第七百三十六話
俺のクローンこと従兄弟のレオくんはレオニダスを名乗るようになった。
「レオ2だす」ね。
え? 違うの?
レオニダス王?
スパルタの王?
誰が考えたの?
あ、はい、ウタ義姉さんか。
さすがエリート……。
なんにせよ従兄弟ちゃんは『屍食鬼殺しのレオニダス』として軍じゃ有名人だ。
俺の活躍ばかり宣伝されるもんで、軍では少しだけ不満がたまってたんだよね。
そしたらスペース・レイダースのおまけでくっついてきた士官が大活躍。
銀河帝国軍も溜飲を下げた。
ワシが育てたって言えるもん。
もちろん軍のお偉いさんは俺のクローンだって知ってる。
でも俺であって俺じゃないし、その情報は永遠に語られることはない。
語られなきゃ存在しないのと同じなんですよ!
軍は半分外国人になっちゃった俺と俺の仲間の手柄じゃなければいい。
純粋な銀河帝国軍士官の功績ならメンツが守られて上から下までホクホクできるってわけ。
あとコンテンツとして俺は飽きられてきたってのもあるような気がする。
上様カナシイ……。
レオニダスくんは銀河帝国軍人で新しい英雄だ。
俺としては歓迎したい。
クロノスの宮殿を建てたのは建設会社だけど、歴史には俺の名も残る。
そう、民の手柄は俺のもの。俺の手柄は俺のもの。
別に横取りってわけじゃない。
数百年後には俺と嫁ちゃんの名前くらいしか残らんのよ。残念ながら。
歴史ってのはそういうもの。
よほど詳しくないと徳川さんの何代目がなにやったか知らんでしょって話。
銀河帝国皇帝だって麻呂と妖精さんの時代のがバカって以外は何やったか知らんもの。
クロノスは次代でコケても初代国王は名が残るでしょ。
嫁ちゃんはゾーク戦争の勝利者として名が残る。
他は知らん。本当にそれだけ。
これだって俺の希望的観測だ。
実際は俺たち夫婦の名前すら残らない可能性だってある。
ゼン神族に負ければ確実にそうなるだろう。
ゼン神族に勝利するか、和平するかすれば名前はワンチャン残るだろう。
子孫がもの凄いバカで資料焼き払って終わりの可能性もある。
建築会社に壊された遺跡は星の数。
政治家が遺跡壊した例も多数。
歴史に残らない政治家なんていくらでもいる。
ローマの政治家なんて化け物だらけだけど専門家でもなきゃ知らんだろ。
だから未来なんてわからない。
俺の死後二十年くらい、ご当地怪獣カワゴンで食える人がいれば大成功じゃないかな?
俺は暗愚、歴史に名を残すウルトラバカにならないように気をつければいいってことでしかない。
民に嫉妬するのはアホのやることだ。
たぶんね、初代以外だと歴史に名を残すのがやべえやつで、功績がよくわからんやつの方が部下に仕事振ったシゴデキだったんじゃないかな?
王様になったらそう思うようになった。
ということで軍部は新しい英雄にハッピーに。
俺はなんか屍食鬼倒した王様扱いでハッピー。
ここで軍部と俺、お互い図に乗らなきゃいいってわけ。
さて、二十八号機の成功で開発部は完全勝利。
より実戦的な新型機開発に着手した。
でー、俺も何度も言ってたんやつ。
対艦ライフルね。
従兄弟ちゃんも途中で壊れて死ぬかと思ったって言ってたやつ。
あのすぐ壊れるクソ兵器。
使い捨て運用が決定した。
四発使い捨て。
四発撃つとロックかかって撃てなくなる。
何発も撃てるって前提で持たせるからダメなの。
ミサイルだって自爆ドローンだって一発で終わりだから複数積むでしょ。
それと同じ。
使い捨てってわかればそれに応じた運用になる。
戦術が固まってればいいってわけ!
ボルトスロワーよりはマシ!
あれこそ真のクソ兵器。
ゾークに対して効果あるから使い続けられただけで、精度が悪すぎて使い物にならんからな!
ということで鬱展開は避けられ、またもや束の間の平和がもたらされた。
要するにクローンという情報を隠したことで関係者全員ハッピーということ。
ウタ義理さんのことはすでに館花家に通報済み。
というか姉の恋バナで悪い顔してるメリッサが通報した。
書類上、俺の従兄弟でカミシロ一門の侯爵である。
そりゃ侯爵級の惑星持ちの侯爵じゃなくて伯爵級複数持ちという侯爵の中じゃちょっと下とされる身分だけど、それでも侯爵だ。
銀河帝国皇帝陛下の親戚だし、面倒な親もいない。
しかも本人は功績を立てて軍で出世した。
超優良物件である。
なので義姉さんの嫁入りか従兄弟ちゃんの婿入りかは今後の話し合いとして、とにかく結婚までの外堀は超高速で埋まりつつある。
俺は本人たちが幸せならいいやと思う。
嫁ちゃんは従兄弟ちゃんの家臣団を編成し、交渉させてる。
もう逆さに振っても軍閥からしか人材を出せない。
こないだ兄枠として外堀決定会議にリモート参加したけど、ヤクザの集会にしか見えなかった。
ただみんなスーツじゃなくて各組織の制服着てるからカタギなのがギリギリわかるって感じ。
そんな顔面圧の強い集団の中で生まれたての子鹿のように震えるカワゴン……。
怪獣虐待反対!
ストレスで夜しか眠れなかった。
で、寝てたわけ。
すると夢の中に出てくる座敷童ちゃん。
キャッチボールで遊びながら会話。
「夢の中に出てどうしたん?」
「世界樹あげて」
そういや増やした神籬ちゃん。
大量にあるな。
「了解。苗木ね」
「うん」
よくわからんがわかった。
神籬ちゃんの苗木を従兄弟ちゃんの領地に送って、従兄弟ちゃんにも苗木を送る。
ついでに従兄弟ちゃんの領地に座敷童ちゃんの神社も作っておく。
これがどう転ぶかはわからない。
でも座敷童ちゃんの言うことだから大丈夫でしょ。
はっはっは!
なお神主さんは神社の後継者じゃないんだけど神社系の学校卒業して資格だけ持て余してる人が大量にいるんだって。
そこから派遣してもらった。
あと樹木医もね。
なんか異常なほどの需要増で農学部が人気なんだよね……。
というわけで報告書終わりと。
「ウタ義姉さんの結婚っていつになりそう?」
俺は妖精さんに質問した。
「愛ちゃんの報告だと友だち止まりみたいですよ~」
「あらま、じれったい」
「いーんじゃないですかー。軍部は結婚式の準備してるみたいですけど」
「気が早すぎる!」
「いーえー、カミシロ一門幹部の結婚式なんで、いまから準備しないと何年かかるかわからないんですよ」
「あー、はい。悪いの俺ね」
「この件に関しては完全に悪いのレオくんですね」
「正直スマン!」
ということで俺のクローン事件は闇に葬られた。
後の歴史家がどう評価するかは知ったことではない。
明日&明後日がかなりヤバいかも~?
というか来週までずっと予定が詰まりまくっててヤバいです




