第六百八十八話
食堂でも飯を食う。
……ふっ。
……足りない。
食べる前からすでに足りない。
パサパサチキンにマッシュポテトにインゲンのソテー。
おっかしいなあ?
軍の食事って予算増やしたよな?
ちなみにスペース・レイダースの食堂では俺を監視する兵が配置されてる。
俺に料理をさせないためだ。
ぐ……。
でもなんか気になるな。
だって予算考えるとこの食事じゃないと思うのよ~。
具体的に言うとここにカレーライスつけられるくらい。
そりゃカレーの日じゃないけどさ。
あるじゃん、炒飯とか牛丼とか。
たまたま今日はハズレの日なのかな?
「ヒューマさん!」
「ヒューマ教官だ! 二等兵!」
「それよりも基地の食事っていつもこうなんですか?」
「……お前、絶対に料理するなよ。腹減ってんなら栄養バーでも食え」
「いやそうじゃなくて! いつもこうなんですか!?」
「ここじゃいつもこうだぞ」
「えええええええええええ……」
「しかたねえだろ。パーシオンは経済崩壊してるんだからよ。ほら栄養バーやるから」
ヒューマさんが栄養バーを渡してくれた。
食べるけどさ!
ドライフルーツ練り込んであるやつ!
それにしても当たり前になってて話が通じない!
これが現場と本社幹部の溝よ……。
「妖精さん!」
「妖精さんは定休日でーす」
「いいから! 基地の食事がおかしいんだって」
「まーたそういうこと言って! いいですか! 芋焼いちゃダメですよ!」
「いやだから見て!」
「普通の食事じゃないですか!」
「量が少なすぎるの!」
「だからレオくん芋焼いちゃだめだって」
「違うの! 銀河帝国もクロノスも軍の経費は会計マジックで実質タダなの! だから食事の予算を増やしたのに反映されてないの!」
軍は国家最大クラスの消費装置だ。
しかも消費する品目がべらぼうに多い!
ここで消費しまくればヘタな補助金より経済効果が高い。
インフラ整備と軍をうまく活用すれば理論上は不況対策に失業対策すらできる。
つまり飯代ケチる必要なんかないのだ。
「……え?」
「ほらこのマッシュポテト! 一番安いヤツ! うちじゃ買ってないはず!」
原価おじさんになった俺が吠える。
「どうしてこの状態でわかるんです?」
「におい!」
「えー……」
「肉はパサパサ! いや胸肉でこういう料理なんだけど! それでもかなり下のランクのヤツ! それに量が少ない! 最低でも三千キロカロリーとれるようになってるはず! っていうか、おかわりできる予算つけたもん! 野菜も少なすぎる! 俺も嫁ちゃんも野菜は現地のを大量に買うように命じてる! もっとたくさんあるはず!」
「あっれー……?」
「ヒューマさん! 俺目隠しされて運ばれたからよくわかんないんだけど、ここパーシオンですよね!?」
「え、ええ。パーシオンですが……って二等兵! いまは教官!」
「俺はいま王様として物言ってるの! 横領だ……いや横領されても痛くないように多めに予算配分してるんだけどさ……誰だボケ!」
こんなん二等兵やらなきゃ気がつかなかったわ!
だって俺たち高級士官の飯は宮殿の予算から出てるもの。
作戦中は手が空いてる誰かが作るし。だいたい俺かニーナさんだけど!
「べ、別な意味での原価おじさんがいる……」
原価オジですがなにか?
予算からなにもかも関わってる原価オジですがなにか?
「いいから! 妖精さん嫁ちゃん出して!」
妖精さんに仲介してもらって嫁ちゃんにつないでもらう。
「なんじゃ婿殿どの! ハラ減って芋焼いたら怒るからな!」
みんな俺が芋焼くと思ってる……。
「軍の予算が横領されてる!」
「……お、おう?」
「食事内容がひどすぎる! カロリーと栄養素が目標に届いてない!」
「な……」
「ニンジャ隊は!?」
「別の施設でバラバラに二等兵やらせてるが……」
「すぐに集めて調べさせて。ウケケケケ! どんなにうまくやろうとも、原価と納入金額、予算全体、食材の味まで把握してる俺はごまかせねえぞ!」
「ヒューマ……」
「は! 皇帝陛下!」
「婿殿をサポートしてやってくれ。食い物の恨みで人を殺しかねん」
「はっ……」
さーて俺のメシを盗ったアホは誰かな?
ぶち殺してくれる!
俺たちスペース・レイダースは基地の主計部に乗り込む。
俺はドアを某市長の如きフライングボディプレスで華麗に破壊。
中に押し入る。
「俺のメシ奪ったヤツはどこじゃあああああああああああああああ!」
「いま壊したドアは弁償してもらいますからね!」
「るせー! 俺は腹減ってんじゃあああああああああああああああ!」
「どうどう、はい栄養バー」
本日二本目の栄養バー。
食べてから主計官の胸倉をつかむ。
「食事の会計書類出せ!」
「ひゃ、ひゃい!」
調べていくと書類に問題なし。
野菜までごまかしてるから基地の問題だと思ったけど違うみたい。
「ヒューマさん、こりゃまずい」
「どうしたんですかい?」
「もっと上の問題だ! スペース・レイダースの諸君……クロノス国王から残念なお知らせがある」
俺は涙を拭う。
「パーシオンのどこかに俺らのメシを奪ったやつがいる」
隊員も少ないと思ってはいたようだ。
おかしいおかしいとは思ってた。
軍がいきなりクーデター起こすわ、住民は非協力的だわ、なんか雇われ店長なのに侵略者扱いされてるわ。
掠め取って俺に責任なすり付けてやがったな!
こりゃ……勝手に徴税してるヤツまでいるぞ。
「あは! あはははははははは! なめやがって! 野郎どもぶち殺すぞ!」
「魔王が目覚めてしまった……」
妖精さんがひどいことを口走る。
俺のどこが魔王じゃい!
「あーあ……闇堕ちした。だから婿殿のメシには気をつけろと……」
闇堕ちじゃないもん!
上様になっただけだもん!
「俺は焼き芋の監視だけでいいって言われてたんですよ! 話が違う!」
ヒューマさんがぼやく。
「カミシログループにも調査を命令! ふははははははは! ふははははは! ふはははははー!」
これさー、たぶん、児童の栄養予算とかもチューチュー吸われてるでしょ。
いや吸うくらいならいいの!
さんざん食べ散らかして余りだけ分配してるでしょ!
「我らスペース・レイダースの名誉にかけて!」
「今日入隊したばかりの二等兵なのに!」
ヒューマさんのツッコミがむなしく響く。
宇宙怪獣、そして民からメシを奪う悪鬼の如き所業!
けっして許してはおけぬ。
カワゴンは怒りに震えるのだった。
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