↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
731/819

第七百三十一話

 少尉と言えども書類仕事はできず。

 事務は士官大学校を出ないと難しい。

 それでも書いていく。

 書類仕事は苦手だ。


「また書類作成で苦戦してるんですか?」


 ウタが来た。


「書類苦手なんだよぉ」


 すでに心は折れかかってる。


「仕方ないな。お姉さんが手伝ってあげようかな」


「さすがウタ様! おごりますんで!」


「焼肉食べ放題」


「……ウス」


 ウタは本当によく食べる。

 学生時代は柔道の選手だったらしい。

 俺の給料の何割かはウタの胃袋に消えてる。

 書類仕事を終えて、鬼神国の部隊との会議。

 海賊の正体は不明と。

 鬼神国人と会議をすると必ず道場に連れて行かれる。

 腕試しだ。

 今日の相手は鬼神国海兵隊の少尉。

 男性で二メートル近いひげ面の大男だ。

 道場には目を輝かせた部下の兵士たちもいる。

 その目に悪意はない。


「言っとくけど、俺弱いッスよ」


「嘘つけ。強者のオーラが漂ってるぜ」


 そんなわけない。

 俺がレオ・カミシロくらい強ければ、もっと人を救えた。

 木刀を渡される。


「銀河帝国剣術二段。レオ。行きます」


 二段なんて言ってるが、士官になれば勝手に生えてくる段位だ。

 でも心理戦としてはありだろう。


「おっとぉ、カトリ流初段」


 ……ヤバい。

 カトリ先生の弟子だった。

 二段も勝手に生えてきたものだって知ってるだろう。

 完全に滑った。

 ノーマルな正眼構えからの打ちおろし。

 巻き上げ……ようと思ったら変化して体当たりドーン。

 思いっきり突っ込んできた。

 これだからカトリ流は!

 アメフト選手くらいの突進が襲ってくる。

 回避不可能!

 わざと飛び上がってフワッと体当たりを受け流し……横に逃げ……。


「でえええええええええええええええええええええええいッ!」


 さらに突撃。気合とともに強引に木刀を振り下ろしてきた。

 こんなの受けたら木刀折れるわ!

 体勢をわざと崩して受け流しながら相手の足元に転がってエスケープ……しながら足を斬りに行く。

 これは帝国剣術じゃない。

 ゾークや海賊との戦いで編み出した喧嘩殺法だ。

 足さえ止めりゃ勝負は終わるんだよ!

 がつんっと足に当たったが硬い!

 鬼神国人の頑丈さを考えてない俺が甘かった。

 振り下ろしの連打が俺を襲う。

 に、逃げ。

 ゴロゴロゴロゴロと転がってエスケープ。

 ふ、ふへえええええ。

 無理!

 基礎体力で完全敗北してる。


「レオ少尉。あんた本当に人間ですかい? 動きが完全に猛獣なんですが」


「足叩いても跳ね返すあなたの方が強いッス!」


 なんて軽口叩いてお互いを健闘し合う。

 そして視線を鬼神国の少尉に向けると足がぷくーっと腫れてきた。

 あ、あれぇ?


「あ、あの……足」


「お! これは足にヒビ入ったようですな! はっはっは、お見事!」


 笑ってるが……これは痛い。


「はっはっは、すまんが誰か治療用ナノマシン持ってきてくれ」


 シリンジで注射して急速回復。

 しばらく休憩すれば腫れも引くだろう。


「いやー、いい勝負でしたな」


「次は勘弁してください」


「勝ち逃げは許しませんぞ。はっはっは!」


 気に入られてしまったようだ。

 こうなった鬼神国人はしつこいぞ……。

 悩んでるとウタとサリア大王が道場にやって来た。


「あ、やっぱりここにいた!」


 ウタがそう言うとサリア大王が笑う。


「おっと、珍しい。少尉負けたんですか?」


「完敗です! はっはっは!」


「レオ少尉、彼は特殊部隊でも有数の使い手です、それなのにカトリ流まで学んで研鑽を怠らない男です。自慢していい」


「次は絶対に勝てる気しませんけどね」


「ホント、うちの少尉。基本腰が引けてますね」


「ウタ余計なこと言うな。弱いのがバレる」


 軽口を叩いて本題。


「それでサリア大王陛下までなにかありました?」


「屍食鬼です」


 なぜかウタが答える。


「屍食鬼がなによ」


 嫌な予感がしてきたぞ。


「海賊ではなく屍食鬼でした」


「は?」


 現在屍食鬼は第一級危険生物に指定された。

 遭遇したら問答無用で抹殺が命じられてる。

 屍食鬼は発見次第、帝国軍上層部に報告され作戦にスペースレイダースが投入される。

 つまり俺らの仕事は終わりだ。


「なるほど……じゃ、休暇か。ウタ、休みどこに遊びに行く?」


 そういや見たい映画あったな。

 海も行きたいな。


「なに言ってるんです。うちらも作戦に参加しますよ」


「は?」


「あれか、バックアップ要員?」


「違いますよ。うちの隊に屍食鬼に圧倒的に強い超能力者がいるんです」


「誰よ」


「機密情報です」


「なんでウタが知ってんのよ?」


「機密情報です」


「なんで俺に教えてくれないのよ?」


「うるせえな! いいから参加!」


「えー……」


 下士官の下剋上を受ける名ばかり士官。

 中間管理職の悲哀そのものである。

 それを見てサリア大王が腹を抱えて笑う。


「あ、あははははは! こりゃいいや! 期待できる」


「なにがです?」


「作戦ですよ。我々も参加します」


「陛下……自らってことはありませんよね?」


 もしサリア大王になにかあったら外交問題になる。

 それはやめてほしい。

 外交問題の責任の取り方なんて誰も教えてくれないのだ。


「え、行きますよ?」


「困るのですが」


「私、これでもバトルドームの関係国と鬼神国の双方に責任があるので」


 勘弁してくれよ……。


「ま、大丈夫ですよ。レオ少尉もいますし。では作戦日当日にまた」


 背中を叩かれる。

 そのまま笑いながらサリア大王は行ってしまった。


「ウタ……久しぶりに歌いたい気分。暇か?」


「先に焼肉行くならつき合いますが」


「焼肉どこ行く?」


「高い店行っても味の違いなんかわからねえからいつものとこで。あとカラオケはアルコール飲み放題とソフトクリーム食べ放題ついてるとこ」


「いつものとこな!」


「へーい」


 大学生が行くようないつもの焼き肉屋。

 食べ放題。


「アルコールは?」


「カラオケで飲みます」


 ウタは食欲を満たしたいようだ。

 どうせカラオケでも食べるのに。

 ま、いいや。


「冷麺ついてるコース、一番高いヤツじゃん!」


「どこもかしこも値上げですね」


 ふへー、一万クレジットが飛んでいく。


「景気いいからな~。ゾーク戦争も終わったし俺も民間に転職しようかな……」


「あ、いいですね。一緒にカミシログループにでも就職します? 隊長ラターニア語できますし」


「ついてくるのかよ!」


「隊長、焼肉おごってくれますし」


「焼肉目当てかよ!」


 頭悪い会話を楽しみつつ飯を食った後、思いっきり歌ってやった!

 そして数日後、我々は屍食鬼討伐作戦の日を迎えたのである。

明日で毎日投稿二周年です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
民間に降りたからったレオクローンの監視任務が解けるわけないからね ウタさんの「ついていく」は何割任務で何割私情なのかな
あ〜屍食鬼終わったわ。ウタさん否定してたけど嫁モード入ってるよね。クローンレオくん次は聖女(嫁)探しだね~。直ぐ見つかりそう···。
下手に繁殖させるとゼン神族の二の舞ぞ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。