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【コミカライズ配信中】一目惚れの方はご遠慮いただきたいのです なろう版  作者: 青空那奈
番外編

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20/21

姫と陛下の試練 1

Renta!2026年タテコミ上半期ランキング

タテコミ女性漫画新作2位♡記念番外編です

「陛下が側室を迎えるって本当か?」

「え? まさか……」

「王妃は素晴らしい方だか……でもなあ……」

「結婚3年経って、お世継ぎがいないのは……なあ?」


不穏な話が流れ始めたきっかけは……。

やはり、あの時からでしょうか?


◇◇◇◇◇◇◇


結婚して2年。

陛下と私の日々は相変わらず……甘く情熱的な夜の後は、交互に情熱的な朝と甘いだけの朝を送り、王と王妃としての公務を一生懸命しています。


私達夫婦の関係は変わっていませんが、周辺は大きく変わっていました。


私達の結婚式後すぐ、ドS王太子が結婚なさいました。

その半年後には、私の兄の王太子も結婚しました。

その直後に、宰相のドS息子も結婚しました。


おめでたい話題が続いた後、衝撃的な訃報が届きます。


……なんと、ドS王太子が亡くなったのです。

不幸中の幸いは、時を同じくして王太子妃が王子をお産みになった事。


この出来事は王妃になった私にはとても重い物でした。

それに、この出来事の始まりは私達の結婚式だったので。


あの日、陛下は王太子を牽制(けんせい)しました。

そして、それを各国の重鎮達が見ていた。

その中には、私を溺愛する兄3人もいました。

これが何を意味するか分からない者はいなかったはず。


……流石にドSといえど王太子。

彼は猛省すると信じていましたが、訃報が届いたのです。

陛下も私も驚いてしまいました。


「……結局、あの王太子は反省が出来なかったか」


陛下は残念そうに目を伏せて仰いました。


「あの方は、ご自身の結婚の意味も妃の正体も知らぬまま逝ったのでしょうか?」


これは問いというより確認でした。


「そうだな……知らないからこそ、彼にとって公正な試験だった。けれど、試験に落ちてしまうとは」


陛下の答えは予想通りでした。

王太子妃の生家、辺境伯一族の秘密。

私も結婚後の王妃教育で学びました。

三か国とも基本的に知っているのは、王と王妃・宰相・辺境伯、これくらいでしょう。


「……王太子のご両親は彼を信じて黙っていたのでしょうね……けれど、公爵と辺境伯は……」


私が言いよどむと、陛下は続けました。


「……王太子のドSぶりには閉口するな。まあ、私達も彼らの結婚式で内々に教えられたが、病弱な公爵令嬢の心を壊すとは……」


ドS王太子の結婚式。

招待された私達と私の両親が貴賓室に呼ばれました。その状況を見ていた各国の人々は『ああ、結婚式での無礼を詫びるのだろう』と思ったはず。

けれど、それは半分だけ正解でした。


お詫びだけではなく、王太子の進退の言及があったのです。王太子の結婚の意味、王太子の反省が見られなかった場合に起きる最悪の未来も。


経緯はこうです。王太子の病弱な元婚約者は、治癒魔法の天才である辺境伯令嬢と親友でした。だから、治癒してくれる辺境伯令嬢にだけ持病の悪化の原因を言っていたそうです。


さらに元婚約者は、公爵家の未来も考え両親には内緒にしてくれと。相手は王と王妃に溺愛され、皆に愛される完璧な王太子……誰も信じてはくれないだろうからと。


辺境伯令嬢は治療を必死でしたそうです。けれど、王太子は穏便に婚約解消を望む公爵令嬢をおいつめ……とうとう生きる気力が尽きた元婚約者は治癒魔法も効かず亡くなってしまったのです。


辺境伯令嬢の告発で公爵家の人々も王太子のドSぶりを知りましたが、元婚約者の死を本当に悼んでいるような王太子の完璧な演技を前になす術がなかったそうです。


「……今回の件、かの国は国内国外の問題を一気に解消させたのですね……」


公爵家と辺境伯家は王太子がボロを出す日を待っていたそうです。そして、私達の結婚式。彼の正体がバレ、大国の王に牽制され、国として彼の処遇を考えなければならなくなった。

王と王妃はドS王太子を溺愛していたそうですが、大国の王と自国の公爵と辺境伯を敵に回すほど愚かではなかったようです。

もちろん、王と王妃は父母として愛息子を心から信頼していたのでしょうが……。


「……彼の死によってな。公爵の無念も晴れただろう」


病弱だけれど、美しく聡明だった公爵令嬢。

健気に生きていた彼女の最期を早め穢した王太子。

与えられた最後の機会も理解出来ず自分で壊した。

その代償は彼の命。


「……王と王妃は最大の償いをされましたね」

「ああ……王と王妃として完璧な責任の取り方だな」


私は、陛下の言葉に身震いしました。

……我が子にも王と王妃として責任を取らなければならない、その方法が我が子の死であったとしても……改めて王と王妃の立場の重さを感じた出来事でした。


私と陛下の子供……。

結婚して2年、三ヵ国で王太子がいないのは私達だけです。陛下は、私の身体を思い子供はまだ先でいいと考えておられます。ですが、家臣や国民は早くお世継ぎをと思っています。


私の実家も、王太子の兄に子も産まれ次は私と思っているはずです。……結局のところ、王妃としての最大の仕事は世継ぎを産む事。


初夜以後、陛下は子が出来ぬように気遣ってくれています。けれど、ドS王太子の死と王子誕生。我が長兄にも王子が産まれ私は焦っていました。


ある時、私は思い切って陛下にお話ししました。


「陛下……子供の事ですが……」

「もう少し待とう」

「ですが、王太子がいないのは我が国だけですわ」

「それはそうだが……我が母を思うと不安でな」


陛下の言葉で、王妃教育で教わった王家の極秘事情を思い出しました。


私の母は18歳から子を4人も産んでいますが、陛下の母上は20歳で子を産んで亡くなっていたのです。陛下の母上は、前王妃の姪でした。陛下の父上は、王妃一筋で愛情深い方でした。だから、結婚後長年子が産まれなくても養子でいいと側室を持ちませんでした。


王妃の実家の思惑もあったかもしれませんが、王妃に似た姪を側室にと提案されても陛下の父上は拒否したそうです。


けれど、王妃の方が耐えられなくなったのでしょう。

表向き、前王妃は病死ですが自死だったそうです。

そして、10代の姪が新しい王妃として嫁いだのです。

ですが、新しい王妃には別に想う方がいたそうで……。


年若い王妃は、失恋と実家と国の期待の重さのせいでしょう。結婚後は身体が弱くなっていたそうです。

それでも何とか身籠ったのですが。


難産になってしまい、王子(陛下)を出産して亡くなられてしまいました。


「お気持ちは分かりますが、陛下の母上と私とでは状況も何もかも違いますし」


私がそう言うと、陛下は困ったような泣きそうな顔をされました。


「……分かっているのだが。万が一を考えてしまう……そして、それは私にとって一番の恐怖なのだ……」


そんな陛下を見て、私も子供の事は強く言えなくなりました。だって、私だって逆の立場なら……我が子よりも陛下を選ぶと分かっているから。私が一番、陛下の思いを理解しているから。


けれど、私達は王と王妃。

責任があり、結果を出さなければいけないのです。


ーー時間が経てば経つほど明確に。


結婚して、瞬く間に三年が過ぎ。

私は聞いてしまうのです……。

ごくごく当然で、とてもとても恐ろしい話を。


数話続く予定です♡

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