第七百二十八話
新型機開発は難航しまくっていた。
一つ技術が理解できるとまた謎の技術が発覚し、組み立てれば暴走するを繰り返した。
おまけにモモちゃんの起動した惑星級戦艦の解析にも人員が割かれ、リソース不足の極地になった。
嫁ちゃんは銀河帝国と連日会議を繰り返す。
ゲート越しとはいえ、超科学力を持つ古代人の遺跡、それも稼動ができるものを発見してしまった。
敵側、つまりゼン神族が対抗できる武器を持ってないはずがない。
この戦艦の所有者がクロノス王国だからまだいい。
国王が皇帝の夫だもの。
ただ問題は俺が嫁ちゃんと同格になったことである。
いや支配領域そのものは、すでにクロノスの方が大きくなっちゃったんだけど。
クロノス皇帝になれなれ言われてるし。
やだ~、皇帝ってクロノス教のお墨付きがつくってことじゃん。
雇われ店長からオーナーになるくらいの違い。
クロノスの王なんて総理大臣と同じ『同輩中の首席』くらいの立ち位置なのに、皇帝なんかになったら創業者会長である。
そんなの俺が面倒だ。
嫁ちゃんとの子どもも将来「皇帝になるの嫌だ」って言ったらクロノスに逃がすつもりだったのに。
どんどん逃げ道を塞がれていく。
カナシイ……。
なお俺を皇帝に推挙してるのはクロノス教にラターニア教にゲーミング坊主の協会に神社の組合に……。
逃げ道がなさすぎる!
やだー! 皇帝になりたくない!
なっても俺個人も政治的にもいいことない!
病気とかで邪魔になったら民主的に強制退位させられるクロノスの方がいい!
俺だって年取ったらどうなるかわからんのだぞ。
というわけで強制退位をもぎ取るために最後までゴネようと思う。
焼きそばの麺の在庫が減ってきた。
消費期限も余裕がある。
なのでお好み焼き。
生麺は難しいね。
焼きそば入りの重ね焼きだ。
焼いてるとまためんどくせえ連中が来る。
「牛すじは入れないのかね? というか生地に混ぜようぜ」
男子が言った。
「地元メシ食いたきゃ自分で作ればいいだろが!」
「お前が作った方が美味しいだろうが!」
そう言われると悪い気しない。
「へへっ!」
「へへっ!」
暑苦しい漢の友情である。
「でも作らない」
「なぜだー!」
「俺がこれ食いたいから」
「ぐ、憶えてろよ!」
たぶんメシ食ったらお前も忘れる。
今度は女子が来る。
「金時豆入れないの?」
「待って……入れるの?」
金時豆ぇ?
本気で待って、知らない食文化だ。
「豆玉知らない?」
「知らない……」
つい真面目な顔になってしまった。
銀河帝国にすら知らんご当地料理があったか……。
「今度作り方調べとく」
「ありがとう」
そしてもう一人。
別の女子。
「しぐれ焼き食べたい」
「また知らないやーつ!」
聞いてみたらいま作ってるのとほぼ同じだった。
我慢してもらう。
「モダン焼……」
筋肉質の男子が来た。
麺が生地と一体になってるやつだ。
これは難しくない。
「次回以降な~」
「あざっす!」
今度は女子。
「ヒラーチーかダゴ」
「……知らなすぎるやつ!」
作り方聞いたらご当地お好み焼きの話をしたかっただけらしい。
ヒラーチーはニラの野菜お好み焼き。
ダゴはいま作ってるものとあまり変わらない。
「広島焼き」と口を滑らすと反乱が起きかねない重ね焼きでもいいようだ。
作ってると目を輝かせたシーユンがいた。
太極国民が愛してやまない野球チームから察してたが、これもドストライクのようだ。
「少し待っててね」
「は~い」
さてお好み焼きであるが、分類的にはパンケーキの仲間らしい。
そう言われればそうかと思うが、心の中で最後まで抵抗する俺がいる。
「カノムファックブア今度作って」
別の女子。
「はい?」
完全に知らんやつ。
作り方聞いたらココナッツミルクのパンケーキみたい。
ただバイトゥーイって野菜が必要みたい。
よくわからないので保留と思ったら今度作ってくれるって。
ご当地食材難しい!
するとジャージ姿のリコちがやって来た。
「ねー、今度ドーサ作ってみんなに出していい?」
「いいよ~。つうかご当地料理でまた喧嘩になりそうだから頼むわ」
リコちは料理ができる。
専用のキッチンを持ってるほどだ。
スパイスの惑星出身の子たちに解放してるらしい。
ドーサも豆を入れた記事を発酵させて作るんだって。
嫁ちゃんとクレアがやって来た。
二人とも女官さんがついてたいへんそうだ。
「二人とも食事持っていったのに」
そのくらいはするのに。
「ケビンに筋力落とすなと言われておるのじゃ」
「そうそう。無痛の帝王切開だけど体力は必要なんだって」
ケビンが信用されてるようでよかった。
「なるほど。二人とも無理しないでね」
「あはは。大丈夫だよ。女官さんも常についててくれてるし。護衛もいるし」
「そうなのじゃ。医師団もおるし問題など起こらん」
そりゃそうか。
それならいいか。
「二人とも無理しないでね」
「はいはい。大丈夫だって」
夫ちゃんはとても心配だわ~。
ニュース報道も銀河帝国皇子とクロノス王子の誕生で盛り上がってた。
まー、ねー。
それより先にイソノのとこか。
イソノの嫁さんであるハナコさんはそろそろ予定日。
クレア様の支配で従順になったパーシオンすら喜んでる。
いやさ、いちいち指導するの面倒だから自由主義にしたいんだけど!
たしかに個人の幸福までのルートまで指し示してもらえるのは楽だろうけどさ!
でも管理する方は面倒の極みなのよ!
どこの誰がどんな幸せを追求したいかなんて知らねえよ!
好きにしろよそんなもん!
パーシオン今日のアホどもは優遇措置をはぎ取ったら大人しくなった。
お前ら……政府の金で偉そうにしてたのか……。
その点、我が銀河帝国の誇る葬式仏教は大人気。
だって葬式産業が発展してるから圧倒的に楽だもの。
なんとなく故人のためにしてあげた感がある。
ゴミと一緒に焼却よりは精神衛生上だいぶマシだ。
ちゃんと合同法要もするし。
しかも棄教しろなんて口が裂けても言わない。
そもそもが少子高齢社会だった銀河帝国の寺は墓地霊園や幼稚園、貸しスタジオなどの多角経営で檀家収入を必要としてない。
さらに外宇宙に来てる坊さんなんて、副業が別分野の学者だったりするわけだ。
なので商売っ気のない寺は大人気。
逆に入信者多数の状態である。
ますますパーシオン教は弱くなり、イソノや俺の子どもたちの誕生は一大イベント扱いになっていたのである。
そんな中……俺は目を背けていた。
新型機の試作ナンバーが二十八に到達しそうな事実から。
やめろよ。二十八号機で成功するの。
本当にやめろよ!




