとなく傾向がわかってきた。
「クレア、もしかしてタチアナとワンオーワン、産婦人科病棟手伝ってた?」
「よくわかったね」
「いや赤ちゃんの世話とか流れるようにやってたから」
「ローテーションでやったみたい。ワンオーワンは特に人間を知るための教育目的もあるかな」
お兄ちゃんはいま猛烈に感動してる。
下の子たちの成長ぶりに猛烈に感動してる!
「人間は成長するんだな……。俺もがんばろうっと」
俺がそう言うとその場にいた全員が俺を見る。無言で。
なにその顔。
どうしてそんな顔で俺を見るの?
すると嫁ちゃんが呆れ声を出す。
「婿殿はがんばらなくてよい。頼むから肩の力を抜け」
……ジェスターのさだめ。
それを俺はフライドポテトと一緒に噛みしめるのだった。
明日は書く暇がないので、また設定で行こうと思いますだ




