異界の森と黒き叫び声
こんにちは、つめです!
第3話「異界の森と黒き叫び声」を読んでいただきありがとうございます!
前回、俊たちは時空の裂け目から現れたゾンビを倒し、神から遣わされた小型ロボット・ノヴァと出会いました。そして、世界が「時空崩壊」によって滅びへ向かっていることを知ります。
今回は、俊たちの最初の任務が始まります。裂け目の先に広がる不思議な森、そこで待ち受ける強敵、そしてアビススカルからの不気味なメッセージ——。
ぜひ最後まで楽しんでください!
赤い空の下で
学校のすぐ近くに現れた時空の裂け目。そこで出会った小型ロボット・ノヴァから衝撃の事実を告げられた俊たちは、学校近くの小さな公園へ移動していた。ベンチに腰を下ろし、四人は黙って空を見上げる。夕暮れの空は不気味な赤黒色に染まっていた。
昨日まで普通だった世界。それがたった一日で別の世界のようになっている。
(本当に……世界が壊れ始めてるんだ)
俊は拳を握った。ニュースで流れていた異常現象。世界各地に現れる謎の建物。見たこともない生物。そして目の前で起きた時空の裂け目。もう偶然では説明できなかった。
「それでは改めて説明します」
ノヴァが空中へ浮かび上がる。青い光が広がり、立体映像が現れた。地球だった。しかしその地球には、無数の黒い亀裂が走っていた。
「現在発生している現象は『時空崩壊』です。アビススカルの呪いによって時空そのものが不安定化しています」
映像が変化する。裂け目から城が現れ、森が現れ、恐竜が現れ、見知らぬ生物が現れる。
「世界中に時空の裂け目が発生し、様々な世界が混ざり始めています」
「つまり世界ごちゃ混ぜ状態ってこと?」
岩斗が顔をしかめる。
「その通りです。このまま放置した場合、最終的に世界は完全崩壊します」
空気が重くなった。誰も言葉を発しない。
「神様は……?」
俊が静かに尋ねる。
「現在、神様はアビススカルに囚われています」
その言葉に全員の顔が変わった。神。自分たちを生み出した存在。家族のような存在だった。
(神様まで……)
胸が苦しくなる。だが落ち込んでいる暇はない。
俊は立ち上がった。
「じゃあ僕たちがやるしかないんだね」
三人が俊を見る。
「その言葉を待ってた」
炎真がニヤリと笑う。
「最初からそのつもり」
凰輝も小さく頷いた。
「神様救出作戦開始だな!」
岩斗が拳を突き上げた。
その瞬間だった。
「反応を検知!」
ノヴァの目が赤く点滅する。
「学校北側の山で小規模な時空の裂け目が発生しました!」
全員が立ち上がる。
「これが皆さんの最初の任務になります」
俊は大きく頷いた。
(最初の任務か……絶対に成功させる)
最初の任務
十分後。五人は学校裏の山道を進んでいた。木々の間を吹き抜ける風が不気味に冷たい。
「そういえばさ、今どれくらい力戻ってる?」
岩斗の問いに、炎真が指先を鳴らした。小さな炎が現れる。
「俺はこんなもん」
「オレは岩を少し動かせる」
岩斗は石を浮かせた。
「僕は風だけ」
凰輝の周囲に風が舞う。
最後に俊が手を開く。小さな氷の結晶が現れた。
「ぼくは氷を少しだけかな」
氷は数秒で消えた。
(弱い……ドラゴンだった頃なら山だって凍らせられたのに)
悔しさが込み上げる。
そんな俊の肩を炎真が軽く叩いた。
「焦るな。力なんてこれから戻せばいい」
「そうそう! 今から強くなるんだからさ!」
岩斗も笑う。
「俊は昔から考えすぎ」
凰輝も珍しく口を開いた。
思わず俊は苦笑する。
(みんな……)
少しだけ気持ちが軽くなった。
「反応が近いです」
ノヴァが前方を指差した。
幻想の森
山奥の空間が歪んでいた。巨大な裂け目。しかしその向こう側の景色は地球ではなかった。
青白く光る植物。紫色の大木。空中を漂う光の粒。
「すごい……」
俊は思わず呟く。
(綺麗だ。でも……怖い)
本能が警告していた。ここは地球ではない。
その時だった。
ガサッ!!
茂みが揺れる。赤い目が光った。
「シャドウウルフです! 危険生物!」
ノヴァの警告と同時に、黒い狼が俊へ飛びかかった。
「うわっ!」
間一髪で回避する。地面が大きく抉れた。
「速い!」
ゾンビとは比較にならない。
さらに三体、四体と現れ、戦闘が始まった。
漆黒のアルファ
激戦の末、最後のシャドウウルフを倒した瞬間だった。
オオオオオオオオオン!!!
巨大な遠吠えが森全体を震わせる。
そして現れた。
通常個体の三倍以上はある巨大な狼。漆黒の毛並み。青白く輝く紋様。神秘的な美しさと圧倒的な威圧感。
「変異個体……シャドウウルフ・アルファです!!」
俊は息を呑んだ。
(強い……)
アルファが消えた。
次の瞬間。
「ぐあっ!?」
炎真が吹き飛ばされ、木に激突する。
速すぎた。誰も反応できない。
岩斗の岩壁は砕かれ、凰輝の風も通用しない。
(どうする……どうすれば勝てる!?)
アルファが再び飛びかかる。
その瞬間、俊の中で何かが弾けた。
(みんなを守るんだ!!)
冷気が爆発する。
地面が一瞬で凍りつき、アルファの足が止まった。
「今だ!!!」
炎真の炎。岩斗の岩。凰輝の風。俊の氷。
四つの力が同時に炸裂する。
アルファは大きく咆哮し、静かに崩れ落ちた。
「勝った……」
俊はその場に座り込む。
息が切れていた。
だが確信していた。
(強くなった)
(戦うことで力は戻るんだ)
希望が見えた瞬間だった。
黒き呼び声
「俊」
ノヴァが呼ぶ。
裂け目の近くには黒い結晶が落ちていた。
俊の背筋が凍る。
(あれは……)
ドラゴンだった頃に見た、アビススカルの黒い結晶によく似ていた。
ノヴァが分析を終え、重々しく告げる。
「アビススカルの力の痕跡です。つまり時空崩壊は自然現象ではありません。アビススカルが意図的に引き起こしている可能性が極めて高いです」
沈黙。
その時だった。
パキッ。
結晶に亀裂が入る。
パキパキパキッ!!
黒い霧が噴き出した。
『ドラゴンたちよ……』
全員の動きが止まる。
忘れるはずがない。
あの声。
アビススカルだ。
『ようやく見つけた』
俊の心臓が大きく鳴る。
『フフフフフ……』
笑い声だけを残し、霧は消えた。
静寂。
誰も喋れない。
俊は拳を握った。
(気付かれた)
(僕たちが生きていることを)
そして――
(絶対に負けない)
赤黒い空の下、世界を賭けた戦いはさらに大きく動き始めるのだった。
「異界の森と黒き叫び声」を読んでいただきありがとうございました!
今回は俊たちが初めて本格的な任務に挑みました。ゾンビとは違う強敵「シャドウウルフ」、そして変異個体の「シャドウウルフ・アルファ」が登場しましたが、いかがだったでしょうか?
また、戦いの中で俊たちの力が少しずつ戻り始めていることも判明しました。これから先、さらに強力な敵との戦いの中でどのように成長していくのかにも注目していただけると嬉しいです。
そして最後には、アビススカルが俊たちの存在に気付いてしまいました。世界の危機はさらに大きくなり、戦いも新たな段階へ進んでいきます。
次回は第5話!
新たな裂け目、新たな世界、そして新たな出会いが待っているかもしれません。
感想や応援、本当に励みになります!
それでは、また次回お会いしましょう!




