第六百六十四話
戦車がやって来た。
パーシオン人が乗ってるのかな?
こっち見えてるな~。
いきなり主砲発射してこないってことは俺を生け捕りするつもりだな。うん。
どうせ逃げても赤外線で位置を把握されるし~。
一番いいシナリオなら俺を迎えに来たと。
「妖精さん、クロノスはなんて?」
「『パーシオン人に捜索の手伝いを頼むことはありません』だそうです」
「ですよね~」
んじゃやるべか。
「ふはははははー!」
横移動を繰り返しながら近づいていく。
こっちが攻撃できそうな範囲に入ると乗員が出てきて機関銃で警告してくるはず。
ドローンじゃなければね。
「と、止まれ!」
石を拾ってぽいっとな。
ぱこーん!
よし! ノックアウト。
もう一個石を拾って戦車の上に登って戦車の中に石を落とす。
「う、うわああああああああああ!」
手榴弾投げ込まれたと勘違いしたヤツが出てきたところにグーパン。
銃を奪ってその辺に捨てて。
はい戦車ゲッチュ。
ぶーぶー。
「普通に戦車奪った……」
「ばぶーはーい!」
「赤ちゃんにならない!」
もー、妖精さんの当たりが強い。
戦車は運転できる。
免許持ってるもん。
ぶっぶー。
ばぶー。
すっかり童心に返ってると戦車が見えてくる。
それと歩兵。
パーシオンだね。
うーん……。
「戦車が単騎でいたのってもしかしてはぐれた?」
「深刻な練度不足ですね……」
パーシオンくん、血の小便出るまで鍛えなきゃね。
さーて、さすがに戦車の射撃は自信ないぞ。
あれは戦闘機乗りと同じで専門職。
一応ガイドモードついてるけどね。
移動しながらガイドモードでロックオン。
「ほいさ!」
ちゅどーん!
おっとパーシオン軍の戦車頑丈だな。
一発じゃ壊れない。
でも動けなくはなったようだ。
無力化できりゃいいや。
「あばよー!」
ばぶー、ぶっぶー。
道を迂回して逃げる。
歩兵じゃ追いつけん。
カトリ先生なら追いついてくるけど。
あとレンなら普通に追いつくかなあ……。
はっはっは。
外車を転がしながら走っていく。
ぱーぽーぱーぽー……。
「そこの戦車、停車しなさい!」
あれ……?
普通に警察に囲まれ……。
えっと道の端に寄せて停車。
「やっほーお疲れちゃん!」
「へへへへへへへへ、陛下ああああああああああッ!」
「いやさー、競技場で居眠りしたら拉致されたみたいでえへへへへへへ」
「お、お送り致します!」
「でもさー、来てるよ~」
「え?」
きゅるきゅるきゅるきゅる……。
はいパーシオン軍が接近。
戦車10台はいるな。
「はいみんな逃げて~」
「で、ですが! 陛下!」
「いいから! パトカーじゃどうにもならん! 援軍呼んで! 俺はここで戦うから!」
「は! ご武運を!」
「へいへーい!」
戦車に乗って威嚇射撃。
パルスキャノンのエネルギーの残り少ないな……。
演習機だからこんなもんか。
さーてと。
「クロノス王に告ぐ! ただちに投降せよ!」
通信が来た。
すぐに返す。
「いやぷー」
「ちょ、おま!」
「やじゅー」
「貴様ああああああああああああああ!」
あおり耐性が低すぎる。
そんなんだから少しいじっただけで国が滅びるわけでな。
コミュニケーション能力が低すぎるのだよ。君ら。
ほら、すぐキレて突っ込んでくる。
「はい、どかーん!」
戦車一体破壊。
ドリフトというかスピンしながら方向を急転換。
そのままケツまくって逃走する。
バカめ!
もうパトカーが逃げる時間は稼いだのだよ!
ばーか! ばーか!
するとバリバリバリバリと音がしてきた。
ほう、航空戦力か。
やべえな。
「クロノス軍です」
「あ、仲間か」
よかったよかった。
「こちらリコ! レオくん無事!?」
「無事ッス!」
「前の戦車?」
「うん、かっぱらって逃げてきた」
「西条くんスタジアムで待ってるからね!」
「なんで西条くん今回やる気なのぉ!」
「ユリちゃん飲みに行ったときに『レオくんから一本取ったらすぐに結婚するよって』口滑らしたみたい」
「愛の戦士すぎるでしょ!」
「とにかくいま助けるから!」
「たのんます!」
フルアーマーリコちがヘリからダイブ。
そのまま戦車一台の上に着地。
戦車が潰れた。
「人の夫になにしてくれんのかな?」
リコちがぬるっと立ち上がる。
片手にはプラズマランチャーを持ってる。
それ普通個人携行する武器じゃないと思うのよ。
「うわー、りこちキレてますね。レオくん愛されてますね~」
「怒られないように支援しとこ」
ちゅどーん!
もう一台止めておく。
リコちが肩に担いだランチャー発射。
爆発で戦車がコケる。
「かかって来いよ雑魚ども」
あ、ヒーローモードになってる。
さすがにこの惨状だ。
戦車もさすがに主砲を発射してくる。
それをリコちは回避しながらランチャーで仕留めていく。
……強すぎる。
ほらー、俺、最強なんかじゃないじゃん!
俺は戦車から降りて爆風の中を移動。
身を乗り出して機関銃を撃とうとするやつを締め落としてぽいっとな。
中に入って乗組員を制圧。
歩兵も音もなく排除していく。
ナイフも剣もいらん。
歩兵の練度が低すぎる。
「く、クロノス軍は化け物か!」
その発言に表現できないイラつきを憶え、締め落とさないでバックドロップ。
地面に突き刺してやる。
気づいたら動いてる戦車はなく、歩兵もわずかになっていた。
リコちはアイアンクローで歩兵を持ち上げ放り投げる。
「……わかるか」
リコちが震えてる。
「『リコちゃん、まさかクロノス王様のお嫁さんになるなんて! これで我が家も安泰よ! 子どもいっぱい作ってね!』と喜ぶママ」
「あ、はい」
「『まさかリコちゃんがこんないい旦那さんを見つけてくるなんて!』とむせび泣くパパ」
「あ、はい。その節は……」
「もうあとには引けねえんだよ!」
「その……愛とか恋とかの文脈でもう一度」
「レオくんうっさい!」
「あ、はい」
カワゴンカナシイ。
こうしてバーサーカー夫婦の伝説は現実に……。
事後処理をリコちと憲兵隊に頼んで俺はパトカーで競技場に向かうのだった。
西条きゅんと戦うためにね。
なにが怖いって?
西条きゅんを怒らせることより……文官の総大将たるユリちゃんを敵に回すのだけは避けたかったのだ。
あと次プロレスやるときは夜にしよう。
あれ思ったよりスタミナ使うわ。




