第六百九十七話
パーシオン教についてクロノスの研究者に話を聞く。
「パーシオン教はあまり世俗化されておりません」
世俗化ってのは宗教が科学や合理的価値観に移行してるって意味だ。
パーシオン教は『社会の一員になりましょう』って方の宗教だ。
ただしその場合の社会とは『パーシオン教の定める社会』ってだけだ。
だから家庭を持て、子どもを作れ、仕事しろという圧力が強い。
圧力というかほぼ強制だな。
そりゃねー、僧侶というなにも生産しない職業を食わせるためには人口が多い方がいい。
政治家や王様もそうだけどね。
なお学者に関しては見解が分かれる。
ただ社会の世俗化が行きすぎると、学者の一部が僧侶化して社会を支配しようとする怪現象がある。
なんでも権力の与えすぎはよくないねって話だ。
副業の王様業だって法律に縛られてる。
僧侶化してない。ヨシ!
軍は軍でしか使わない物品が必要なので、トータルでめっちゃ生産性が高い。
俺は本業、軍人なのでセーフ、セーフ。
軍も法律の支配下だ。
よし、俺は許されてる!
とにかくパーシオンは法律より宗教の方が上とのことである。
「それって法治じゃなくて人治とか徳治じゃね?」って思うのは、俺たちがアジア系の子孫だからだろう。
なんだかんだで社会に諸子百家やら西洋哲学の影響があるわけよ。
俺たちが正しいと思ってることが全宇宙に共通ではないのだ。
とにかく俺たちから見たパーシオン教はやべえカルト宗教だろう。
無意識に喧嘩売らないように気をつけようっと。
近衛隊やクロノス駐留軍を率いて教主へ訪問。
大聖堂とかいう場所にご案内。
教主としてるのは固有名詞で翻訳が不可能だったため。
王様の格好……と言うにはクロノス王国は歴史が浅い。
和服はレプシトール人のパチモノ扱いされる。
なのでクロノス軍の礼服で訪問する。
これは事前にパーシオン教に確認してある。
これで「うちは戦争反対なんですぅ~。軍服はやめてくださ~い」とか言いだしたら二度と会ってやんねえ。
どさくさ紛れに摘発してくれる。
お前らが国の金汚職してるのはわかってんだよ!
影響が評価できねえから泳がせてるだけで。
というわけで教主と対談。
教主の爺様は笑顔だ。
こちらも笑顔だ。
本来ならひざまずいて手を差し出すのが礼儀らしい。
だが俺は魔改造された神道&仏教徒。それはしない。
お前らの信者じゃねえ。
それでヘソ曲げるならそれでもいい。
なんでもかんでも相手を要求を飲めばいいわけではない。
教主の爺様は金糸の入った服。
下品さはない。
国のトップに会うからと最上位の礼服を着たって感じだ。
今のところギャグ要素がない。完全に俺と相性が悪い。
レプシトールって俺と相性よかったんだな……。
「クロノス王陛下。セルゲイにございます」
「セルゲイ教主。本日は会談の場を用意してくれたこと感謝する」
俺は珍しく偉そうに言った。
「こちらこそありがたく存じます」
ニコ。
あーあ、いきなり疲れてきた。
ダメだ。空気壊したい。
まずはメディアの入らない会談。
「最初に言うが、俺にいなくなって欲しいならリーダーを決めろ。ゼン神族の影響にない。ゼン神族の影響にない人間からな。やつらの嫌がらせにはうんざりだ。」
「それは不可能です。なぜなら我らこそがゼン神族のしもべ」
あら……いきなりの告白だわ。
あたい、会話の主導権取られちゃったわ……。
「はいぃッ?」
「ゼン神族は我らを作った創造神です。ええ、ジェスター、ローザリアでは道化。あなたがたもです」
自信満々で言った教主。
だけど俺はもう結論を出してる。
「たぶんそれ違うぞ」
「え?」
「ゼン神族が俺たちを捕まえて実験してたのは真実。俺たちを弾圧してたのも真実。銀河帝国じゃ超能力者狩りまでしてた。それにゼン神族に作られたゾークは超能力者をゾークに変える技術を持っていた。超能力者を作ってたらジェスターが生まれたんじゃない。逆だ。人類からジェスターっていう変異種が生まれて、ゼン神族の実験の結果、超能力者が生まれた。因果関係がすべて逆だ」
「は、はは。な、なにを……?」
「簡単な話だ。ゼン神族っていう人類の天敵がいて、それに対抗できるように人類が進化した。正確に言うとジェスター因子を持ってるものは生き残りやすかった。要するに環境変異か突然変異かはわからないけど、変異種が生き残ったってわけ」
つまりさ、自分が産み出したものに滅ぼされる。フランケンシュタインのシナリオじゃない。
ある日発生したザリガニにビビリ散らかしてるってわけ。
そりゃ恐ろしいだろうけどね。
自分たちこそが人類の天敵だと思ってたら、自分たちの天敵が知らない間に生まれたのだから。
ただ天敵だけど、ジェスターはゼン神族を取って食うわけじゃないけどね。
ジェスターはゼン神族を殺す運命にはない。
ゼン神族はジェスターを殺さなきゃって焦ってるけどね。
つまり俺たちの方が有利なんだわ。
「は、はは……神に仇なす悪魔め……」
「悪魔でもなんでもいいって。そういうのやめてくれないかな。いいかげんうんざりなんだ」
俺には余裕がある。
これが王というものだろうか。
「俺はゼン神族なんてどうでもいい。俺の仕事は国民の世話をすること。本業は軍人もだいたい同じだわな。ちょっかいかけてこなければ共存できると思うよ」
「は、はは。こ、この!」
「怒るなよ。よく聞け。お前らだな。屍食鬼ばら撒いたの。レプシトールに感染させて、太極国とクロノスへ感染が広がり……おそらく本命はラターニアだ。いまのクロノスみたいな大国を作ってゼン神族に差し出すのが目的だった」
「だとしたらどうする!」
「なにも。俺は法に縛られた存在だ。ただ犯罪者は逮捕する。証拠があればね」
「く、くくく……我らを倒せるとは思わぬことだ!」
「倒さないよ」
「は?」
教主が間抜けヅラを晒した。
「あんたらをそのままの状態で世俗化する。あんたと会う前にもう準備は終わらせてる」
「な、なにを……」
大聖堂の奥から高位の僧侶たちがやって来る。
「教主様。代替わりのご準備を」
「な、なにを……」
「もう時代は変わったのです」
「神は! 神を裏切るのか!」
「いいえ。ゼン神族こそ神を騙る悪魔です」
要するにそういうこと。
戦う前に勝負は終わってるって孫子も言ってた。
切り崩すのは簡単だったよ。
比較的まともな人を上に立てるだけ。
逮捕と昇進。飴と鞭でね。
「じゃ、あとで裁判所でね~」
「殺してやる! この悪魔め!」
警察が来て教主を逮捕する。
教主を助けるために何人が動くかな?
あーあ、独裁者ムーブだよ。
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