第六百八十五話
敵の戦車部隊が進軍した。
もうなー。
なんとなくわかってたことではある。
パーシオンは見かけ上の経済規模だけは大きいんだけど、国民がアレなので侵略してもうまみがない。
これわざとだろうな。
こういう防衛をしてたわけよ。
なにもないから強盗に入られてもダメージないってわけ。
だから戦略自体が何世代も前のもの。
とくに俺らが来てからの戦略に対応してない。
ドローン戦略は当然あるんだけど、方向性が違う。
俺らはゾーク戦争から先は相性問題を考えた戦略に移行してる。
要するにさー、喧嘩でも武術でも同じなんだけど、自分の得意な戦術を相手に押しつけた方が勝ちなのね。
逆に言えば一国が持つ戦術ってのはそんなに幅が広くないわけ。
予算の都合もあるからね。
で、パーシオンは高度な戦車戦術なわけ。
戦術的にどうなの?
これはみんな疑問に思うかもしれない。
これは民族性やら……あとは予算の問題が大きく関わる。
要するにドローンオペレーターを育てるにも教育資金いるだろって話。
組み立てもノウハウあるしね。
「なんでできないのぉ!?」って思うかもしれないけど、死ぬほど難しいことの一つである。
あれよ……働いてる飲食店が不合理なやり方してるから独立して最強の飲食店作りたい。
だけど現実は銀河帝国でも十年で九割が倒産だ。
俺、王様になって各国の軍事を勉強して専門家に話聞いたり軽いレポート書いたりしてるけどさー。
勉強すればするほど……「うん、何もわからん」ってなる。
それが国家運営とか法律とか経済まで「何もわからん」ってなる。
やればやるほど……何もわからん。
何もわからんのはパーシオンも同じだろう事だけはわかる。
クレアが率いるクロノス駐留軍はパーシオン戦車部隊に対して容赦なくドローン攻撃をした。
ジャンケンの相性で勝ちだ。
そりゃさ、パーシオンも対空砲は大量に持ってる。
だけど俺たちの技術はその上を行ってる。
蜘蛛型ドローンで近づき走行不能にしてしまえばいい。
蜘蛛型なんて言ってるけど、飛ぶ方だって進化した。
蚊の大きさまで小型化して爆発とともに炎上する。
もともと暗殺用ではあるがもっと楽しい使い方はある。
駐留してるテントの物資を爆破。
エネルギーパックや実弾の弾薬やら食料ごと焼き払う。
ここで止まってくれれば終わりだ。
後方破壊してあきらめてくれれば辞職で終わらせてやれる。
でもパーシオンは降参はしなかった。
相手に降参を乞うのは愚かの極みだろう。
だがそれでも俺たちは降参して欲しかった。
だけど敵は……。
パーシオン軍は最後まであきらめなかった。
『ある程度武勇を見せつけないと終戦交渉が不利になる』
『戦わないと部族や氏族のメンツが立たたず干される』
『俺たちが降伏を望んでるから遅延行為で足元を見てる』
そういう理解の及ぶ話ではなかった。
彼らは時代とともに滅ぶことを望んでいた。
彼らもわかっていたのだ。
自分たちはもう後の世に必要のない人間だと。
クレアたちは素早かった。
中将から提出してもらったリストからすぐに摘発。
国営企業の重役。
国政政治家。
軍の高官を次々逮捕していく。
惑星の知事や都市の市長も容赦なく逮捕していく。
それはまさに粛清だった。
中将たちは敗走を続けながら後退していった。
最後に頼るのは俺の敵対派閥の都市である。
そりゃさー、太極国だったら爆撃して焼け野原にしてただろう。
中将もそれを望んでわざとこの都市を最終決戦に選んだのだろう。
わかるよ……。
俺はそういうの読むの得意だよ。だから壊させてもらうね。
「妖精さん! 気に入らん! 手伝って!」
「レオくんのそういうとこ大好き♪」
もうね、専用機奪って出撃しようとしたのよ。
そしたらタチアナがいた。
「兄貴、行くぞ」
「頼むわ」
さらに進むとリコちが首をゴキゴキ鳴らしてやって来た。
「行くぜレオ」
このモードのリコち……かっこいいわ……惚れる。
レイブンくんたちが膝をついていた。
「陛下。ご命令を」
「近衛騎士出撃せよ!」
ワンオーワンが来た。
「シーユンは自分が守るであります!」
「頼んだ!」
もうね、怒ったもんね!
パーシオンの都合なんて知らんもんね!
するとシャーロットも待ってた。
「医療支援ならするぞ」
「頼む」
俺は当然のようにクロノス軍の発着場に行く。
クロノス軍人たちが俺に敬礼するが、鬼神国人の下士官が道を塞ぐ。
「正妃様からレオ陛下を見かけたらお止めするように厳命されております」
「了解。喧嘩しようぜ」
「それならば」
もう! うれしそうな顔して!
ヘルメットとバトルグローブ着用は卑怯。
脱いで、その辺の兵に渡す。
ブーツも脱ぐ。
裸足になってその場でジャンプ。
よし体は固くなってない。
怒りで力みが発生するかが問題だ。
下士官……曹長も手袋とブーツを脱いだ。
向こうが出加減するはずもない。
いきなりフルスイングでぶん殴ってくる。
俺はインファイター。
ダッキングして拳を避けて腹にストレートをぶち込む。
あ、たくましい腹筋!
装甲車のタイヤ殴ったみたいな硬さ!
「ぐッ!」
でも曹長が一瞬だけ止まる。
だからローキック。
ミドルで肘落とされたら嫌だなと言う保険をかけて……。
ヒザでカッティングされて折れても嫌なんだけど。
「ふんッ!」
あ、我慢しやがった。
こっちに前蹴り。
こういうときは接近!
足を腕ですくい上げてぶん投げる。
ちゃぶ台ボンバー!
投げが決まり手をつく。
そこに間髪入れずに顔面に蹴り。
……の寸止め。
「勝ちでいいッスか? 時間ないんで」
「ありがとうございます!」
はい握手。
曹長たちに見送られながら専用機を載せた輸送機で発進。
最後で台無しにしてやる!
てめえら! 俺を怒らせたからにはギャグまみれにしてやる!
何一つ絞まらないクソみたいなラストに突入させてくれる!
俺は本気で怒ってた。
クソ! なめやがって!
パーシオンども、絶対に後悔させてやる!
てめえらのシリアスに巻き込まれて、首は寝違え、胃は痛く、ふくらはぎは吊ってるんだよ!
シャーロットも若いのに腰をやったらしい。
タチアナは口内炎が治らない。
賢者になったアリッサも風邪で寝込んでる。
ぜったい許さねえぞ!




