第七百話
まずは銀河帝国に乳母の選定を頼む。
俺はお願い。
嫁ちゃんは命令した。
信頼できる有力貴族……マルマくんに大野のおっさんにリリィに……。
あと嫁ちゃんのお母さんたち。
「後宮のおばちゃんたちは?」
「……そうか。女官もいるしの……って妾が会いに行けぬ!」
そもそも麻呂の姉妹はいい。
他のロリッ娘たちは公爵会の関係者が多い。
実家を恨んでるから俺たちの味方だけどね。
彼女たちは世間的には後宮に拘禁されてる設定なので、さすがに動かすのは難しい。
公爵会の関係者を乳母にしたら余計な憶測を呼ぶしな……。
中立派も軍閥も後宮にいるのは公爵会寄りの家だ。
触りたくない!
かといってクロノスは王国の歴史が浅いので、そもそも無理。
「まずはイソノの野郎を人柱にして……敵対派閥にわざと乳母をさせるか……」
「なんで本人の目の前で言うのかな?」
イソノと食堂で相談してたのである。
「だってフェアじゃないだろ!」
「とりあえず殴っていいか?」
「それは冗談にしてもさー。マルマくんじゃ若すぎてまとめきれない。うちらの実家はそんな偉くない。後宮は動かせない。大野のおっさんやリリィは論外、俺らが望んでも世間が許さないだろ」
「そりゃ荒くれ漁師と元海賊じゃな……マルマ様はビースト種による国の乗っ取りとかの余計な疑惑を生みかねないな……レオ、もしかしてこれ思ったより重要な案件じゃね?」
「俺もさっき気づいたとこ。どうしよおおおおおおおおおおおおおおぉ!」
かといってワンオーワンのゾーク軍団やケビンとこの女性型ゾークだけは絶対ダメだ。
銀河帝国全体に恨みの火種は燻ってる。
帝国民を完全勝利という幻想で騙しただけ。
勝利した側の義務として品位を保つことを強制したにすぎない。
ヘタに優遇すれば虐殺からの内戦に発展しかねない。
銀河帝国やクロノスは俺と嫁ちゃんが作り上げた幻想の上で平和を享受してるにすぎない。
ただ我らは王制国家。
幻想を語り継ぎ、歴史にしてしまうという裏技を使うことができる。
もちろん歴史家などは真実を暴くだろう。
いいのそれで。暴走を防ぐためなんだから。
俺はフリー素材。
自由に叩いてもらって結構。
恨み優先で泥沼の内戦するよりいいもんねー!
ということで、一番こういうのの界隈に詳しそうな人に相談。
「謀略にボクを巻き込むのは勘弁してくれないかな?」
レイモンドさんである。
「きゅーんきゅーん!」
「そもそもね! ボクは嫁に逃げられてるんだからね! それ知ってるよね!」
「もうレイモンドさんしかいないんです~!」
「ああああああ、もう! わかったから! でもボクの伝手じゃ、大学経由で打診するくらいしかできないからね!」
レイモンドさんが渋々引き受けてくれた。
嫁に逃げられて子どもと面会できないレイモンドさん。
でも知ってるもんね!
軍の弁護士として終戦にいたる各種文書を作成。
そのおかげで様々な大学で講師を頼まれてる。
そこで女子大生に言い寄られまくってるってのを。
そりゃさー、軍の事務方トップで、嫁ちゃんの事務参謀よ。
さらに俺は事務の師匠だって公言してる。
そんな人を取り込まない連中がいたら大間抜けですよ。
軍閥が手放すわけがない。女子大生も軍閥の子女ってわけ。
他にもちょうどいい年齢の女性秘書をつけられてるけど、それも取り込みの候補ってわけ。
前はアマダの野郎がターゲットだったけど、いまはレイモンドさんってわけ。
あれ……?
なんかいま、とんでもない重要人物をスルーしたような?
誰だ……?
「イソノ……アマダの野郎のとこでこの状態をどうにかしてくれそうな人っていたっけ?」
「セレネーちゃんは違うだろ。アマダの親も違うだろ」
「待って、いまなんて?」
「セレネーちゃんはちが……それだあああああああああああああああ!」
そうであった。
セレネーちゃんがいた!
セレネーちゃんに連絡。
「助けてセレネーちゃん!」
だいぶお腹が大きくなったセレネーちゃんが出る。
「どうしたんですか~?」
「乳母見つけないとヤバいヤバいプリーズ!」
「人間に理解できる言葉で喋れ」
ということで事情説明。
「つまり、派閥を刺激しないような人選と。軍閥は?」
「いいけど力が強くなりすぎて……」
「じゃあ中立派ですね。はいはい、ママさんネットワークに問い合わせましょう」
「ママさんネットワーク?」
「ええ、帝国貴族の奥様会です。派閥関係なく助け合いましょうって感じですね~」
「え、なにそれ聞いたことない」
「できたの最近ですし~。ほらゾーク戦争で旦那さんが亡くなった方が多いじゃないですか。それで急遽領地運営しなきゃいけなくなったけど専門教育受けてない人が多くて。領地経営に治安維持に保険に各種補助金と……帝都にいる貴族の相談に乗ってたらいつの間にか全国規模の巨大組織に……どうしてこうなった……」
さすが妖精さんの妹分。
セレネーちゃん有能すぎる。
ちょっと本気になったら銀河帝国滅ぼせるな。
アマダきゅん……帝国の未来は君の手にかかってる。
「レイモンドさんにも頼んだけどお願いしマッスル!」
「へいへーい。こちらからもレイモンドさんに連絡しますね。どうせ銀河帝国皇帝陛下にクロノス王の子どもなんですからかなりの人数がいるでしょ。出稼ぎ希望の奥様もたくさんいるんで」
ということでなんか複数の問題が一気に解決しそうな気配になってきた。
イソノが呆れる。
「お前……いつもながら物事がドミノ倒しみたいに連鎖していくのな……」
「俺だってわけわからんわ!」
ギャーギャー言いながら嫁ちゃんとクレアにも報告。
「いつもながら婿殿の引きがよすぎる……」
「すごすぎてわけがわからない……」
俺もわかんない。
もうね、なにがなんだか……。
「とにかく寡婦問題と妾たちの乳母問題が一気に解決しそうということじゃな! 考えても頭痛くなるだけじゃ。あー、クレア奥様会に銀河帝国から補助金出してやってくれ」
「了解。予算申請しとく」
「カミシログループからも協賛金出しとくわ」
「婿殿頼んだ……にしてもルナ! お前が黒幕か!?」
妖精さんが現われる。
「それが違うんですよ~。私もさっき知ったくらいですし」
「つまりルナの一族は存在するだけで国盗りに走るということじゃな……」
やはり最強は妖精さんなのではないだろうか。
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700話到達しましたー!




