第六百七十四話
シャーロットである。
惑星級戦艦の統治者じゃ。
とはいえ優秀な行政官も多数乗船しておるし、そもそもクロノス王との関係は良好。
我も暇なときは多い。
暇なときは護衛たちと食堂に行く。
すると仕事が終わった誰かしらがいる。
字面がおかしいような気がするが気にしたら負けだと思う。
「おいーっすシャーロット」
我が友タチアナがいた。
鬼神国からクロノス一帯で聖女と崇められてる少女だ。
だが……。
「シャーロット。遊びに行こうぜ!」
現在はやんごとない身分なのだが……そもそも平民の生まれらしい。
悪気はない。
それをわかってるので友だと思ってる。
……というかクロノス王の妻になる予定なのにこれで大丈夫なのか?
「おいーっすシャーロット」
クロノス王が来た。
こっちも挨拶が雑だ。
クロノス王はもともと銀河帝国の侯爵家の生まれらしい……。
名家じゃないか?
え?
宮廷道化師を集団で笑いものにするために貴族にした?
何百年も統治で苦しむ様を見て笑ってた?
……銀河帝国人って意地悪すぎないか?
心の底から恐怖を感じたのだが……。
あ、はい。その連中はゾーク戦争のどさくさにクロノス王が滅ぼした……。
もしかしてクロノス王って危険人物なのでは?
その恥をかかせたものは絶対に殺すタイプ?
……基本的に優しい。本当に!?
実績と実際の本人像が合わないのだが……。
なんかそうなった?
それは道化の力か……。
それにしても強力すぎないか?
そもそも実家もおかしい。
笑いものを演じながら砂を噛む思いで侯爵家を維持してた……。
それって歴代当主は化け物じみて優秀だったのでは?
普通の精神力ではできぬぞ……。
あ、前当主は普通に無能。あ、はい。
……なぜだ?
「なーなーシャーロット。シャーロット、兄貴のこと好きなん?」
心なしかタチアナの声が冷たい。
「憧れよりも恐怖が勝ってる」
「そうか~♪」
どう考えても神話にある悪魔だと思うのだが。
それほど魅力的なのだろうか?
「あー、タチアナいたであります!」
ゾーククイーン、ワンオーワンが来た。
タチアナの親友である。
ここに太極国皇帝シーユンが加わるといつもの三人になるらしい。
「疲れました……」
三人目が来た。
噂の太極国皇帝シーユンである。
「お疲れー」
「お疲れ様であります!」
二人が挨拶するとシーユンはスポーツバッグを出す。
「バッセン……行こ」
バッティングセンターの略である。
皇帝シーユンは野球を偏愛している。
「まー、バッセンならいいか。いいぜ行こうぜ。あとでカラオケも行こうぜ」
「行くであります! ゲームもやりたいであります!」
お気に入りのバッティングセンター、カウントワンツースリーにはゲームセンターやボウリング場もある。
カラオケもだ。
「さて我はそろそろ仕事に……」
ガシッと我が友タチアナに肩をつかまれた。
「シャーロット行こう♪」
捕まってしまった。
「カラオケは嫌だ」
「そう言わずに~♪」
我が国では人前で歌う文化がないのだ。
「な、お前らもそうだろ?」
近衛隊を見る。
行きたそうな顔をしてる。
「行きたいのか?」
「ご、ごほん、シャーロット様の御意思に従います」
そう言われては行かないわけにも行くまい。
「酒は飲むな……運転しないものは一杯だけじゃからな! 運転するものは後で買ってやるから我慢しろ!」
「はーい!」
ということで4人で遊びに行く。
「そう言えばレオ王はどうした?」
「バイクレースのお仕事だって」
「自ら仕事を増やしていくのか……いつか過労で死ぬぞ」
「だから休ませたいんだけどさー。休みなら休みで焼きそば焼いてるしさー」
仕事中毒のようである。
「そう言えば、陛下がバーベキューグリルを注文したと仰ってたであります!」
ワンオーワンが目を輝かせる。
「レオ様はなんでも作れるのですね……」
シーユンが不思議そうな表情をした。
我もわからぬ。
料理が趣味らしいが……それにしてもなんでも作れるようだ。
すでにクロノス料理も作れるようだ。
王様を解雇されたら飲食業をやるなど意味不明のことを言ってるようだ。
ツッコミを入れたら負けだ。
超能力者としての道化の特性としても……やりすぎではないか?
ここまで領土を拡大したら革命が起こることもないだろう。
だが本人は「新卒就職がコケるとね、革命の英雄であっても簡単に殺されちゃうの」と真顔で言ってた。
それは大国を敵に回した小国の例だと思うのだが……。
タチアナの親衛隊の女性たちにシーユンの親衛隊、ワンオーワンの連れは執事一人だけ、それに妾の親衛隊でボーリング場に向かう。
ボーリング場に到着。
すでに予約はしている。
というか王宮関係者専用みたいになってる店舗だ。
警備はアマダ警備。つまり海賊ギルド。
海賊を正業にしたというのはもはや意味がわからない業績だ。
誰もできない。どうやって為し得たのかすらも想像できない。
シーユンは会員カードの認証をするとバッティングセンターに直行。
ダイヤモンド会員らしい。
「オラァッ!」
名家の子女が出してはならない声を出す。
カキーン!
「……とんでもないスピードが出てるようだが?」
我が友タチアナに聞くと呆れ声が返ってくる。
「あー、うん。ほらシーユンって剣術に弓術もやってて目と反射神経がいいんだよね。だから最高速度でもあの通り。イソノの兄貴とレコード競ってるみたいよ」
「……凄すぎないか? 選手にでもなるのか?」
「さすがにそれは反対されててさ~。太極国皇帝だし」
ドッカキーン。
「あ、ホームラン」
「やったー!」
喜ぶ姿はかわいい少女なのじゃが……。
その前の凶悪な音は……。
その……女子の威力じゃないような……。
「近衛隊! 勝負せよ!」
ビール飲んでた連中に声を掛ける。
「おしゃあああああああああああああああ!」
太極国の連中が気合を入れる。
「タチアナ様」
鬼神国の女性がタチアナに声を掛ける。
「あー、はいはい。勝負して。商品なんにする?」
すると奥から黒服の施設マネージャーがやってくる。
「バイクレースのチケットがよろしいかと。ご提供させていただきます」
「でも私たち任務で行くよ」
「ご家族や恋人へのプレゼントにどうぞ」
黒服がほほ笑んだ。
「だってさ」
「うおおおおおおおおおおおおおッ!」
思った以上に会場が盛り上がる。
我が近衛隊も本気になったようだ。
バッティング大会が始まる。
……タチアナとクロノス王。
我らの知ってる道化とは何もかも違うようである。
追加で観察が必要であると報告する。
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