第七百二十五話
『ジェスターフィールドを感知しました』
なにいまの?
いま明らかに変なメッセージ出た。
しかもさ、日本語だけど銀河帝国の言葉じゃなくて古いの!
イントネーションとか古いやつ!
軍の幼年学校の歴史の授業で聞いたことがある古い言葉!
「妖精さあああああああああああんッ!」
「ソフトウェアにそんな機能ねえです!」
「ですよねー!」
「わ、私や京子ちゃんのチェックをすり抜けて存在するシステム……いい度胸してやがりますね!」
京子ちゃんから通信が入る。
「陛下! フレーム表面に文様出現!」
そうかー。
フレーム周りというか、防御システム内に潜んでたかー。
それともいろんな制御システムに少しずつ存在してるかもな。
コードなんて肥大化しまくってるからどうやったってわからんものが入り込む。
なぜかコメント文があると正常に動くとか、どう考えても無駄な処理なのにそれがあるだけでシステムが正常に動く謎文とかのアレ!
さらに言うと、まだ完全に使用方法がわかってないシステムや装置がある。
作ることはできるけど解析が進んでない。
その辺に基幹のコードがあるとどうしようもない。
はっはっは!
やはり自国で一から開発してないものは恐ろしいね!
なんてオーディエンス気分で言ってる暇はない。
だって俺がパイロットだもの。
光を放ちながらどう考えてもおかしい速度で駆け回る。
小さなデブリすら避ける余裕があった。
「嫁ちゃーん。これおかしいわ」
「わかっておる! さっさと解除せよ!」
「いやそれがさー。何もかも見えるから危なくないんだよね。全方向に何があるかわかる」
キリモミターン。からの的に射撃。
ドローンの的をすべて撃ち抜く。
「ね、死ぬほど集中してやった動きがしゃべりながらできる。あ、これすげえわ」
「お、おう?」
嫁ちゃんをごまかして次は妖精さん。
「妖精さん、解除コードを作って。徐々に出力下げてシステムダウンさせるだけでいいから」
「は、はい! レオくん死なないで」
「死ぬ感じはしないよ~」
武の極地状態で的をすべて破壊。
いやー、これすげえわ。
疲労も特にない。
この状態ならゾークマザー単騎でいけたかも。
神籬ちゃんがキャッキャしてる。
神棚ではミニ座敷童ちゃんが踊ってる。
うーん?
……うーん?
あ、そういうことか!
「座敷童ちゃん。ありがとね」
終わったら食べる予定だったお菓子をミニ座敷童ちゃんに渡す。
ミニ座敷童ちゃんがぴょぴょこジャンプした。
「神籬ちゃんに止めてって言える?」
ミニ座敷童ちゃんはこくこくうなずいてる。
すると出力が弱まっていく。
なお頭の中のBGMは「おっぱいぼいんぼいん」なあの曲。
BGMがフェードアウトしていく。
やっぱりジェスターの能力を向上させる効果があるのか。
「レオくん! 出力減衰プログラム起動します!」
「お願い」
そのままだんだんと過剰放出されていたエネルギーが減衰していく。
ある程度収まると機体が停止した。
なるほどね。
すぐに救出チームがやって来る。
うーん……頭がはっきりしてるうちに書類でも書くか。
座敷童ちゃんに奉納するのはいいとして、止まるのにそれはまずい。
なのでオンオフを切り替えられるようにする。
頭の中のBGMも現状コントロールできない。
だったら最初からBGM流せばいいや。
はいシンプルな解決方法。
「救助チーム到着しました」
「へーい、お疲れー」
手動開閉レバーを引いて脱出。
機体回収班もやって来て試作機をワイヤーでけん引していく。
俺は輸送機で運ばれて行く。
念のため病院直行だって!
ま、いいけどさ。
というわけでテスト終了。
戦艦に運ばれて主治医と化したケビン先生に診てもらう。
「それで、今度はなんだって?」
「全方向に目があるかのような感覚だった。おそらくゾークマザーとも単騎で戦える」
「……精神状態に異常ありと」
「医学的にはそういう診断になりますよねー!」
わかってた。
そうなるのはわかってた。
「冗談だよ。レオの場合は超能力絡みかな」
「座敷童ちゃんと神籬ちゃんは?」
「そっちは完全に医学の領域じゃないよ」
「それもそうか」
とりあえず脳内スキャンで脳内物質などの検査をする。
「脳にダメージもないよ」
「おかしいな。少しくらいあってもおかしくない激戦を繰り広げてるのだが」
アメフト選手みたいにスカスカになっててもおかしくない。
元からスカスカ説も有力だ。
「自己回復能力のおかげかな」
なるほど……。
タンク役じゃないのにタンク役の能力があって、バフ役じゃねえのにバフ用のスキル持ち。
心の底からパーティー人数が限られてるRPGルール向きじゃない。
回復アイテムひたすら使ってるだけのキャラになるんだろうな。
ただしソロプレイやSLGルールならかなり強いと。
「帰ってもいい?」
「だめ。一日入院ね。だってレオ、あとから死にかけたりするでしょ!」
「それなー」
ということでケビンは俺担当。
このままクロノスの病院に運ばれて再検査みたい。
「なあケビン……」
「なに真剣な顔して」
「その……成人病的なものは引っかかってない?」
特に痛風とか糖尿とか。
……その親父がだね。
いや因子持ってるから遺伝子治療はしたんだけど。
親父は遺伝子治療した挙げ句にかかったからな!
あと尿路結石。
「そんなの治せばいいでしょ! 治せるんだから!」
「そうなんだけどさー!」
たしかに治療可能である。
でもさー、あれヤバいのは気がついたら重傷になってることじゃん!
怖いから毎回血液検査の結果は血走った目で見てるもん!
「健康体だよ! もうさ! ボクのこともっと信じてよ!」
「ケビンのことは全面的に信じてるが? 自分の体を信じてないだけで。今さらなに言ってんだ?」
「そ、そうなの?」
「ケビンのことはみんな許してるって」
「そうそう」
まだいるんだよな~。
ワンオーワンやケビンを避けてるやつ。
男女ともに真面目なやつに多い。
俺やイソノくらいになると暗殺事件すら忘却の彼方だ。
いちいち憶えてられん。
「あはははは……そう……なんだ」
ケビンが涙を流した。
悪い涙じゃない。
背中だけ叩いてやる。
「これからもよろしくな」
拳を突き出す。
「よろしく」
ケビンも拳を合わせた。




