第六百九十八話
そもそもさー。
次から次へと権威を見せびらかせて圧力かけてくるのはいいんだけどさ。
俺は王様なのよ。
なんで貸しも借りもない宗教に偉そうにされなきゃならんわけよ。
別に地元民に信仰を捨てろなんて言わない。
組織を法律で縛るだけだ。
俺への反対運動は好きにすればいい。
クロノスの法律で犯罪したら逮捕するだけだ。
そもそもさー、私有財産制じゃないのに! なんで! 僧侶が! こんなに金持ってるんだよ!
聞いてみたら浄財と称して税金勝手に取ってたのね!
ある程度はいいんだよ。
墓守してるんだから……墓の管理だって金かかるんだから。
クロノスだって王都の国営墓地の費用は税金で賄ってるし。
……え、墓の管理してないの?
遺体はゴミ処理場で焼却処分?
結婚式は?
初夜税取ってた?
クロノスに併合したんですぐにやめさせた?
すでに結婚式場と墓地の整備してる?
……パーシオン教、なんのために存在するの? いや本気で。
え? すでにクロノス教やゲーミング仏教や座敷童ちゃんの神社に改宗が相次いでる?
パーシオン教ちゃん……恨み買いすぎだろが!
なんかおかしいなと思ってたらパーシオン教の寺院への襲撃が相次ぐ。
これがモヒカンヒャッハー軍団だったら軍を出して容赦なく鎮圧してた。
だけど実態は『家族の遺体を焼却処分された』、『初夜税払わなくて嫁を殺された』など住民の積年の恨みによる襲撃である。
軍と警察で被害届出してもらって帰ってもらうようにお願いするしかない。
首都はこんな感じ。
さらに暴動は地方の惑星にまで広がった。
今日もまた寺院への襲撃が相次ぐ。
人手が足りなくなり王様の俺までかり出される。
市民のリーダーは五十代の男だった。
「あいつら人間じゃねえ! 三十年前俺の、俺の嫁を目の前で殺して焼き払いやがった! ぶち殺してやる!」
もうね、こんなの止められるかよ。
むしろ俺も仲間に入れて欲しくなる。
みんなー坊主どもぶっ殺そうぜ!
と、個人的には同情的なんだけど王様的にはそうもいかない。
メディアに中継されてるしね。
俺は拡声器持って大声を出す。
「はーいストップ。気持ちはわかる。クロノス警察が捜査するから一度やめて。警察が逮捕できなかったり、裁判所が生ぬるい対応したら、ぶち殺していいから。そうだよね? クロノス警察のみなしゃん♪」
俺は笑顔で言った。
ほぼ死刑判決だけどね。
でもこれは公平だ。
まだなにもやってない若い僧侶は勘弁してやれってこと。
すでに犯罪やってたら刑務所ぶち込むけどね。
僧侶だけの開拓地送りでもいいや。
とにかく犯罪者には地獄見せろ。いいな!
「ぎょ、御意! た、逮捕ぉッ!」
坊主どもが逮捕されていく。
もう知らん。
もうねパーシオン全土が混乱中。
権力へ反抗する暴動に寺院への略奪。
周辺住民には鎮圧というよりお願いをしまくる。
もちろん人を殺したら逮捕だ。
なんとなくゼン神族の遅延戦術かなって思い始めてきた。
焦ったら負けである。
警察の本体が来たので、いったんクロノスに戻る。
勝手知ったるクロノスの宮殿!
おうちだー!
引っ越しの多い王様業であるが、やはりおうちが最強である。
クロノスの長屋も悪くなかったが嫁ちゃんがいるのでこっちが一番!
それか銀河帝国のマンション!
さーて飯を作ろうかなって思ったらクロノスの宮殿で晩餐会。
この前のやったパーシオンの総書記宮殿での晩餐会じゃない。
あそこはなんか嫌い。建て替えたいと思う。
本拠地での晩餐会だ。
戦勝記念……というには戦争してないのでレプシトール、パーシオンの併合祝賀会である。
クロノス中から知事やら他国の外交官、財界人などが招待される。
別に参加しなくてもペナルティーなし。
でも商談の会場だから特産物持って来た方がいいよって感じだ。
各地の農産物のブースを設置し……晩餐会?
ほぼ見本市。
ま、いいや。
食事も各地の特産物を提供。
各テーブルに『惑星~産』と書いたカードと担当者の連絡先が書かれたカードが置いてある。
お酒なんかもたくさんある。
各地のお酒を大量に買い付けて提供してる。
……見本市だよね?
さらに別の大きな会場では産業機械やロボットなどの工業の……やっぱり見本市じゃね?
宮殿近くのイベント会場では自動車の見本市も……。
クロノスや銀河帝国の企業の社員が忙しいそうに行き来してる。
晩餐会とは名ばかりの本気の商談スペースが展開される。
商談に国王や政治家はあまり関係ないので、テーブルで嫁ちゃんたちと食事。
立食パーティーで肉のパティなどを食べつつ、「帰ったら何作る」とどうでもいい話をしてた。
「うむ決めた。婿殿」
「どうしたん? 夜食、食べたいもの決まった?」
「違う! タイミングをうかがったのじゃ!」
「なんのタイミング?」
「赤ちゃん。どうせゼン神族も動けんじゃろ」
「それはヨイコトデス。おいどん! うれしいです!」
はいハグ。
よっしゃー!
よし、こちらも遅延戦術だ。
パーシオンの平定に時間かかってるように見せてゼン神族を安心させよう。
なんとても言うがいい。
俺は家族が一番である。
全力で遅延してくれる。
ローザリアも同じだ。
いや宇宙港建設の遅延とかじゃない。
外に想定外に時間がかかってるように見せるだけだ。
いいんだよ!
そんなもんで!
作業員の給料出しさえすれば!
クックック……俺を甘く見たなゼン神族どもめ……。
俺の本気を見せてくれる!
本気の遅延戦術を見せてくれる!
「そうねー。私もそろそろ子ども欲しいからねえ」
悪だくみしてるとクレアさんにも言われる。
「わかんねえや。テキトーに頼むわ」
メリッサは他人事。
「あ、俺からもさっさと子ども作れって頼んでいい?」
「なんだイソノ。お前に関係ねえだろ」
「違います~。謀反企んでるだろって言われるから、さっさと子ども作ってほしいんですぅ! うちの子は血で血を洗う政争とかさせたくないんですぅ~」
あー、うん。
世間からすれば王位の簒奪者候補に見えるのね。
こんなに仲良しなのに!
イソノ家なんてそのうち子孫が王の嫁か婿になるので焦る必要ないんだけどね!
エディのとこも。
イソノ家が乗っ取りかけるときなんて、時の王がバカだったとか忠臣の大粛清やろうとしたとかだよね。
王がバカなら麻呂みたいに殺されてもしかたないよね。
そりゃうちの家系が断絶するのは悲しいけど、麻呂レベルならしかたない。
庶民の家だって麻呂レベルの子孫が出ちゃったら末代になるし。
うーん、子ども作ろう!
胸に決意をこめながら俺は生ハムを食べるのだった。
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