再び出会った相手とは
この作品は『ノベルアップ+』にも掲載しています。
翌朝、静かでささやかな朝食を終えると、いよいよ『竜の巣』へ向かっての出立の時となった。
「雲一つ無い青空!爽やかな朝の微風!竜退治への出立の朝としてはこれ以上無い好天だね、皆の衆!」
ヴェンデルヴァイツの声はよく通る。
たとえ短期間とは言え、冒険に旅立つ四人の少女達にエールを贈るつもりでもあったのだが。
「朝からウルサイなあ。聞こえてるからもうちょっと小さい声で言ってよねー」
「まあまあ!あの歳で朝から元気なんてイイ事だよ、シアシアっ」
「ポニテリカちゃーん、誉めてるの?貶してるの?」
「両方かも!あっははー!」
「100歳まであんなカンジだろうな、ヴァイツ様はな」
と、アルシーアとルーフェリカが好き勝手な事を言う。
ディロンとアルシーア、二人の夕べの諍いの行方が気になるヴェンデルヴァイツであったが、敢えて何も聞かずにおいた。出立の朝にそれをほじくり返しても百害あって一利無しと判断しての事だ。
盛大な出立式もアールズ騎士団員達の見送りも無い、なんとも味気の無い竜退治への旅立ち。
シルス達の見送りに立ち会ったのはヴェンデルヴァイツと執事長ミハイル、夕べ四人の世話係をした数人の侍女達だけだった。
「お嬢様方、ご武運を!」
「みんな無事に帰ってきたら、またパーティーしようねー」
声高らかに爽やかに見送ってくれたのは、ヴェンデルヴァイツとミハイルだ。
見た目が軽い二人が並ぶと、誰が見てもナンパ師の二人組にしか見えなかったが、敢えてそこは誰も何も言わなかった。
「行って来ますね!ばいつ様っ」
「行ってまいりまぁす!ヴァイツ様ぁ!」
馬車の扉の両側に対面でディロンとラズラットが立ち、シルス、ルーフェルメの順に馬車に乗り込む。
続けてアルシーアもヴェンデルヴァイツに手を振って。
「ちゃちゃっと行ってくるよ!王様!」
アルシーアが馬車に乗り込む際に、ディロンをじろりと睨み付けた。
ディロンはアルシーアの眼光に怯む事無く、無感情に応える。
「よろしく頼むよ、アルシーア」
「ウマに蹴られないように注意する事でゴザイマスですわよ、騎士サマよっ」
「ウマって、本物の馬かなー?シアシアのコトかなー?どっちかなっ?あっははー!行って来まーす、ヴァイツ様っ!」
二人の諍い事には触れずに、ルーフェリカは明るく笑いながら馬車に乗り込む。
パタリ、と馬車の扉を閉じるとラズラットがディロンに問いかけた。
「ディロン様」
「なんだ?」
「女の怨念は100年続くと聞いた事はございませんか?」
「100年で消える怨念なら大したことは無いのではないか?」
「いえ、そういう意味で言ったつもりは無いのですが……」
「ん?どういう……」
意味だ?と言うより早く。
「早く行こうぜっ!ズラさんとデロンデロンさんよー!さっさと行かねーとウマが暴れるぞっ!」
と、馬車の窓から顔を出すアルシーア。
「……なかなかに手強いウマのようですね。行きましょう、ディロン様」
「ウマと言うのはアルシーアの事か?この二頭の事か?」
それは言わずもがなでしょう。とラズラットは思ったが、ここは聞こえないフリをしてヴェンデルヴァイツに向き直った。
「それでは!これより出立致します!我が騎士団の名に恥じぬ成果を挙げてみせます!」
「そんなに気負わなくていいよー、ラズラット。無事に帰って来る事が最優先事項だよ」
「行ってまいります、我が王よ。騎士団の誇りにかけて!」
凛とした態度で騎士の敬礼をするディロンにヴェンデルヴァイツも敬礼で応える。
どうしてそう大袈裟なのかね、と内心思いながら。
◇
アールズの街を出て東へ進む二頭立ての馬車が目指すのは、森を抜けた先にある『竜の巣』と呼ばれる大穴である。
爽やかな快晴の元、軽快に街道を駆けて行く。
馬車の中から見る景色は流れる様で、四人は初めの内は物珍しそうに窓の外を眺め、やれ、幽霊塔が見えるだの、あの森の木がエンデルード劇場に使われているだのときゃいきゃいとはしゃぎ騒がしかった。
が、それも束の間。
小一時間も経つと外の景色は建造物や珍しいものなど見当たらない単調なものに変わり、馬車内の四人も静かに次第になっていった。
馬車の中では特にする事がない。端的に結論付けると『ヒマ』なのだ。
普段から身体を動かす事が当たり前のアルシーア達にとって、箱形の狭い馬車の中は退屈としか言い様がない。
流れる景色もアールズの街を出てしまえば目に映るのは広大な草原のみ。
何の刺激も無い馬車内では、退屈しのぎを見つける事でさえ難しい。
ふと、シルスが馬車のある変化に気付き。
「この馬車って、この前より揺れないですねー。スゴい快適ですねっ」
「んー?そう言えばそうかもなー、ねー、ズラさーん。この馬車って、この前となんか違うのー?」
御者台側の小窓からアルシーアがラズラットに問う。ラズラットは視線を前に向けたまま、顔を少し横に向けてアルシーアに答えた。
「車輪に振動を抑える魔法がかけられているんだよ、アルシーア。なかなかに快適だろう?」
「快適過ぎて退屈なんだよなー。なんか面白いコト無いの?」
「無茶を言うね、アルシーアは。もうじき森に入るからそこで休憩しようか」
◇
アールズの街から馬車でおよそ三時間。
一行がその森に入ってしばらくしてラズラットが手綱を引き絞るとゆっくりと馬車が停止した。
二頭の馬はうっすらと汗ばんでいたが、そこまで息はあがっていない。
馬車の車輪に魔法が施され荷が軽くなっているとは言え、二頭の馬は三時間近く走り通しでもまだまだ走り足りない様子だった。
ラズラットが二頭の馬を労うと、甘えるようにしてその太い首をラズラットにすり寄せた。
「ここで小休止だ。各々、身体を伸ばすなり、用を足すなりするといいよ。ただ、単独では行動しない事。幾ら昼間とは言え、魔物の類いがいないとも限らないからね。用足しをするなら、見張りが一人付いて周りに十分警戒しておかないと」
「ラズラットさーん、知らないんですか?乙女は15歳まで用足しなんて行かないんですよっ?」
と、ちょっと意地悪く言うルーフェリカ。
「そうなのかい?これは失礼」
「そんじゃ、あたしは妖精でも探しに行ってくっとすっかなっ。リカ、一緒に行こうっ」
「ちっちゃい妖精?でっかい妖精?」
「そんなの聞くなよリカっ!用足しって言ってるようなモンだろっ!おっさん二人は付いて来んなよっ。変態騎士のズラさんは特にヤバい!」
ガサガサと二人が茂みの向こうに消えるのを見てシルスがポツリと呟いた。
「二人は今日も仲良いですねー」
「そうねえ♪」
「で、どうしてルーフェルメさんはわたしにピッタリくっついてるんデスカっ?」
「シルスちゃんがカワイイからだよ?」
――答えになってませんよねっ。
「ルメちゃんはさっき見かけたチョウチョをもう一回見たいから、シルスちゃんに付いてきて欲しいなあ」
「チョウチョですかー。わたしも見たいから行きましょうかっ」
ルーフェルメとシルスも、そそくさとガサガサと茂みの向こうに姿を消した。
二人の騎士はその姿を見送る事しか出来ないでいた。
「ラズラットよ」
「はい、なんでしょう。ディロン様」
「変態騎士と呼ばれるのは心外ではないか?」
「……誤解はいずれ解けるかと」
「……ふむ。彼女達は、このような無防備な時間帯が最も危険な状況であるのだと認識しているのだろうか?」
「はっ。おそらくは」
「本来ならば無理矢理にでも見張りに付くべきなのだろうが……こんな時に護衛と称して女性に付いて行くとどう思われるのだろうか?」
「……間違い無く『変態』の烙印を捺されると思います」
「……やはりそうか」
ポツリとごちてディロンは腕組みをし、アルシーア達が消えた茂みの向こうを凝視する。
何事も起こってくれるなよと思いながら。
◇
ややもして何事も無く四人が戻って来た。
「妖精さんいなかったわー。残念!」
「チョウチョもいなかったよお。残念っ♪」
「それでは出発しようか。危険度が低いとは言え、森の中に長居は無用だからね」
ラズラットが辺りを警戒しながら四人を馬車に乗るように促す。
ディロンはいつでも出発出来るように御者台に座していた。
シルスはこの森に見覚えがあった。
常人ならば、ただの人間ならば気付かなかっただろう。だがシルスには半分とは言え、風の声を聞き、木々の囁きをも感じ取れるエルフの血が流れている。
まだまだ未熟者のシルスはそれらの声を聞いた事すら無いが、しかし。
「この森って、危険度指数っていくつなんですか?」
「危険度は『3』に設定されているよ。この森の深部は、危険度指数『5』だが、ここはまだ街道に近いからね。森を抜ける道は何本かあるが、この道が一番安全な筈だ」
――この森って……通った場所は違うけど、わたしがネコエルフに襲われてファルナルークさんが守ってくれた……あの森だよね……確か、危険度『4』だったから油断してたんじゃなかったかな……今は『3』なのかー。
系統は異なり流れる血は半分と言えど、エルフとしての本能で、この森には来た事がある、とシルスは感じていた。
事実、シルスは41年後のこの森を通っている。ネコエルフと呼ばれる種族に襲われた事が鮮明にシルスの脳裏に甦る。
「あのっ。ラズラットさんっ」
「何だい?シルス君」
「ネコエルフ、って聞いた事ありますか?」
「名前だけは聞いた事があるよ。警戒心と縄張り意識の強い種族みたいだね。見た目は半人半猫らしい、としか判らないが」
「わたし、一度だけ見たコトあるけどそこまでネコっぽく無かったですよ?この森って、もしかして、なんですけど……ネコエルフさん達の縄張りかも知れないです」
「それは、彼らの縄張りに入ってしまった、と?」
「……ハイ。たぶん、ですけど」
「では、なるべく早くこの森を出るべきだな。休憩はその後にしようか」
ルーフェルメ、ルーフェリカの順で馬車に乗り込み次にシルスが乗ろうとした時に、がさがさっ!と茂みから突然飛び出して来たのは。
「クソニンゲンッ、ドモ!森カ、ラ!出テイケ!」
「ネコエルフさんっ!?」
以前、シルスが見たネコエルフと全く同じその姿。
しなやかな細身に長い手足。顔は細かい毛で覆われているが、獣じみた感じは無くむしろ美しい印象を受ける。
――あの時に見たネコエルフさんと同じっ!?でも、なんか喋り方がたどたどしいっ?初対面だけど再会しちゃったっ!
実際にシルスが襲われたのは数日前なのだが、現在のシルスはあの時よりも過去にいる。この時間軸の流れで言うと、シルスが襲われたのは今から41年後、という事になる。
御者台にいたディロンが素早く飛び降りるが、ネコエルフの素早さには敵わない。
「コレデモ、クラエっ!」
ネコエルフが紫色の何かをアルシーアに投げつけた。
咄嗟に両腕で顔を覆うが、投げつけられたそれはまともにアルシーアの頭に当たって、パン!と音を立てて弾けた。
紫色の粉がアルシーアの髪にふりかかり、美しい金髪の頭頂部が一瞬にして紫色に変色する。
ラズラットが立ち向かうと、ネコエルフは何かを感じたのか素早く茂みの向こう側に姿を消してしまった。
「ニョロワレロッ!バーカバーカ!」
と捨て台詞を残して。
「アルシーアっ!その粉を吸うな!」
ディロンがアルシーアの元に駆け寄り安否を確認する。
アルシーアは地面に膝を付き、ケホケホとむせこんでいた。
「なんっだよ、コレっ。甘ったるい匂いだなっ」
アルシーアが髪に降りかかった粉をパタパタとはたき落とす。
ディロンは鼻を覆いその粉を吸わないようにしていたが、アルシーアの様子と粉の状態から無毒である、と判断した。
――毒ではないようだな。怪我も無い。よかった。ただの脅しだったか?
ほっと胸を撫で下ろすディロン。
ディロンは、自然界の様々な動植物から得られる薬や毒の知識を習得している。ディロンの知る限りでは毒気は無いが遅効性の毒かも知れない。
注意を怠らずにアルシーアの症状を確認する。
「無事か、アルシーア。目の霞みや節々の痛みは無いか?肩が重いとか身体の倦怠感は無いか?」
無論、ディロンはアルシーアの身を案じて訊いているのだが。
「年寄り扱いすんにゃっ。にゃんともにゃいわいっ!」
その応えと姿にディロンは。いや、その場にいた全員が固まった。
「シアシア、それ……」
「え?」
「ネコミミが……」
「にぇこみみ?にゃんにょコトだっ?」
アルシーアの頭部には。
紫色のネコの耳が出現していた。
シルスは知っている。これはネコエルフの呪いである、という事を。
かつてこの森を通った時にファルナルークに降りかかった災難。それがアルシーアにも。
――なにコレ……これって……偶然なの!?シアさんがっ!ファルナルークさんと同じ呪いを受けちゃったっ!
「耳、だねー。ネコの耳。ちょっとおっきいネコの耳。カチューシャっぽいけど、頭皮から直接生えてるねコレ」
意外に冷静なのはルーフェリカだ。アルシーアに突然現れたネコミミを、つんつんとつつきながら観察している。
対し、ルーフェルメは肩を震わせて我慢していた。
「カワイイけどおっ。似合ってるけどおっ」
「こらルメっ!笑いそうににゃるにょ堪えてるだろっ!ぷるぷるしてるぞっ!」
ネコエルフがラズラットの前から逃げ出す際に『ニョロワレロ』と言っていた事を思い出すディロン。
――呪いの一種……なんだろうか?これは呪いと言えるのか?
呪いと呼ぶには稚拙なような気がするが、この先のアルシーアの人生を考えるとネコミミなど無い方が良いだろう。
「呪い、と言っていたな。魔法のかかった呪いならば解く方法はある筈だ。アルシーア、身体に不具合は無いのだな?」
「見てにょ通り、ピンピンしてるよっ」
ディロンの問いにピョンピョンと跳び跳ねて無傷である事をアピールするアルシーア。
「今ここで呪いを解くというのは無理なのではないでしょうか?ディロン様」
「うむ……」
ディロンは黙って腕を組み、この先の行動を思案する。
◇
シルスは知っている。その呪いの解き方を。
――呪いを解いてあげてみてもいいけど……
シルスにふとしたイタズラゴコロが芽生えた。不思議そうに耳を触っているアルシーアに言葉遊びを一つ持ちかけてみる事に。
ファルナルークの親友、シュレスがあの時に持ちかけた言葉遊びを。カミカミで言えなかった早口言葉を。
「あの、シアさんっ。『野の菜の花、名も無き根無し草』って三回言ってみてくれませんかっ?」
「は?いきにゃりにゃんだよ?」
「早口言葉、苦手ですかっ?」
「にゃにおうっ!そんにゃもん楽勝だっつーにょっ!にょにょにゃにょはにゃにゃもにゃきにぇにゃしぐさ。にょにょにゃにょはにゃにゃもにゃきにぇにゃしぐさ。にょにょにゃにょはにゃにゃもにゃきにぇにゃしぐさ。どうだっ」
「あっははー!あーっはははっ!シアシアっ!にゃーにゃー可愛い過ぎー!あ、ゴメン笑っちゃったっ!あっははー!面白ーい!覚えておくよ!シルスちゃん!アタシも誰かに教えてあげるコトにするよ!」
ルーフェリカの一言に、はっと息を飲むシルス。
――あれっ!?これって……シュレスさんが言ってた早口言葉をわたしが伝えた、ってコト!?
シルスが幾度となく感じる『時の事象』の違和感。
未来から来た自分が過去の人間に教えた事が未来に継がれる、という不思議な事象。
――この早口言葉って、わたしが教わったのはシュレスさんで、わたしが教えなかったらルーフェリカさんは知らずにいた、ってコトだよね……?
ルーフェリカの誰かに似た笑い方。その誰かとはシュレスだと、今ハッキリと思い出す。瞳の色は翠、髪の色は違うが背格好もシュレスに似ている。
――考え過ぎかなあ……ルーフェリカさんって、シュレスさんの……
「ここで引き返しますか?ディロン様」
ラズラットの言葉に思案の世界から引き戻されるシルス。
「うむ……それもやむ無しと判断すべきか……」
「えー!カッコ悪すぎだろー!あたしにょせいでこにょ旅が終わるにゃんてイヤだっ!」
騎士二人に反論するアルシーアだが。
「その症状がいつまで続くかは解らないだろう?放っておいてもその耳が消えるとも思えない。もし悪化して彼らの様な姿になったらどうする?」
ディロンの冷静な分析。この言葉には、さすがのアルシーアもぐっと押し黙ってしまった。
「出発して半日で引き返すにゃんてっ……」
「それが賢明な判断だと思うよ、アルシーア君。君の治療を優先すべきだ。君だけ送り返すという訳にもいかないからね」
ラズラットが優しく言うが、アルシーアには何の慰めにもなっていなかった。ちょっとした自分の不注意でこの旅が終わってしまう。
そう考えると自分自身に対して怒りが込み上げてくる。
きゅっと唇を噛み拳を握りしめるアルシーアの目には涙さえ浮かんでいた。
「あのっ!シアさんの呪いが解ければっ、その症状が消えれば、この先に進めるんですよねっ?」
重い空気を動かしたのはシルスだった。
ディロンが応え、もっともな意見を口にする。
「呪いが解ければ、とは言うけれど。呪術の類いの呪いを解く方法は、魔術師か魔女じゃないと解らないのでは無いかね?」
「えっと、前に一緒に旅した人がシアさんと同じように呪いを受けちゃって、魔女さんに診てもらった事があるんですけどっ。その魔女さんは、ネコエルフの呪いは解けなかったんです」
「ふむ。では他に方法がある、と?」
「あ、はいっ。あるにはあるんですけど……」
シルスはごにょごにょと口ごもる。
その理由は単純明快である。口にするのが恥ずかしいのだ。
だがここで止まる訳にもいかない。シルスは意を決してディロンに告げる。
「えっと、呪いの逆の事をすればいいんです」
「逆? と言うと?」
「祝福、ですね」
「祝福? と言うと?」
「単純に言うとですね、あの。キス、です。祝福のキス」
「にゃんだよ、そんにゃ簡単にゃコトにゃらさっさとやっちまおうっ!」
二人の話を聞いていたアルシーアがぐい!とシルスを抱き寄せ。
むちゅ。
と、シルスにキスをした。
唇に。
「きゃあ♡」
ルーフェルメが両手で顔を覆うが、指の隙間から二人のキスシーンをしっかりとその目に焼き付けていた。
「わお♪」
ルーフェリカは、これはいいナレーションを思い付きそうだとルーフェルメ同様に二人のキスシーンを脳内保存していた。
騎士二人は、思わぬアルシーアの行動に目が点になり呆然としている。
シルスは一瞬の出来事過ぎて思考が追い付かない。軽くパニックである。
「シアっ!さんっ……!なんってコトをっ!わたしのっ初めてのおっ!」
間違いなく奪われた。奪われてしまった。
シルスのファーストキスの相手は。
一目惚れをした写真の人物。
高祖母アルシーアである。
シルスのファーストキスの相手はアルシーアでした。
次話『森を抜けたその先に』
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