第六百九十一話
パーシオン陸軍元中将に会いに行く。
裁判が必要なのでいまはクロノス軍の駐留基地に作った拘置所暮らし。
うやむやにしたのになんで拘置所いるのよって思うかもしれない。
その答えは簡単だ。
口封じの暗殺を防ぐためだ。
だからちゃんとクロノス王である俺の侍従や親衛隊をつけて快適に過ごしてもらってる。
元中将はプロレスの中継を見てた。
椅子に座ってかなり熱心に見てた。
俺が入ってきても気づかない。
「おーい、おっちゃん」
ようやく気づいてくれた。
「こ、国王様。失礼いたしました!」
「プロレスお好きなんですか?」
「え、ええ……とても」
パーシオン人はモータースポーツよりこういうのの方が好きかもしれない。
「それで判決ですが」
「は、はあ……処刑の日程ですね」
中将はうつむいた。
なに言ってんの?
処刑なんかするわけないじゃん。
もうその段階はとっくにすぎてるの。
「中将には職務に復帰していただきます。というかリストの連中どころか大粛清に発展したので人手が足りません」
「え? いまなんと?」
「チビどもを養うために配ってた予算を好き勝手食い散らかしたバカがいましてね。もう殺すしかなくなっちゃったんですよ」
顔を上げた中将がビクッとした。
おっと顔が鬼になってた。
スマイルスマイル。
「ちょっと吸うくらいなら許してやる金と、手をつけちゃいけない金との区別もつかないんですかね? この国のアホどもは」
ガタガタガタと中将のひざが震えた。
俺はうっすらほほ笑んでた。
キレると笑うしかなくなるよね。
「中将。手伝ってもらいますよ。拒否権はありません」
「は、はい……かしこまり……ました」
ガタガタ震えてる。
「それとパーシオンですが、クロノスに併合します。現在の総書記含めて首脳陣片っ端から逮捕しましたので。もうクロノスの法律を押しつけます。拒否権はありません。移行期間もありません」
「は……はい……」
「信用できる人材を軍からピックアップしてください」
「か、かしこまりました」
「そうだ! 中将、いまからパーシオン軍元帥に昇格です」
「そ、そんな!」
懇願するような声だったが無視。
「おめでとうございます!」
それからは素早かった。
都会で昼間から酒飲んでる若者は片っ端から徴兵。
頭いいけど持て余してる無職も軍に入れる。
だって粛清したから人足りないんだもん。
自称ミュージシャンだのアーティストだのも軍へ。
安心しろ、君らの仕事は広報部に山ほどある。
これからプロパガンダを流しまくるのだ!
なあに俺らはプロパガンダの達人だ。
市民がキレるかなと思ったら逆に喜ばれた。
なぜだ!?
それと同時にもうね、上級国民の層を片っ端から検挙。
なんでチビどものメシ代狙うのよ!
弱いやつは死ね。
ハッハー!
じゃあ俺がてめえら蹂躙してもいいよな!
クレアも本気モードで捕まえまくり。
あー……住民の皆様。
わけのわからん密告とかもういらねえッス。
監視?
しないよ。
妖精さんのコピーちゃんたちが強力監視するから。
あのね、俺は俺への悪口とかはどうでもいいのよ。
嫁ちゃんだって悪口くらいじゃ怒らない。
さすがに俺に面と向かって嫁ちゃんの悪口言ったら骨の二、三本は覚悟してもらうけど。
とにかく俺はフリー素材。それでいい。
監視なんてネットにある書類だけでいいの。
会計分析すりゃたいていのことが透けて見えるわけで。
コピーちゃんたちも無責任に作り出してるわけじゃない。
あきたら人間やるってさ。
ま、人数考えたら別に困らんな。
その辺は嫁ちゃんに丸投げで。
次は因習村の焼却だ。
もうね、地方の権力者を逮捕しまくり。
クロノス法押しつけた効果がこれね。
ある日突然、いままで許されてた狼藉が違法になる恐怖。
泣け! 叫べ! 許しを請え!
なにもさー、借りた農地に果樹植えた途端に地主が「寄こせ!」って言い出すとか。
勝手な徴税はじめるとか……。
ムカつくけどそういうのは民事で解決してもらうとして……。
あ、はい。弁護士事務所に人が殺到?
助けてレイモンドさん!
で、アホは強制移住!
そもそもお前ら私有財産制じゃなかっただろ!
なに勝手に地主気取ってんだよクソボケが!
はいはい田分け、田分け。畑も分けちゃう。
集団農場は法人化して社員にする。
集団農場管理してた国営公社?
解体するに決まってんじゃないですか!
ヒャッハー!
大丈夫大丈夫。生け贄は用意済み。
国営公社の役員さんたち。
公社社員の給料を勝手に手数料作って横領っと。
バカだねー!
業者選定で賄賂もらってお小遣い稼ぐとか、自分の住んでる土地に開発計画出して立ち退き料稼ぐ程度だったら見逃してやったのに!
飲み会の金を少し搾取するくらいも許してやった。少しならね!
何割も盗るな! 配給物資を勝手に有料にするな!
ということで逮捕。開拓惑星送り。
処刑してもいいけど面倒だ。
異世界転生生活をしてもらおう。
自分たちで文明再建してね!
惑星は禁足地に指定。
外と通信できる自然大好き系の代官を置いて放置。
「そ、それは処刑と同じ……では?」
中将あらため元帥がドン引きしてる。
「劣化しないように処理した紙に印刷した各種工具の設計図やら技術書置いてきましたよ。一応、惑星脱出までの技術資料データも代官のところにありますし。代官とは銀河帝国時間で三百日に一度は面会しますし」
「……それを読めとおっしゃるのですか?」
「ええ、私は十五歳から軍でやってましたが?」
中将あらため元帥がため息をついた。
「こ、工兵はいかがいたしますか?」
工兵も横領しまくり。
ま、偉い人でもなければ致命的な横領はしてないんだけどね。
ただガキの食事に手をつけたやつは許さない。
「やだー、貴重なエンジニアを殺すわけないじゃないですか! 死ぬまでこき使うだけです」
こっちはローザリアとの航路確立のための宇宙港の建設とかに派遣。
大丈夫大丈夫、全体のプロジェクト規模が大きすぎて破壊工作なんて無駄だから!
はっはっは!
船外作業に励みたまえ!
こうして容赦なくハードランディングしまくってやった。
すると『国王陛下万歳!』との声が大きくなってきた。
首都星だけじゃない。
パーシオンの惑星各地から称賛の声が上がった。
「征服王すぎる……」
シャーロットにまで言われる。
「……パーシオンを飼い慣らしたなんて。もはや神話の世界です」
現在、土下座して頼み込んで秘書をやってるもらってるポリーナさんにも言われた。
俺はしばらくふて寝しようと思う。




