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第七百三十四話

 愛ちゃんが他人事みたいに言いやがった。


「隠しモードみたいですね。少尉の超能力に連動した機能みたいです」


「俺、なんの能力者なの?」


「それは機密情報ですね」


「自分のことなのに教えてくれないのおおおおおおおおおッ!」


「隊長! それよりもどんなモードか聞いて!」


 ウタのツッコミで我に返る。


「このモードは」


「リミッター解除です」


 絶対安全装置ついてないヤツ!

 だが現状ではすがるしかない。


「と、とりあえずミサイル発射!」


 外側がピカピカしようがやることは変わらない。

 ウタがミサイルを発射。

 もう撃ちつくす。


「屍食鬼にダメージ! ですが止まりません!」


「ですよねーッ!」


 ラターニア製の高威力ミサイルも表面を多少削っただけだった。


「屍食鬼、海賊船を取り込んでます!」


 第三形態かよ!

 巡洋艦クラスの大きさから戦艦ほどの大きさになっていく。

 スクラップと屍食鬼が混ざった化け物が誕生した。


「あークソ! あの欠陥兵器があればな! 実はまだ使えたりとかない?」


 愛ちゃんが呆れ声を出す。


「爆発しますよ」


「捨ててよかった!」


 しかたない!


「突撃する! ウタ! ライフルの照準頼んだ!」


「へーい。肩に装着してください。いまミサイルポッド切り離しますんで」


 バシュッと音がして全弾撃ちつくしたミサイルポッドが切り離される。

 そしたらパルスライフルを肩のスロットに装着。

 射撃がそんなに上手じゃない俺がやるよりはマシだ。

 俺は右手に刀。左手に拳銃を持つ。

 おらあああああああああああッ!

 もう怖いもんなんてねえぞ!


「突撃!」


 巨大な屍食鬼と機体の大きさの差は歴然。

 俺が夏の蚊なら向こうは人間サイズだ。

 要するに近づいても良く見なきゃ知覚できない!

 そこが弱点だ!

 ……たぶん。

 愛ちゃんから警告。


「屍食鬼集合体からエネルギー反応!」


 ビームが……って駆逐艦の主砲か!

 主砲が全方面に発射される。

 銃座の対空パルスバルカンも乱れ撃ち。

 おっとぉ、俺を狙ってない!


「気づかれてません! というか蚊がいるのはわかってるけどどこにいるかわからない状態です。なので殺虫剤ばら撒く作戦に出たようです」


「愛ちゃん最悪の例えだよ! もうやだこの軍隊! モスキートレオ! 逝きます!」


「隊長がんばって~」


「ウタ! お前もがんばるんだよ! 終わったら焼肉行くぞ!」


「へいへーい」


 屍食鬼の狙いはめちゃくちゃ。

 逆に軌道が予測できない。

 それでも俺は屍食鬼に接近した。

 光る俺の機体はまるで夏の蛍。

 ……あれ? 夏の蛍なんて見たことあったっけ?

 これは失われた記憶か?

 いや思い出すことはできないはずだ。

 脳細胞ごと失われたのだ。思い出せるはずもない。

 まあいいや。


「ウタ!」


「はいよ!」


 射撃しながら切りまくる。


「ギャアアアアアアアアアアアアアッ!」


「屍食鬼集合体にダメージ入りました。――なにか来ます!」


 そりゃ防御機構あるよね!

 屍食鬼の体から飲み込んだ海賊船の破片が放出される。

 何万というデブリが俺を襲う。


「避けてください!」


 次の瞬間、未来が見えた。

 冗談ではなく、一瞬先の未来が見えた。

 俺はその瞬間、ナノ秒もないその一瞬で数万回死んだ。

 普通なら避けられるはずのない。

 大量のデブリに激突して死ぬ未来を何万回も見せられた。

 だが同時に俺はこの死にゲーを何度もやり直し……攻略法を見つけた。

 攻略するのと同時に俺は現実に戻された。

 俺は冷静に攻略時と同じ動きでデブリを避けていく。


「た、隊長! 人間じゃないみたい!」


 ウタに答える余裕はなかった。

 そしてここ!

 デブリを刀で払って、さらにデブリを避けて……ここで拳銃ドン!

 空いた穴からデブリが発射。

 それをくぐって刀で本体を斬りつける。

 首を傾けてデブリを回避。

 はい拳銃ドン!


「ギャアアアアアアアアアアアアアッ!」


「ウタ! 来るぞ! ライフルで撃ち落とせ!」


「了解!」


 何本もの触手を屍食鬼集合体が伸ばしてくる。

 ウタはそれを肩のライフルで撃ち落としていく。


「愛ちゃん、この奥に駆逐艦コンピューターがある! こいつだけセキュリティがガバガバのはずだ。ハッキングして自爆させて!」


「はい!」


「そしたらセキュリティキーが同じ他の艦も自爆させて!」


「はい!」


 ここで何度も死んだ。

 一万回は死んだ。

 わざと死にながら検証してたどり着いた攻略法はこれだった。

 屍食鬼は攻撃手段として駆逐艦を取り込んだのだろうが、それが逆に弱点を作り出したのだ。


「自爆承認! 離脱してください!」


「了解」


 俺はキリモミしながら離脱する。


「ちょ、隊長! おええええええええええええええええええッ!」


 ごめんウタ。

 そこまで計算に入ってる。

 ホントごめん。

 ここからはビームとデブリの回避ゲームだ。

 デブリを避けて避けて避けて……。

 無理矢理体を捻って……回避!

 でも刀を持ってた腕にデブリが命中。

 腕がもげた!

 でもこれはまだ最悪じゃない。

 想定内だ。


「爆発まで3・2・1……爆発!」


 ドンッと屍食鬼が取り込んだ駆逐艦が自爆していく。


「来るぞ!」


「え、なに!?」


 とうとう俺たちの場所を認識した屍食鬼集合体が駆逐艦の主砲を俺たちの機体へ向けて発射した。

 それをギリギリで回避。

 キラキラ光る表面にかすり装甲が溶ける。

 でもこれも予想通り。

 拳銃を向けて集中する。

 ここでも外して一万回は死んだ。

 そう俺の銃口の先には先にスクラップになって自爆装置が働かなかった駆逐艦の残骸がわんさか詰め込まれてた。

 その中の一つを撃ち抜く。

 これで爆発すればクリアだ。

 俺は引き金を引いた。

 予想通り、完全に予想通りの軌道だ。

 そして自爆装置を撃ち抜く。

 次の瞬間、屍食鬼集合体が爆発した。

 ――。


「それで焼肉おごらされてるのが俺ってわけ」


 戦いの後、簡易検査は異常なし。

 そしたら隊のみんなと焼き肉屋に直行。

 料金分のボーナス出るみたい。

 なおウタは吐いた分を取り戻すかのように食べまくってる。

 こいつ……胃が丈夫すぎる……。

 食べてるとウタの端末にメッセージが入る。


「あー……とうとうか……」


「どうしたん?」


「あー……ちょっと言いづらいことが……」


「なによ?」


「隊長のご家族が見つかりました!」


「はい?」


 俺の家族ってみんな死んだんじゃないの?

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― 新着の感想 ―
家族? どっち? ガチな方? それとも設定の方?
ゼロシステムみたいなもんかな 普通に人間性失いそうなのに、メンタルハイパーモード過ぎてつよい
彼は弟みたいな扱いになるのかね
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