第七百三十三話
屍食鬼の根絶は難しい。
対抗する技術は多数あれど繁殖力が高すぎる。
死者を乗っ取るその性質は見つけたらもう手遅れ。
惑星ごと乗っ取られてることも多い。
聖女タチアナ様は結界を張るも、屍食鬼の潜む領域はとてつもなく広い。
人口の多い惑星を優先して結界を張るしかない。
しかも結界は未だに聖女タチアナ様にしかできない未知の技術だ。
最近では駆虫薬も効果が薄れてきた。
寿命が短く世代交代が速い種族ゆえの抵抗性の獲得である。
長いスパンで考えれば我々の勝利は確定してるものの、その道は遙か遠い。
そんな中、我々は攻撃を受けた。
まだまともな戦力を保持してるようだ。
「海賊ギルド船籍の戦艦から攻撃を受けてます!」
俺はウタと人型戦闘機の搭乗口に行く。
俺の機体は試験機28号。
標準機に新しい機体の技術を応用したものだ。
古代遺跡の技術を使いながらセンサーや制御ソフトは標準機のもの。
わざとスペックを抑えたものだ。
遠距離攻撃機体で複座型。
火器管制はウタがする。
そもそも最新鋭の機体はレオ・カミシロ陛下と一部の仲間くらいしか使いこなせない。
応答速度も最高速度も人間の知覚ギリギリ、むしろオーバーしてる機体だ。
それをマニュアル操作かつ、一人で運用してるとか信じられない。
「隊長、ちゃんとハンカチとティッシュ持ちましたか?」
「お前は俺のおかんか!」
「あははははははは!」
乗り込んで認証でロック解除。
「レオ少尉。認証。はーい、あなたのアシスタントプログラムちゃんですよ~」
AIがお出迎え。
「任務ブリーフィング資料を読んでくれ」
「はーい。はいはい……ふむふむ。了解。ウタちゃん、ミサイルその他OKです」
「あいよー。愛ちゃんお疲れ~」
AIで「愛ちゃん」だそうだ。
安直すぎて逆にスゴイ。
他の隊員からも連絡が入る。
「レオ小隊、戦闘機搭乗完了。発進できます」
うちの隊はラターニア製の普通戦闘機乗りが多い。
現地採用が多ければそうなるか。
一番出回ってる機体だしな。
「了解。先に行ってくれ。俺もすぐあとから行く」
どうせ後衛だし人型戦闘機の方が時間かかるしね。
発進。
海賊旗を掲げた駆逐艦が表示される。
「呼びかけは?」
「応答ありません。海賊ギルド、現アマダ警備の撃墜許可は出てます」
海賊ギルドは部門ごとに解体。
夜の店はイソノグループに吸収合併。
海賊部門はアマダ警備の吸収され航路警備を主体に仕事をしてる。
それはそれとして依然として海賊ギルドは小国級の扱いを受けてる。
その海賊ギルドから撃墜許可が出たのだから問題ない。
はい報告書用の義務の確認終わり。
「攻撃しろ」
隊員たちが戦闘機で攻撃していく。
相手は小型の駆逐艦の艦隊。
20はいるかな?
戦闘機のミサイルだけでも問題ない。
俺も戦闘に参加。
ウタの焼肉分くらいは働こう。
「隊長、おかなすいた……」
「栄養バーで我慢しなさい!」
よく戦闘中に食べられるな。
俺はさっきから胃が痛い。
部下が怪我しないようにがんばらねば。
「ウタ、大艦ライフル使うぞ」
「へーい、ロック解除」
背中につけた大口径ライフルを腰だめで構える。
銀河帝国軍、クロノス軍の新兵器だ。
古代兵器の技術を応用したものらしい。
なので小型化は不可能。
大きすぎて肩に担ぐか腰だめでしか構えられない。
ある意味欠陥兵器である。
射撃はウタにまかせる。
「ちょっと隊長、場所悪いんで少し上に移動して」
「へーい」
上方に移動。
「射線確保。駆逐艦ロックオン。動かないでくださいね!」
「へいへい」
「発射!」
撃った瞬間、衝撃で体勢が崩れる。
それをなんとか立て直す。
「ふう……」
「あー……全身にダメージ入りましたよ!」
完全に欠陥兵器である。
皇族の専用艦の主砲ほどの光線が突き進む。
直撃した瞬間、エネルギーフィールドごと光線が駆逐艦を貫通する。
一瞬遅れて駆逐艦が爆発した。
「駆逐艦撃墜!」
もう一発。
「隊長、斜めにちょっと動いて」
「へいへい」
「射線確保。発射!」
ドンッ!
またもや体勢が崩れる。
「今度は機体ダメージなし。いい感じです」
「この武器さあ、欠陥兵器だよね」
いちいち手動で姿勢制御しないといけない。
「だって帝国軍はボルトスロワーみたいなゴミ兵器でゾークと戦った蛮族ですよ」
「うわあああああああああ! あれはひどかった!」
訓練で跳ね返ってきた電撃でこんがり焼けて動けなくなった機体多数。
改良型も同士討ちがが相次ぎカミシロ隊くらいしか使いこなせなかったので有名だ。
俺の機体も別の隊の流れ弾でこんがり焼けて操縦不能に。
死ぬところだった。
カミシロ隊は見てから避けるそうだが……。
心の中でいままでの恨みを暗唱しながらライフルを撃っていく。
ワンサイドゲームだ。
航行不能になった船はスペース・レイダースが乗り込んで制圧する。
捕まえた屍食鬼は実験施設に送られる。
駆除薬やら人工結界の実験に使われる。
すでに俺たちは終わった後の打ち上げのことしか考えてなかった。
ウタの席から腹の鳴る音が聞こえる。
「焼肉、焼肉、焼肉……」
すでに人類をやめたかのようなつぶやきが聞こえる。
だがそれは甘かった。
AIの愛ちゃんが警告を発した。
「屍食鬼……合体してます」
「……サンゴとかそういうやつ?」
群れが集まって一つになるような……。
「そういうやつみたいッスね」
巨大なクリチャーが形成されていく。
なんだろうか海を駆ける鬼イソメ。
とにかく気持ち悪いやつ。
巡洋艦くらいの大きさになる。
「ウタ! 攻撃!」
「デカいから射線通ってます! 動かないで……オラよ!」
ドンッと遠距離射撃!
屍食鬼の半分くらいが吹き飛んだ。
だけどこの欠陥兵器……すでに限界だった。
「本体温度上昇! あ、ダメだ! 壊れました!」
「やっぱり欠陥兵器だ!」
ぽいっと捨てる。
しかたない。
中距離用のライフル片手に突撃。
「ウタ! 移動中にミサイル全部ぶち込め!」
「了解!」
「スペース・レイダース! 作戦失敗だ。撤収! 俺らで食い止める!」
「感謝する!」
ああ……。
もうヤダ!
あと三年我慢すれば士官学校の学費返還の義務がなくなる。
そこまで我慢しようと思ってたが、もうヤダ!
欠陥兵器持たされて実戦にぶち込まれるとか我慢の限界だ!
次の瞬間、しゃらーんと頭の中で鈴の音が聞こえた。
なにかが起きた。
……なんだ?
「ウタ、聞こえたか?」
「聞こえました」
混乱してると機体が金色に輝きだした。
なんじゃこりゃあああああああああああああああああッ!




