第七百二十四話
ソワソワ……。
人が搭乗できるようになるまで待つ。
ソワソワ……。
まだかなまだかな……。
「鬱陶しいのじゃ!」
食堂で焼きそば作りながらソワソワしてたら嫁ちゃんにガウガウされた。
「いいから待つのじゃ!」
「はーい!」
まずはしばらく待つ。
数週間くらいは待った。
AIによる完全制御から人が搭乗する形に変更。
パイロットいらずのAIで数増やした方が強いって思うけどそれは違う。
AI制御をするなら普通の戦闘機とかドローンの数増やした方がいい。
そっちの方が強いもん。
やることの範囲が広すぎる人型戦闘機は人間が操縦した方がマシだ。
俺たち人型戦闘機は歩兵がやることも仕事に入ってる。
「二足歩行の歩兵ロボット作るくらいなら、ラジコンくらいの小さな戦車ドローンにパルスマシンガン乗っけた方がいいじゃん」って話である。
あと歩兵は安い。
少子化であっても高度人材じゃなければ雑に扱われるのはどこでも変わらない。
そんな人類社会の悲劇を体現したかのようになんでもやるのが人型戦闘機の仕事である。
もちろん俺が乗る前にエッジたちが搭乗する。
エッジたちは普通にミッション完了。
だけど不安な一言を残す。
「これ予想以上に動きますね……」
「動くって?」
「応答速度が速いのもそうなんですが、まるで意思を持ってるかのように動きます」
「それ勝手に補正されるって意味?」
「いやそうじゃないんですが……自分の予想よりも良い結果を叩き出します」
悪いものではなさそうだけど。
京子ちゃんのところに行く。
「ちーっす、聞いた? 動きが補正されてるかもって話」
「聞きました。わざと操作はマニュアルにしたんですけどね」
「その……オカルト的なやつ? 座敷童ちゃんとかの」
「その影響もないように全システムを見直してます。そもそも一から組んでるんですよ! プロセッサーや補助記憶装置のログにもなにも書かれてませんし」
「ですよねー」
なんだろうか?
まー悪いもんじゃなさそうだし。
まーいいよね。
考えるのやーめた。
さてさて、その後検証に二週間。
ようやく俺の搭乗番になった。
やったー!
中の空間には……あ、はい。
座敷童ちゃんの神棚。
末松さん手書きの御札。
神籬ちゃんの苗木の格納庫。
……俺なら制御できるって思われないか?
「まー、婿殿なら問題ないじゃろ」
「ひどい!」
ポメのモモちゃんにも役目が。
よくわからん石版風の装置をピッする作業。
京子ちゃんから通信が入る。
「結局、認証装置がどう働いているのかはわかりませんでした。ですがモモちゃんが陛下を害することはないと思われます」
「まーねー」
たしかにそれは説得力がある。
モモちゃんはヘルガさんと遺跡で待機。
ヘルガさんの護衛にはヒューマさんが指揮するスペースレイダースの部隊がいる。
ギャグは少なめだけど、銀河帝国でも屈指のエリート部隊である。
あとギャグ要員として俺のニンジャ部隊も配置した。
お前らは実力を見込まれて配置されたわけじゃない。
空気をぶち壊すために配置された。
わかるな。
俺は忍者に厳しいお館様なのである。
あと……ヘルガさんスカウトして心の底からよかった……。
「ではモモちゃんお願いします!」
「わん!」
認証装置を前足でピッ。
するとゴゴゴゴゴゴと遺跡が唸りを上げた。
「あれ?」
「やだなに怖い」
もう五号機に乗った俺は不安しかない。
「あ……えーっと……その。ここでお知らせが」
「なに京子ちゃん。起こらないから正直に言って」
「……えーっと起動方法がわからなかった古代の惑星級戦艦が一斉起動したそうです」
冷静になれ俺!
「……作業員は?」
「中で作業してたので無事です。いまそちらに映像を……」
ゴゴゴゴゴゴゴと振動しながら惑星が開いていく。
その惑星の表面と地下の岩盤自体が装甲になってるようだ。
待って、これどうやって攻略するの?
俺わからないよ!
完全に反則だ! レギュレーション違反も甚だしい化け物である。
そして空いたところからは巨大な砲台がせり出してきた。
惑星級のゾークを一発で沈められそうなほど巨大な砲台だ。
「砲身劣化してるだろうから撃つなよ!」
「わかってます!」
「絶対やめろよ! 押すなよ! 絶対に押す……」
「やめろ!」
怒られた。
すると別のところから報告が入った。
「美桜さま出現! 見学だそうです!」
ドレミちゃんと名付けられるのを回避したうちの姪っ子がやってきた。
だおぶ女の子らしくなってきた。
ライブ映像では空中浮遊しながらダンシングベイビーしてる。
今クール放映中の女児向けアニメのダンスだ。
アニメ大好きなんだって。
さてそれはそれとして……俺は死を覚悟した。
だって制御できないもので役満作ってるもん!
「レオおじちゃん、がんばって!」
美桜ちゃんはこの世界のことがわかってきたらしい。口調がくだけてきた。
つうかね。アニメで学習してるみたい。
例の製図おもちゃも念動力てきなもので動かして解いてるとか。
天才すぎてすごい!
俺はニッコリする。
「おじちゃん。が、がんばりゅ!」
サムズアップ。
次の瞬間、ぎゅんっと加速した。
発進しただけなのに!
「せ、制御不可能……あっれー……」
制御できる。
視覚だけじゃ数センチ先もわからないスピードなのにわかる。
まるで全身の神経が機体と一体化したかのような感覚。
「陛下! 出力が高すぎます! 実験中止……」
「大丈夫! 問題ない!」
す、すげえぞこれ。
自分の周り三百六十度。
全方向を感じることができる。
視覚にフィードバックする必要すらない。
……俺……武術の極地みたいなのを体感しちゃってる!
ありとあらゆるセンサー情報が皮膚感覚として感じられる。
全能感が……これはまずいな。
魔境ってやつかも。
瞑想で脳内麻薬ダバダバ出ちゃった状態を悟りと勘違いするやつ。
戦場でこんなのなったら敵に突っ込んで死ぬわ。
これは覚醒の一段階目と考えるべきだ。
つまり……この興奮を気合で平坦にする必要がある。
無だ……無の極地を目指す……。
そうだノイズのない無を目指……。
『みっちゃんみちみち……』
……オウ……ガッデム。
幼少期に皆が通るであろう、下ネタソングが脳内で勝手に再生された。
ニッコリ……。
「俺にギャグ空間を作るなってのが間違ってたんじゃああああああああああああああああ!」
俺の叫びが宇宙空間にこだました。
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