第六百六十五話
ぱーぷーぱーぷー……。
パトカーから俺は出て手を振る。
そのまま騎士団に捕まって用意させられる。
道着来てはい試合会場にご案内。
到着すると巫女服の西条くんがいた。
今日も麗しい。
「待たせてごめんね」
謝ったのにビキビキ血管が浮いてる。
「いやホント事故だったのよ。事故で戦車と戦う羽目になるし」
「聞いてます。あれ遅延戦術だったのかなとか思ったボクがバカだっただけですね!」
「だってぇー! プロレスやったら眠くなったんだもん!」
「幼児か!」
という不毛なやりとりを経て試合開始。
西条くんは強い。
他の連中と比較するとエディはスポーツ的フィジカルと攻撃の正確さが突出してる。
なにもかもオーソドックス。それを高レベルで繰り出してくる。
俺たちが思いつくわかりやすい達人だ。
俺とは相性いいし噛み合う。
勝率は半々。
毎回ギリギリの戦いだ。
メリッサは古流だ。
スポーツの理合いと違いすぎる。
現代武術と違って帝国剣術の常識が通じない。
例外の動きが多すぎるのよ。
だもんで勝てるときは勝てるし、負けるときは手も足も出ない。
で、俺、あちこちの武術をつまみ食い。戦場で鍛えた謎武術。
まだ技の整理すらしてない。
そこにカトリ先生の教えが混ざって、ガイドが出ない音ゲーと化してる。
生存率は高いけど強い武術ではない。だって体系立ててないもん。
で、西条くんだ。
西条くんはメリッサと同じ古流。
だけどメリッサのところよりも新しい流派だ。
江戸時代中期より前の流派と幕末から明治の流派くらい違う。
つまりどういうことか。
「きえええええええええええええい!」
額をついてきた。
避け……。
体重を下に落とすのを理由してのど突き!
さらに下に落としてみぞおち!
かすった!
避けきれなかった!
「速ぁ! 怖ッ!!!」
一呼吸で……シュトトンって来たぞ!
これ連続技に組み込まれたらよけられる気がしねえぞ!
俺は間合いをロングレンジにする。
怖いよぉ。
「ふうううううううううううう」
呼吸!
来る!
ドンッ!
とんでもなく遠くから一歩で詰めてきた。
そのまま突き。
帝国剣術の突きだ。
「ほげら!」
体を倒して床に手を突く。
回避と同時に下から顔面に蹴り。
ヒョイッとよけられた。
ですよねー!
あかーん!
ロングレンジは安全地帯じゃない!
接近戦! 接近戦!
甲冑組み討ちしかない!
俺は低空でタックル。
頭を押さえられてタックルを切られた!
「そいつは対策してきました!」
ど畜生!
「きえええええええええええええいッ!」
斬ってきた片膝ついていなして……膝狙いのなぎ払い!
足抜かれて回避された。
ひいいいいいいいいいいい!
「それも想定済みです!」
あかんあかんあかん!
相手の苦手なフィールドにムリヤリ持ち込んで勝つ戦法が通じない!
まるでカトリ先生と戦ってるみたいだ!
どうする俺!
はあ……相手をカトリ先生クラスと認定。
「西条くん……怪我したらごめん」
「なめるなああああああああああああああ!」
うっわはっや!
斬撃が俺を襲う。
でもこいつは見える。
ガードガード、ここで跳ね上げ!
「ぐっ!」
そして俺は咆吼した。
「うおおおおおおおおおおおおおッ!」
ウキーッ!
全力ダッシュ。
突き? 跳び技。
違う。一番信用してる攻撃。
薩摩殺法である。
超暴走特級カワゴンが全体重をかけて剣を叩きつける。
西条くんもさるもの。
真正面から防御なんかしない。
三角形にステップワーク。
斜めからいなして……。
ふははははははははー!
そんなもん関係ないわー!
いなしたはずの木刀がへし折れた。
西条くんは木刀を手放すのが遅れた。
そのまま床に叩きつけられる。
背中から叩きつけられてバウンドする。
ノックアウト!
なお俺の木刀は床に突き刺さっていた。
「バカかおめえは!」
審判してたエディに蹴飛ばされた。
「ダチを殺す気か! ケビン! タチアナ!」
「う、うん。タチアナちゃんヒール!」
「お、おうガッテンだ!」
西条くん完全ノックアウト。
白目むいてる。ちょっと泡ふいてる。
「えっと……ごめんね」
「お前なあ! 試合でやる技じゃねえだろ! バカなの!?」
「だってぇ~! だってぇ~! 殺す気じゃないと勝てなかったのよ!」
「おまえさー!」
「だってぇ! 最大出力レベルだとカトリ先生よりスピードで勝ってるのがいくつか……」
口を滑らしたところで己の失敗に気づいた。
カトリ先生が音もなく背後にいたのだ。
「ほう、西条はそこまで強くなったか。うむ、おい西条起きてるか?」
「お、押忍」
西条くんは意識を取り戻したようだ。
脳震盪を起こしてるのかつらそうだ。
「俺と一緒にレオの野郎を倒そう」
「お、押忍! よろしくお願いします!」
え、なんで結託してるの?
「てんてー、俺もてんてーのかわいい弟子なんですが」
ずるいと思いまーす。
あと人のことレイドボス扱いしないでください。
いじめだと思いまーす。
「てめえは甲冑組み討ちだろが! 俺が教えた剣術じゃねえだろ!」
「なんかそうなっただけですぅ! ちゃんと流派は銀河帝国剣術ですし~。ブラックベルトですし~」
師範認定状もカトリ先生の名前ですし~。
なんてなんの生産性のない言い争いをしてたらユリちゃんが走ってきた。
「西条くん!」
「ユリさん……」
「ごめんね! お酒飲んで変なこと言っちゃって! 類人猿と戦えなんてひどいこといってごめんねえぇ」
どうしよう。
ものすごくひどいこと言われてる。
「ウキキ、ウキー!」
カトリ先生に八つ当たり。
サル語で話しかける。
「がおおおおおおおおおおおおおおおッ!」
「きゃいん! ぷきゅーぷきゅー」
鼻を鳴らす。
その場に座り込んで足をぷるぷる。
足が痛いふり。
あたいカワゴン。
自認ポメラニアン。
あちいたいいたいなの。
「嘘泣きしてんじゃねえ!」
アイアンクロー。
痛い! 痛いでゴザル!
アイアンクローで会場が笑いに包まれる中、西条くんとユリちゃんは愛をささやき合ってた。
「西条くん結婚してください」
「ユリさん……」
おめでとー……痛い! アイアンクロー痛い!
アイアンクローをされる中、西条くんとユリちゃんはお互いの愛を確かめ合うのだった。
リコち!
わかるか! 君に足りないのはこういうとこやぞ!




