第六百九十六話
フェンが遺体で発見された。
ブチ切れパーシオン人に始末されたのかなって思ったけど、二十四時間体制で監視してたのに殺されたようだ。
ホテルで後ろから剃刀でのどを斬られてた。
他殺しかありえないそうである。
捜査したクロノスの警察は信用できる。
一方、警察含めたパーシオン軍は使い物にならない。
行進すら満足にできない集団である。
配給制社会の闇を見た気分である。
冗談にならないレベルで士気が低い。
監視してたのはクロノスの警察だ。
こちらは信用できる。
外でダラダラウンコ座りして談笑してたのはパーシオンの刑事だ。
仲間の刑事と酒も飲んでたって。アル中みたい。
俺が直々に殴ろうかなって思ったけど、すでにクロノス警察がボコボコにしたそうな。
暴力? ハラスメント? 知らない言葉だなあ!
命がかかってる現場仕事でなめたことやったらそりゃ殴るわ。
……それにしても俺の目が届かないところは相変わらず地獄である。
それにしてもこれが大きな謀略のはじまりなんて俺まだ気づいてなかった。
パーシオンの首都星、その首都でとある人物が通勤していた。
パーシオン警察の上から6番目くらいの階級。
マルセル少佐が自分の務める首都警察へ向かうため地下鉄に乗っていた。
これらは防犯カメラの映像からの推測だけどね。
その日は雨でマルセルは傘を持ってた。
マルセルはいつものように階段を降りて地下鉄の駅に向かう。
パーシオンの首都にある駅はどこも無駄に豪華だ。
外交用に見せつける用なんだって!
無駄に豪華な階段を少し降りるとショッピングセンターがあって、そこにホームに降りるエスカレーターがある。
ショッピングセンターはガワだけ。
どこもガラガラだ。
レプシトールのブランドショップなどがあるが、どの客層を想定してるのかは謎だ。
エスカレーターを降りると独裁国家にありがちな美しい駅が現われる。
ホームにはパーシオンの作曲家による伝統的な曲が流れる。
人が集まって列車を待っている。
その中にコートを着た男がいた。
その男はマルセルの後ろを通り過ぎた瞬間、傘の先端をマルセルの足に当てた。
次の瞬間、マルセルが苦しみだし倒れた。
傘に毒が塗られていたようだ。
数分後、やって来た救急隊によって病院へ搬送。
死亡が確認された。
これがマルセル暗殺事件である。
フェンは見せしめ感あるけど、マルセルは純粋に殺すのが目的だろう。
真相は何一つわからない。
マルセル少佐は四十代だが独身。
パーシオンの公務員は上司の親戚などと結婚することが多い。
そうやって親戚関係で派閥を形成するのが普通だ。
マルセル少佐に汚職の疑惑はない。
派閥の外にいただったせいだろう。
優秀な人なんだろうけど、パーシオン社会じゃ少佐がゴールだ。
麻呂がいたころの銀河帝国と似たような感じ。
だから逆に謎だよね。
暗殺する理由がどこにある?
そりゃドラマなら追ってる事件が原因だろう。
でも少佐って管理職だからね。
追ってる事件があったらゴリゴリに記録が残ってるはずだ。
記録を見ても経済犯罪、パーシオンだと不正蓄財の監視。
つまり……不正蓄財が当たり前の社会においては、大きな派閥相手に喧嘩売ったバカの始末がお仕事だ。
別に暗殺する必要はない。
派閥から恨みを買って殺された……はずないか。
こういうのが専門だ。
各派閥にお伺いを立てて調整してから仕事をするだろう。
むしろマルセル少佐の仕事の本質は各派閥の利益の調整だろう。
『マルセルくんが頼むのだから譲歩してやろう』
『XXのいとこは釈放してやれ。その代わりに……』
なんて感じの裏仕事。
なんか俺と似てるようで決定的に違う感じだな……。
それが殺されてしまった。
「ねえねえ妖精さん。なんでマルセル少佐殺されたと思う?」
「データベース見てますけどわかりません」
ですよねー。
なので視点を変えて各派閥を見る。
もう解体後だけどね。
でも長年の婚姻政策でどの派閥も親戚だ。
実質貴族制と変わらないね。
銀河帝国やクロノスの方が領地に紐付けで、領地とともに滅びるさだめって考えるとまだマシなような気がする。
民主制って社会制度のメンテナンス問題が常に横たわるよね。
そもそもこの間の代理人、フェンも殺す必要がない。
むしろこちらに処分させて難癖つけてくる方がゼン神族に有利だ。
わからん……なにもわからん。
結局わからん。
そりゃパーシオン国内にゼン神族のなんらかのコミュニティーがあるのはわかってる。
だけど尻尾をつかめない。
あいつら隠れるのうますぎるだろ!
レプシトールのニンジャ隊ががんばってくれてる。
そんなこんなで一ヵ月ちょい。
坊主だった頭がいつもの髪型に戻ったころ。
美容室で髪を整えるので少し長くなるまで待ってた。
後ろが伸びたので縛ってる状態だ。
すでに五件の殺人事件が発生してた。
どれもがパーシオンの政府関係者と俺に近づこうとした詐欺師ども。
政府関係者は俺の怒りを買って放逐された人じゃない。
むしろ腐敗した派閥から距離を置いて、派閥の調整をしてた人だ。
それで~、わからなすぎるので宮殿を出てパーシオンに借りた倉庫に向かう。
カミシログループの持ち物だ。
一角に部屋を作ってある。
俺がいろんなところに隠してあるバイクと同じ。
俺以外も使えるようにしておけば私物化にならない。
ここだって普通に会議室として使われてる。
バイクだってエージェント用の緊急用車両としてちゃんと軍が電子鍵を管理してる。
ただ俺が電子錠の合鍵を持ってるだけだ。
ここをちゃんと普通の手段で申請出して借りたって訳。
ロッカーは月極で借りてる。
ここに考えたいとき用のノートなんかを入れてる。
なお倉庫の外にはカミシログループのレストランやトレーニングジムをわざわざ作ったので、近衛隊を順番に休憩させてる。
俺は電子ノートに関係者の名前を書いていく。
書いたノートはリアルタイムで俺の端末に転送される。
まー、情報がまとめきらずにグジャグジャなんですがね。
「……わからん」
すると妖精さんに突っ込まれる。
「すでに警察もやってるでしょが」
「でもさー、なんでわざわざ殺すん? いまって派閥が解体されて息してないじゃん。そんな状態じゃ、この人たち閑職もいいとこでさ、殺してもなにもいいことないよ」
「わかりませんよ~。共通点なにかないんですか?」
「パーシオンの教会に通ってたくらい」
パーシオンの教会はクロノス教の分派みたいなものだ。
教義がだいたい一緒。
日系人特有の神社と寺の両方みたいなテキトーな宗教観では見分けはつかない。
たいていの宗教は家族を大事にして隣人と仲良くして社会の一員になれっていうものだ。
あとは縛りプレイの違いだろうか。
たまに「社会を破壊しろ! 人を殺せ!」っていう宗教が現われるけど、社会の乗っ取りまでは成功してもその後の発展は望めない。
パーシオン教も「社会の一員になりましょう」って方の宗教だ。
ここに通ってたからといって危険思想とは限らない。
「なんだろうね? うーん、そうだ! 一回行ってみよう国王として堂々と」
ガン無視してたわけじゃないんだけど、パーシオン教側に会おうという意思がなかったのでスルーしてた。
一回、聞いてみるか。
そしたら共同事業とか文化財の修復目的で寝技に持ち込んで影響力を行使できるようにしようっと。
「……また悪いこと考えてる」
カンガエテナイヨ。
カワゴン、イイヤツ。
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