ドS達の未来
コミカライズ記念♡番外編です。
王太子・天才魔術師・宰相の息子の順になってます。
最愛の人の結婚式は、素晴らしい恋の終わり。
私が与えた苦痛で、今までで一番素敵な顔をした姫。
甘美な一生の思い出になるばすだったのに。
私と国は辛酸を嘗める結果になった。
『あっ!! 姫、指を怪我されていますよ!! これは指輪の痕!! 王太子殿下!! ヒドイです!!』
『王太子殿下。踊られる時は指輪を外したらどうだ? 流石に三回目があれば私も黙っていられない』
生意気な姫の部下と冷酷無比な姫の夫の言葉で、皆が望む完璧な王子という仮面が破壊された。
――姫の結婚式後、急遽開かれた王室会議。
「今回の件は深刻です。三か国の友好が危うい状況になっております。友好国の王女でもあり、友好国で大国の王妃になられた方への無礼。……王妃の祖国も、夫である王も簡単には許して下さらないでしょう」
我が国の宰相が重々しい口調で告げた。
「……しかし、王太子も悪気があった訳ではない」
我が父である王が取り成すように言ったが、宰相はハッキリと諭すように語る。
「……お言葉ではございますが、悪気のあるなしは関係ございません。大国の王が『三回目があれば黙っていられない』と、各国の要人が居る前でおっしゃったのが問題なのです」
長年の三か国の友好、それが公の場で崩れ去った。
そう説明する宰相に慌てたように父が反論する。
「し、しかし……三度目などあるはずが無い。王太子だって反省しているだろう」
「……陛下。この問題は『もう二度としません』そんな言葉で解決するようなものではございません。失った信用を回復出来なければ、我が国は国際的に孤立する。それほどに重要度の高い問題なのです」
信用を取り戻し、この問題を解決する方法。
この難問に答えなど簡単に出ず、長い長い沈黙が続く。
「陛下、我らとて王太子が故意にやったとは思っておりません。不運にも指輪が当たってしまっただけ……ですが、二回連続は印象が悪過ぎました。そこで、提案がございます」
沈黙を破ったのは辺境伯であった、彼は続ける。
「我が領土は、三か国の国境が重なる場所。だからこそ、三か国の要であり他の二か国と婚姻を結び、強固な関係を築いてまいりました。そこで……我が娘を王太子殿下の妃にしていただきたい」
辺境伯の真意はこうだった。
二か国の重臣達と婚姻によって、独自に三か国の平和を守ってきた辺境伯。辺境伯家の女性達は代々治癒魔法を得意とする血筋だった。嫁いだ先で率先的に治療をするなど、慈善事業も行っており領民からも慕われている。
「……恐れながら、失った信用を取り戻すのは困難でしょう。であれば、今ある信頼を活用するほかないのでは? 10年前、三か国の国境付近で謎の病が流行いたしました。これを鎮めたのは、友好国二か国に嫁いだ者を含む我が一族。二か国の王家も国民も、まだこの記憶は新しいでしょう。ですから……」
「ま、待ってちょうだい!!」
辺境伯の言葉を遮ったのは我が母だった。
「あ、有り難い申し出だわ。で、でも……。万が一、息子が……王太子が失態すれば……あ、貴方の一族の信頼も失う可能性が……そうなれば嫁ぎ先で辛い思いを……」
「王妃、そこまで王太子は愚かではないはずです」
動揺する母の言葉を遮ったのは公爵……私の亡くなった婚約者の父だった。
「陛下、王妃。お二人はご存じでしょう? 我が娘は生まれた時からいつ死んでもおかしくないと言われていました。王太子の婚約者に選ばれる年齢まで生きられたのは辺境伯のおかげ……」
公爵と辺境伯は親友同士らしい。
そして、生まれた時から病弱だった元婚約者(娘)を治療していたのが辺境伯一族だったようだ。血縁は無いが辺境伯の娘と元婚約者は姉妹の様に親密だったらしい。
「辺境伯一族の功績と実力は、公爵である私も補償いたします。王都での父代わりとして、我が公爵家が辺境伯の令嬢の後ろ盾になりましょう。皆様、これ以上の案は無いかと存じますが?」
公爵が問うと、重鎮達は頷いた。
「……宰相として、私も賛成いたします。陛下、王妃。よろしいですね?」
「……陛下……」
母は顔色を青くして父に問いかけた。
「……仕方があるまい。王太子よ……これがお前に与えられた最後の機会だ。辺境伯の令嬢を大切にし、この国と己の信用を取り戻せ」
父は見たこともない厳しい表情で告げた。
私は反省した演技をして重々しく頷く。
どうなる事かと思ったが。
結局、辺境伯の娘と婚約するだけですんだ。
そして、やはり私は神に愛されていた。
なんと、辺境伯の娘は元婚約者に似ていた。
もちろん、顔ではなく性格が。
彼女は王太子妃に相応しい教養があり、私が与える苦痛に我慢強く嫌悪と絶望の表情をしてくれた。
結婚後、彼女はすぐに身籠った。
結婚前からの約束で、彼女は里帰り出産をする事になっていた。
出発する前夜、私に従順だった彼女が言った。
「殿下、ご存じですか? この世の中には、毒にも薬にもなる植物があります。そして、それは魔法でも同じことが言えるのですよ。どうして私達一族が、三か国との平和を独自に築けたか。それは、恩恵と損害を与える力があったからです」
彼女は楽しそうに笑い眠った。
そして、出発する朝に彼女は私の耳元で囁く。
「殿下、貴方は最後の機会を生かせませんでしたね。お腹の子は愛して大切に育てますわ。安心して地獄へお行き下さい」
――元婚約者と姉妹の様に親密だった彼女。
治癒魔法で三か国の平和を守ってきた辺境伯。
10年前、流行り病を鎮める事が出来た唯一の一族。
王室会議の母の動揺と父の厳しい言葉。
毒にも薬にもなる植物……魔法も同じ……。
そして、結婚前から決まっていた里帰り出産。
……なるほど、やっと気づいた。
彼女は……公爵家は……私に復讐したのか。
だから彼女は、元婚約者のように振る舞った。
私の行動を父母に、宰相に、公爵に伝える為。
最後の審判は終わっていたのか。
そうか……復讐と三か国の平和の為に……。
私は死ぬのか……。
彼女が出産でいない、治療出来ない状況で。
謎の病で急死……これが私に与えられた未来。
ははっ、私より演技が上手い人間がいるとは。
この私が……騙される側になるとは……。
視界が世界が暗くなる……いや、違う……。
次に私が見るのは……地獄の風景なのだろう。
◇◇◇◇◇◇◇
僕の姫が結婚してしまった。
でも、姫は幸せになるだろう。
僕と宰相の息子が協力して王太子を撃退したから。
それは分かっている……けれど……。
この王宮に姫はいない。
庭で偶然見かける事も出来なくなってしまった。
寂しい……とても……寂しい。
僕は何も手につかなくなっていた。
「暇そうですね。貴方に新しい仕事を与えに参りました」
宰相の息子が一人の少女を連れてきた。
「貴方と同じで膨大な魔力がありながら制御出来ません。それに、貴方と同じく公爵家の令嬢です。貴方ほど令嬢の教育係に相応しい人はいません。よろしくお願いしますよ」
宰相の息子は、それだけ言うと王宮にある僕の研究室に少女を置いていった。
……公爵家の令嬢? 僕と同じ膨大な魔力? その割に少女の噂は聞いたこともない。それに、髪もボサボサで着ている服だって平民の普段着のようだ。
「……君、名前は?」
「……」
僕は得意の笑顔をして優しく聞いたのに。
少女はビクリと身体を震わせるだけでオドオドするだけだった。その後、何を聞いてもビクビクオドオドするだけで何も答えてはくれなかった。
……訳あり令嬢って事か。
さすが、宰相の息子が僕に押し付けただけある。
僕と同じく養子なのだろうか?
だからこんな粗末な扱いを?
意思疎通も出来ず、事情も分からない。
考え込んでいると、僕の部屋がノックされた。
すると、僕も顔見知りのメイドだった。
僕をチヤホヤしない真面目なメイドだ。
結局、訳あり令嬢の事情は彼女が説明してくれた。
少女は公爵家の実子で10歳。
高い魔力を持っていて度々魔力が暴走していた。
だから、10歳までには魔力の暴走で死ぬだろう。
そう思われて隔離されて育てられたそうだ。
しかし、10歳の誕生日を迎えても生きている。
手に余った公爵家が宰相家に相談したそうだ。
その結果、彼女の面倒は僕がみると決まったらしい。しかも、王宮には僕の部屋と彼女の部屋が作られていた。彼女がいつ暴走してもいいように……だそうだ。
ご丁寧に騎士達の訓練場の奥に作られていた。
万が一があっても被害が少ない場所だ。
……姫を守ったと、王子達の信頼を取り戻した宰相の息子と僕。取り戻した途端、宰相の息子は僕にこんな難題を勝手に持ち込んだ。
――やっぱり、あの男が最低で最悪で大嫌いだ。
ただ、少女の身分に配慮したのか。
彼が選んだメイドは大正解だった。
彼女は僕をチヤホヤしない数少ない王宮メイド。
そして、仕事は真面目で丁寧だった。
少女の髪は綺麗に整えられ、服も令嬢らしい物になっていた。ボサボサの時は分からなかったが、彼女の瞳は僕と同じ紫だった。そして、姫と同じフワフワの金髪。年齢より幼く細いが、普通に令嬢として見れる姿になっていた。
少女は最初にメイドに心を許したようだ。
そして、彼女の暴走を止めていた僕にも。
彼女の魔力は本物で、確かに僕以外の人間が止めるのは難しいだろうと思った。
公爵家では、魔法陣で結界をはり暴走を止めていたようだが。当然、彼女は魔法陣がある部屋から10年間出た事はなかった。まともな教育も躾もされていない。食事も粗末なものだったのだろう。
一応、公爵家のメイド達も世話はしていたようでビクビクオドオドはしているが大人しく、幼児レベルではあるが言葉だけはしゃべれた。
正直に言えば大変レベルを遥かに超えた厄介者だった。けれど……魔力を暴走させ止めた僕が怪我をすると……少女は涙をためて震えていた。僕の心配というより、僕に叱られると思ったのかもしれない。
僕は、どんな怪我だってすぐ治せるのに。
この少女にも、僕と同じ才能があるのに。
涙に濡れる紫の瞳、乱れたフワフワの金髪……。
無知な少女の様子がとても哀れだった。
僕は、養子先の公爵家では愛されなかった。けれど、生家の男爵家では可愛がられ愛されていた。公爵家では愛は無くても教育と躾はされていた。着るものだって世話だって充分にされてきた。
けれど、この子は……。
由緒正しい公爵家の令嬢なのに。
誰にも愛されず教育も躾もされず厄介者として死を待たれるだけの存在だったのか。
僕の腕の中で涙し震える少女。
……この子を守れるのは僕だけだ。
これが庇護欲というものだろうか?
……姫が僕に感じていたものと同じ?
姫は僕を弟の様に思って下さっていた。
けれど……僕は……。
僕の贖罪は、この子を妹の様に思い育てる事。
そして、この国に役立つ魔術師にする事なのだろう。
「先生、魔力の暴走を止める指輪を完成させました!!」
「流石だ。君は私の自慢の生徒だよ」
この10年、長かったのか短かったのか。
少女は20歳になり、私は24歳になった。
もう彼女は魔力暴走することもない。
むしろ、魔術師として立派に成長した。
私も、少しは成長出来ただろうか。
数えきれないほど、少女の暴走を止めてきた。
怪我もした痛みもあった……けれど苦では無かった。
彼女の暴走はワザとではないから。
そう考えると、改めて自分の行いを猛省する。
私の行為がワザとだと知った時の姫の思い。
今の私には、それが良く分かるから。
優しく見守ってきた子が自分を傷つける。
……24歳の私でも耐えられない。
「先生。私は先生の一番大事な方を守ります。それが一番の恩返しだと思うから」
少女は素直で優しい子に育った。
そんな彼女がそう言ったのはいつだったか。
私の一番大事な人は君だ。
けれど、一番恩返しをしたいのは姫だ。
同じ公爵家で、魔力が高い私達。
暗黙の了解で数年後には夫婦になるだろう。
その時に、一番大事な人と一番恩返しをしたい人。
それを君に告げようと思う。
姫……貴女に何かあれば、私が。
いえ、私達家族が貴女をお守りいたします。
だからどうか。
温かな家族を作っても良いでしょうか?
身勝手な願いを思い、目をつぶる。
瞼の裏には、優しく微笑む姫が見えた。
◇◇◇◇◇◇◇
姫の婚約発表と結婚式。
そこで活躍した私は王家の信用を取り戻した。
宰相である父は安心していた。
そして、将来の安定が確定した私には各国の情報が前よりも正確に入ってきていた。
姫は……王妃は陛下と幸福に暮らしている。
けれど、あの最低最悪の王太子は……。
世継ぎが産まれた日に亡くなった。
……我が国の辺境伯は武力に長けている。
けれど、王太子の国の辺境伯は……。
私も最近知らされたが、かの国の辺境伯の女性達は魔女に近い存在らしい。
丁寧に扱えば幸運を、粗末に扱えば不運を与える。
実際、三か国の同盟前は公然の秘密として有名だったそうだ。それが、三か国の同盟後は三か国のトップだけが知る国家機密となった。
……恐ろしい話だ。
三か国の友好が保たれていた時、辺境伯の女性達は幸運=治癒魔法を使い周囲の信頼を得ていた。彼女達は他国でも尊敬され大切にされていたはずだ。
しかし、あの王太子が大国の王に牽制された。
その瞬間、我が国と大国に嫁いだ辺境伯の女性達は反乱分子として認定されたはずだ。何故なら、流行り病すら彼女達は作ることが出来るから。そして、それを治癒出来るのは彼女達だけ。
だから、王太子の国は素早く動いた。
国と国境と彼女達を守る為に。
三か国の国のトップ以外は、王太子の死は突然の不幸な病。よりによって治癒魔法が得意な王太子妃が里帰りし出産した日に亡くなるとは……と、同情的に語られている。
王太子が辺境伯の令嬢と婚約した事によって、かの国が望むのは今まで通りの友好関係。それが王太子の死によって明確に示された、三か国のトップだけが分かる形で。
丁寧に扱えば幸運を、粗末に扱えば不運を与える。
それは、私達にとっても他人事では無かった。
姫を粗末に扱った私達に与えられたのは……。
魔力暴走する厄介な訳あり令嬢と、暴走する知能という異名がある令嬢だった。前者は魔術師に、後者は私にだ。彼女達は異常なまでに能力が高いが、それ故に引き取り手が無かった。
魔術師は二人共に子供だ、婚約の話すら出ていない。
けれど、私の方は年齢的に即婚約&結婚になった。
傍から見れば身分も知能も釣り合った結婚。
彼女も生後半年で言葉を発し、1歳の時には数字や簡単な文字を覚えていた。100年に一度の神童と呼ばれた私と、国家の頭脳と言われる宰相家に相応しい令嬢。
ただ唯一違うのは。
彼女は女性だった為、神童とは呼ばれなかった。
彼女は両親に『悪魔の落とし子』と呼ばれていた。
両親に似ていない非凡な頭脳と女らしい物に一切興味がないという理由で。そのせいだろうか……彼女は姫とは違ってひねくれていた。優しく素直な姫とは違い、全てを疑い毒を吐いていた。
それは私に対しても。
「100年に一度の神童なのでしょう? ……ふふっ」
「結局、貴方は姫の婚約者候補から外れた方……」
「他よりましですが、もっと哲学を学ばれては?」
「その問題解決方法は、それだけだとお思いですか?」
彼女は楽しそうに毒を吐くが、私は『貴女の言う通りですね』と答えていた。そうすると、彼女は満足したように笑っていた。
実際、彼女の知識や考え方は役に立つ場面も多かった。誰も思いつかない解決策を提示して、予算や時間が半分になった事も多々あった。
彼女の方も結婚によって初めて、自分の知能を発揮でき賞賛された。私は彼女の家族と違い、彼女の能力を認め活躍の場を提供した。
私達の結婚は、お互いに利があった。
私が宰相になった時、私は『歴史上最高の頭脳』
妻は『歴史上最高の賢婦』と呼ばれたのだから。
彼女は、結婚も夫である私にも満足していたようだ。
意外にも、生まれた子には愛情を注いでくれた。
彼女は皆に認められ、毒を吐くのも私だけになった。
彼女は、かつての私と同じ。
毒を吐くのは、私を愛してくれているからだろう。
当事者になって改めて実感する。
愛する人を傷つける事に喜びを感じる。
そんな人間を愛するなんて出来ないと。
早いもので、私も80歳になり人生の終盤。
……宰相として父として後悔はない。
夫として男としての後悔は残る。
けれど、だからこそ……姫を守れたのだとも思う。
夫として男としての幸福を捨てたから、私は『歴史上最高の賢婦』を手に入れ『歴史上最高の頭脳』と呼ばれたのだから。
これから先も我が国は安泰だ。そして、三か国の同盟は続き三か国は平和に栄えるだろう。
姫……ドSはドSなりに……。
生涯、貴女を愛していましたよ……。
だからでしょうね……最期の瞬間に浮かぶのは。
両親でも友人でも妻子でもなく……。
愛する姫……貴女の泣き顔だ……。
オトナ女子コミカライズ原作大賞・準大賞
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